【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」(2020年版)『ナチスをだました男 20世紀最大の贋作(がんさく)事件』(2020年4月2日(木)放送)

フェルメールになれなかった男: 20世紀最大の贋作事件 (ちくま文庫)

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!

 

ナチスをだました男 20世紀最大の贋作(がんさく)事件 (2020年4月2日(木)放送)

 

内容

ナチスをだました男 20世紀最大の贋作事件」
[BSプレミアム]2020年4月2日(木) 午後9:00~午後10:00(60分)


芸術の価値は誰が決める?ナチス高官をニセ名画・幻のフェルメールで15億円サギにかけ、世界に衝撃を与えた天才贋(がん)作師メーヘレンが暴いた、芸術と金と欲望の闇!


ヒトラー率いるナチスドイツの最高幹部が15億円の名画サギに!?世紀のだましを実現したのは、闇の天才贋作(がんさく)師メーヘレン。大人気画家フェルメール幻の作品への金持ちや権力者の欲望を狙いニセ名画を量産した末に、驚くべき数奇な運命で人生を翻弄された伝説の画家だ。タダ同然の絵を数百万倍の名画に仕立てただましテクニックとは?高名な美術研究者までだまされた、意外な落とし穴とは?芸術と金と欲望の闇に迫る!


【ナビゲーター】栗山千明,【出演】高橋芳郎西岡文彦,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「天才贋作師ハン・ファン・メーヘレン」。


●メーヘレン、美術界に復讐を誓う

 ハン・ファン・メーヘレン(1889年~1947年)はオランダの画家。生涯で17点の贋作を描き、64億円を得たという。

 メーヘレンは学生時代は建築を学んでいたが、絵で賞を取ったことからプロ画家となった。ところがまさに彼がデビューした1910年頃から、絵画の世界の流行は、写実絵画から画家の個性を打ち出した物に変わりつつあった。まさに写実派のメーヘレンの絵は古臭い作風と見なされて絵が売れず、メーレヘンは仕方なく画家を辞め絵の修復で食べていくしかなくなった。

 1923年、メーヘレンが33歳の時、メーヘレンの元に知人が、オランダの大物画家で「笑いの画家」と呼ばれるフランス・ハルスの作品と思しき絵を持ち込んだ。メーヘレンは要望に応えて、その作品をハルス風に修復したところ、その絵「笑う士官」は、専門家が未発見のハルス作品と太鼓判を押すことになった。しかしその後オランダ美術界の大物アブラハム・ブレディウスによるアルコールによるテストが行われ、つい最近作られた作品とバレてしまう。

 絵の具は絵に塗られてから約50年経つと油が蒸発して岩のように固くなるが、蒸発前の新しい絵なら、アルコールを含んだ綿で絵の表面をぬぐうとアルコールに絵の具が溶けて最近の作品だと解ってしまうのである。この一件でメーヘレンは贋作の関係者扱いされ、その恨みから、オランダ美術界に復讐を誓うことになった。



●メーヘレン、フェルメールを偽造する

 メーヘレンはブレディウスに復讐するため、あえてブレディウスの専門分野である17世紀の絵画、しかもオランダの至宝と言われるフェルメールの作品の偽造に挑むことにした。

 メーヘレンは「アルコールテスト」を誤魔化すため、液体プラスチックを混ぜた絵の具で絵を描き、それをオーブンで乾かしてカチカチに固くして、古い絵画のように見せた。またキャンバスは17世紀に描かれた絵画の絵だけを削り落として、そこに絵を描くということをやった。さらに古い絵画ぽく見せるため、絵を曲げて細かいひび割れを作り、そこに黒いインクを塗り込んで古く見せるということまでやった。

 そして5年後の1937年、メーヘレン47歳の時、ついに贋作「エマオの食事」が完成した。ブレディウスはアルコールテストを行うが、当然そこはクリア。するとブレディウスはこれ以上のテストをせず、本物のフェルメールだと認めたのである。

 その理由は、ブレディウスの仮説に有った。フェルメールは最初は宗教画を描いていたが、やがて庶民の生活を描く風俗画に移行した。ブレディウスはこの移行の間の絵があるはずだと推測していたが、メーヘレンはまさにその期間の作品風の絵を描いたのだった。テーマ的には宗教画だが、後の風俗画に出てくるような人物を配置した、ブレディウスがこうあってほしいと望むような絵だったのである。この絵は5憶円で売れ、メーヘレンは大金持ちとなった。



●メーヘレンの絵、ナチスドイツに買い取られる

 その後もメーヘレンはフェルメール作品の偽造を繰り返し大金持ちとなるが、財産が増えるのと並行して生活は荒れ、酒とモルヒネに溺れるようになっていった。

 1942年、メーヘレン51歳の時、メーヘレンは「キリストと姦婦」という宗教画を描き上げるが、荒れた生活のせいか完成度は低かった。ところが画商に持ち込まれたこの絵に、ナチスドイツのナンバー2だった国家元帥ヘルマン・ゲーリングが目を付けた。

 美術通を自称するゲーリングは自宅に略奪で手に入れた膨大な名画を飾っていたが、フェルメール作品が無いため未発見のフェルメールを求めていたところ、丁度メーヘレンの贋作を見つけたという訳だった。ゲーリングはこの贋作に15億円を支払い、その支払いの一部はオランダから略奪した絵画二百点が含まれていた。



●メーヘレン、贋作を告白する

 第二次大戦が終わった三週間後、メーヘレンは国家反逆罪で逮捕される。オランダの至宝フェルメールの絵画をナチスに売り渡したという罪状だった。メーヘレンは最初は黙秘していたが、ついにナチスに売った絵は自分が描いた贋作だと白状する。

 最初は誰も信じなかったものの、メーヘレンは監察官に監視されている状況で「フェルメール」の新作を描いてみせ、それを見た人々はメーヘレンの言葉が真実だと知った。

 1947年、メーヘレン58歳の時に裁判が行われた。美術鑑定士たちはメーヘレンの高い技術を認めた。メーヘレンは反逆者から一転、ナチスに贋作を掴ませてオランダの絵画を取り戻した国家的英雄という扱いに変わった。しかし酒と麻薬で体がむしばまれていたメーヘレンは、直後心臓発作で死亡した。


 メーヘレンの「キリストと姦婦」は、地方にあるフンダーチー美術館で、「メーヘレンの作品」として、今でも見ることができる。


感想

 2019年4月~9月に放送された「暗黒版≪歴史秘話ヒストリア≫」こと、ダークサイドミステリーが大復活しました。初回は軽く、多分歴史上もっとも有名な贋作画家メーヘレンの生涯について。

 今回は特に気が滅入るようなダークエピソードも無く、歴史上の面白話として楽しめました。
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

  

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私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件