【SF小説】感想「時間塔の修道士」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 587巻)(2019年2月20日発売)

時間塔の修道士 (宇宙英雄ローダン・シリーズ587)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122172
時間塔の修道士 (宇宙英雄ローダン・シリーズ587) (日本語) 文庫 2019/2/20
デトレフ・G・ヴィンター (著), エルンスト・ヴルチェク (著), 林 啓子 (翻訳)
文庫: 280ページ
出版社: 早川書房 (2019/2/20)
発売日: 2019/2/20

【※以下ネタバレ】
 

地球上のミニ地球内部では、記憶を失ったレジナルド・ブルたちが"前衛騎兵"として時間塔の修道士が命じる任務をこなしていた!


アインシュタインの涙”と呼ばれるミニ地球に閉じこめられた百五億のテラ住民たちは、ヴィシュナのもくろみどおりヴィールスインペリウムの一部となり、巨大コンピュータの情報処理作業に没頭していた。難をのがれたエルンスト・エラートと四次元性の影チュトンも、ヴィシュナの基地にあるクリスタル建造物“時間塔”の底に監禁されてしまう。この時間塔を管理しているのは、修道士を名乗る謎めいた存在の者だった!

 

あらすじ

◇1173話 時間塔の修道士(デトレフ・G・ヴィンター)(訳者:林 啓子)

 地球では、ミクロ化された人類が記憶を消され、ミニ地球「ヴィーロチップ」上でヴィールスインペリウムの部品として働かされていた。またエラートとチュトンは、「ヴィールス修道士」の監視する「時間塔」に幽閉されていた。しかしエラートは修道士を巧みに説得することでヴィーロチップの人類とコンタクトに成功し、人類はサボタージュによりヴィールスインペリウムを機能不全に陥れはじめた。一方、太陽系のタウレクはゾンデ「メンタル炎」で地球の惨状を知り、チュトンに会うため、ロワ・ダントン、デメテルと共にグレイの回廊に突入した。地球で時間塔が崩壊しチュトンが解放されるのと同じ頃、タウレクが地球に到着した。(時期:不明。NGZ427年4月頃)

※初出キーワード=前衛騎兵、ヴィーロチップ、ヴィールス基地



◇1174話 コスモクラートの決闘(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:林 啓子)

 太陽系では、ヴィールスインペリウムの異常によりグレイの回廊への入り口が開き、遂にテラの戦艦も地球に到着した。チュトンはタウレクと一つになれば自分が消失してしまうため、タウレクを避けて逃げ出すが、やがて考えを変え、二人は再統合する。タウレクの正体はコスモクラートだったが、14か月前にこの宇宙に来る際にヴィシュナの妨害でチュトンと分離させられ、記憶と力を失っていた。かつてタウレクとヴィシュナは通常宇宙への憧憬という点で同盟者だったが、ヴィシュナの反乱にタウレクは同調せず両者は決裂していた。両者の精神的決闘はタウレクが勝利を収めた。(時期:不明。NGZ427年4月頃)

※初出キーワード=コスモクラート法典、コールアクター種族、ルエドリング種族、宇宙の“モラルコード”


あとがきにかえて

・本国版ローダン・シリーズ3000話到達(2019年2月15日発売)の話
・趣味のピアノの話


感想

 前半エピソード … ヴィシュナ・エピソードのクライマックス直前回。タウレクたちのグレイの回廊への突入、縮小化された人類の反乱、タウレクとチュトンの対面、等、怒涛の展開が目白押しの充実のエピソードでした。

 ヴィールスサイズに縮小化された人類が、ミニ地球「ヴィーロチップ」上で乗り物に乗り、情報をあたかも物質のように扱って整理している、というシチュエーションがなんとも面白かったです。一見荒唐無稽な状況にも思えますが、『コンピュータ世界上で、形の無いデータを仮想的に物質として扱う』と来れば、昨今では当たり前の「電脳世界」云々ネタの先駆けとも言えるわけで、1984年にこの設定ならかなり斬新だったのでは?

 しかし、人類がちょっと(?)サポタージュを敢行しただけでいきなり全体が機能不全に陥るヴィールスインペリウムは、意外に脆弱でビックリ。バックアップ機能というか、危険な部分の切り離し機能というか、そういうものが無いのかと……



 後半エピソード … ヴィシュナ危機の事実上の最終回。前回の最後でタウレクとチュトンがついに対面したので、さあ二人の融合か、と身構えていたら、チュトンがいきなり統合を拒否して逃げ出す展開には、ちょっと肩透かしというかじらしが酷いという印象。

 この序盤からなんとなく予想したとおり、中盤はグレイの回廊の中間ゾーンの生物が召喚されたりしてグダグダ展開に終始し、やや失望したものの、終盤はヴィシュナの出自は混沌の勢力だったとか、タウレクは昔はヴィシュナと仲が良かったとか、驚きの事実が次から次から明かされて、猛ラッシュ状態。まあ、最後は何故ヴィシュナがいきなりタウレクに負けを認めたのかさっぱりわかりませんでしたが、昔の恋人の説得に負けたという解釈で良いのでしょうか。
 
 
 

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