感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第5話「ホリスター将軍のコレクション」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

第5話 ホリスター将軍のコレクション DEAD WEIGHT (第1シーズン(1971~1972)・第3話)

 

あらすじ

海兵隊の英雄だったホリスターは、退役して建設会社を経営し、元部下のダットン大佐と組んで不正な利益を得ていた。だが特別監査が行われることになり、ダットンが秘密を漏らす危険があると悟ったホリスターは、海辺の自宅で彼を射殺。その場面をボートから目撃したヘレンという女性が警察に通報し、コロンボが捜査を始める。だが、殺人の痕跡はどこにもなかった。

●序盤
 
 マーチン・J・ホリスターは、20年前の朝鮮戦争海兵隊の准将として大戦果を挙げて国民的英雄となり、負傷退役したあとは、会社の経営者となっていた。

 現在、ホリスターの会社は海兵隊の調達部長ダットン大佐から不正に仕事を受注していたが、緊急の監査が入ることになり、慌てたダットンは逮捕を恐れ、スイスに高飛びすると言い出す。しかしホリスターはダットンの口を封じるため、自宅で射殺してしまう。

 丁度犯行の瞬間を、ホリスター邸の沖合でヨット遊びをしていたヘレンが目撃しており、ヘレンは警察に通報する。


●中盤

 コロンボは通報を受けてホリスター邸を訪問すると、丁度、ホリスターは軍隊時代の持ち物を、母校である海兵隊幹部学校に寄付するための荷造りをしているところだった。しかし屋敷内にある銃は全て使用された形跡はなく、またホリスターが筋道だって通報者の見間違えだと説明したため、その場は引き下がる。夜、ホリスターは隠し部屋に隠してあったダットンの死体をクルーザーに積んで海に捨てる。

 翌日、コロンボはホリスターに、昨日訪問した際、戦争中の彼のトレードマークだった45口径の拳銃が屋敷になかったことを問いただすが、ホリスターは銃は退役直前に盗まれてしまったと返答し、母校には複製を飾る予定だと話す。

 ホリスターはヨットハーバーの従業員からすぐにヘレンの事を探り当て、ヘレンと接触する。ヘレンはホリスターが20年前の戦争で国民的英雄となった人物だったことを知り、さらに紳士的な態度に魅せられ、だんだんと惹かれていく。

 コロンボは軍の調達部長ダットン大佐が行方不明になっていることを知り、ダットンがホリスター邸で射殺されたのではないかと考える。


●終盤

 海でダットンの射殺死体が発見され、コロンボはホリスターに会い、死体がホリスター邸の沖から潮で流された可能性や、ホリスターの会社がダットンから多数の仕事を受注していることを指摘するが、ホリスターは全く動じない。

 海兵隊幹部学校ではホリスターが寄付した品々の展示会が開催されていたが、コロンボは会場にヘレンを呼び出すと、ホリスターも一緒に現れる。コロンボはホリスターがダットンを射殺したのは愛用の45口径の拳銃で、殺人の証拠であっても手放したくなかったため、複製品だと嘘をついて堂々と展示会に飾ったと指摘する。そしてコロンボは既に銃の弾道検査も済ませており、ホリスターは逮捕される。


感想

 評価は○(ぎりぎり)。

 色々と変則的な構成の変化球的作品で、あまりコロンボらしい面白さが感じられない微妙なエピソード。評価はもう一つというところ。


 コロンボ作品の基本パターンは、「犯人の殺人の実行」から始まり、コロンボが捜査を開始し、さまざまな形で犯人と対決し、最後に決定的手掛かりを突きつけて勝利する、といったところだが、この作品ではかなり様子が違う。


 まず、殺人が中々発覚しない。死体が見つかり公式に殺人事件として捜査が始まるのは物語のほぼ終盤といったところで、それまではコロンボは通報があった件について色々と調べているだけに過ぎない。そのため、コロンボと殺人犯との対決が殆ど無く、あまり盛り上がらない。


 また、ヘレンの存在もコロンボ物としては異色である。コロンボ作品は、コロンボと犯人が精神的な対決を繰り返すところが面白みの一つだが、本エピソードでは、コロンボでも犯人でもない第三の人物・ヘレンが登場し、最初は目撃者として、後半はホリスターの味方として、物語に関わってくる。こういった立場の第三のキャラクターが登場するような話は殆ど無い(第三のキャラクターが、犯人を恐喝しようとして殺される、というパターンはまま見られるが……)

 このエピソードは、「コロンボ対犯人」というより、ヘレンが主役の犯罪ドラマに、コロンボの捜査を継ぎ足したような構成になっている。ヘレンについては、家庭環境(母子家庭で育てられた)、母親との関係が上手くいっていないこと、母親の反対を押し切って結婚したものの夫の浮気で離婚したこと、心の病を患っていたこと、などの身の上が次々と語られる。さらに犯罪を目撃したと通報するものの、紳士的でお金持ちのホリスターに優しくされて、ころりと参ってしまい、最後には目撃したことを否定するまでになってしまう。しかし、最後にはそのホリスターも前の夫同様ろくでもない男だと判明してショックを受け、最後にコロンボに慰められながら退場する。

 というように、物語でヘレンが占めるウェイトがかなり多く、結果としてホリスターやコロンボの物語は全体の半分くらいしかない。ということで、本エピソードはある女性の悲恋としてはそれなりに面白いのだが、コロンボ物としては物足りない中身となってしまったのはいただけない。


 ただ、ホリスターが殺人の証拠である銃を、わざわざ衆人環視のケースの中に堂々と晒しておき、「まさかそこに」という心理的盲点を突こうとした、という点は面白かった。冒頭のダットンの殺害シーンでも銃そのものは写さなかったのはこの結末のためで、その構成だけはちょっと良かったと思う。


 この作品は1971年放送だが、ホリスターやレストランの店主が朝鮮戦争(1950~53年)に従軍した経験がある、という劇中のエピソードには心底時代を感じさせられた。現在(2020年)からすると、朝鮮戦争は半世紀以上前の本当に歴史上の出来事でしかないが、当時はまだ戦争終結から20年も経っておらず、従軍経験者が社会を支える年齢でバリバリと働いていた訳で、レストランの店主が戦利品を持ち出して思い出をしみじみと語るシーンなどは、本当に昔のドラマなのだなと感じずにはいられなかった。


 サブタイトルの原題「DEAD WEIGHT」は、辞書によれば「ずっしり重い物」といった意味とのこと。正直言って作品内容とどう関係があるのか全く分からない……



備考

 放送時間:1時間16分。
 
 

#5 ホリスター将軍のコレクション DEAD WEIGHT
日本初回放送:1972年


今作は謎を含め全体的に静的で地味な作品ではあるが、登場人物の存在感やコロンボと犯人の対決ムードなど、魅力も感じられる。ホリスター役のエディ・アルバートは映画『ローマの休日』のカメラマン役でアカデミー賞候補となった。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
マーチン・ホリスター・・・エディ・アルバート久松保夫
ヘレン・・・スザンヌ・プレシェット(鈴木弘子
ウォルターズ夫人・・・ケイト・レイド(高橋和枝


演出
ジャック・スマイト


脚本
ジョン・T・デュガン

 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
刑事コロンボ完全版 2 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 3 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 4 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全捜査ブック