【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第38話「ルーサン警部の犯罪」

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放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第38話 ルーサン警部の犯罪 FADE IN TO MURDER (第6シーズン(1976~1977)・第1話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(38)「ルーサン警部の犯罪」
[BSプレミアム]2020年12月16日(水) 午後9:00~午後10:14(74分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!犯人役は『スター・トレック』シリーズの“カーク船長”でおなじみ、ウィリアム・シャトナー。声を俳優の山城新伍が担当。


人気TVドラマ「刑事ルーサン」の主演俳優ウォード・ファウラーは、番組プロデューサーのクレアに過去の秘密を握られ、長年にわたりギャラの半分を取られていた。ウォードは撮影所から小道具の拳銃を盗み、クレアが立ち寄った食品店で強盗の仕業と見せかけて彼女を射殺。犯行前に自宅に付き人を招き、彼を利用してアリバイ工作をする。

●序盤

 俳優ウォード・ファウラー(犯人)は、人気テレビドラマ「刑事ルーサン」の主役「ルーサン警部」を演じるスターだが、プロデューサーの一人でかつて愛人関係にあったクレア・デイリー(被害者)にゆすられ、ギャラの半分をピンハネされている。

 ファウラーはクレアから解放されるため殺害計画を実行に移す。
1)覆面と服と銃を撮影所から盗み出す
2)付き人のマークを自宅に呼び、テレビで野球中継を見ながら睡眠薬入りの酒を飲ませて眠らせる
3)覆面強盗に扮して、クレアがサンドイッチを購入している店に押し入り、店長を気絶させてからクレアを射殺する
4)覆面と服を破り捨てて路上のごみ箱に投棄
5)自宅に戻り、マークの腕時計・家の時計の時間を戻しておき、さらにビデオで録画していた中継を再生してからマークを起こし、一瞬しか寝ていなかったように思わせる。そのまま寝てしまったマークの腕時計を正しい時間にセットし直してアリバイを確保。



●中盤

 コロンボはクレア殺しの捜査を開始し、状況から押し込み強盗が、クレアが怯えて逃走したことに逆上して射殺した様に思われた。店主の証言では、犯人の身長はコロンボと同じくらいだった。

 しかしコロンボは撮影所でファウラーと会うなり、これは計画殺人の可能性が高いと指摘し、理由として「現金以外の金目の物(クレジットカード、ダイヤモンドの指輪、ワニ皮のハンドバッグ)を奪っていない」「犯人は冷静に10メートル離れた被害者の心臓を一発で撃ち抜いている」ことを上げる。

 コロンボはファウラーの付き人マークから、犯行当時、ファウラーの家で一緒に野球中継を見ていたという証言を得る。しかし、マークの腕時計はいつもは正しい時刻より5分進めてあるのに、その時は正しい時刻を指しており、マークは1000ドルもする時計が一晩で5分も遅れたと愚痴を言う。

 コロンボは、クレアの夫で、今は別居中のシド・デイリー(番組プロデューサー)からも話を聞くが、故クレアがファウラーに法外なギャラを払う事に積極的だったという不可思議な事実を突き止める。またクレアがかつてファウラーと愛人関係だったことも知らされる。

 コロンボはファウラーに、クレアのドレスの弾痕と体の傷を比較した結果、クレアは手を上げていた時に撃たれたこと、手を上げて走っていた筈はないので犯人は逃走に逆上して撃ったのではないこと、を指摘する。また見つかった犯人の覆面には化粧が付いていた事から犯人は女性かもしれないと示唆する。

 深夜、ファウラーは銃は指紋を消したあと、シドのセーターから抜き取った糸くずを巻き付けて、こっそり撮影所に戻した。

 翌日、コロンボは撮影所のファウラーを訪ね、ファウラーは撮影時にはシークレットブーツで身長を五センチほど高く見せており、本当の身長はコロンボと同じくらいという事を知る。コロンボはファウラーに、犯人の使った覆面や衣装は撮影所のものだったこと、覆面の化粧はプロが使うものだったこと、拳銃だけは撮影所に戻されていたこと、を報告する。ファウラーはルーサン警部になり切り、ルーサン警部の考えでは「ウォード・ファウラー」が容疑者の一人だと言い出すが、コロンボは驚いてみせる。

 コロンボは、ファウラーの過去が公開されていないため尋ねると、ファウラーは本名はチャールズ・キプリングで、カナダ・トロントでまずい立場になっていたところをクレアに見いだされたと言い、コロンボも納得する。

 コロンボはシドを訪ね、クレアの貸金庫から「未届けの大量の株式証券」や「ファウラーからの借用証」が見つかった話を確認する。シドはクレアが殺された時間に秘書のモリ―と一緒に過ごしていたことを白状する。


●終盤

 コロンボはファウラーの自宅に行き、ビデオレコーダー一式を見せてもらう。ファウラーは、またルーサン警部になり切って、コロンボにウォード・ファウラーが有力容疑者なので検討しようと言い出す。コロンボはファウラーに過去を調べたことを明かし、ファウラーの本名はジョン・シュネリングといい、朝鮮戦争の際に軍を脱走してカナダに逃げこんだ人間であること、を説明する。

 ≪ルーサン警部≫は、ファウラーはその事でクレアにゆすられていた筈だが、ファウラーに尋ねるとそれを否定した、と他人のことのように語る。コロンボはファウラーにアリバイがあるのて、やはりシドが怪しいという結論に落ち着く。

 そこにシド・デイリーと秘書が警官に連れられてやってくる。コロンボは、凶器の銃にシドの服の糸くずが付いていたことを指摘しつつも、ファウラーがマークに睡眠薬バルビタールを盛り、ビデオを使ってアリバイを偽装したはずという推理を披露する。

 そして最後にコロンボは凶器の銃には指紋が残っていなかったが、空弾にファウラーの指紋が付いていたことを指摘する。ファウラーはここに至っても芝居がかった態度を止めないが、コロンボは冷たくあしらう。


監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:ルー・ショウ&ピーター・S・フィーブルマン(原案:ヘンリー・ガーソン Henry Garson)



感想

 評価は○(並)。

 取り立てて優れたところは見当たらないものの、話が破綻しているとかいうことはなく、程々には「コロンボしていた」ので、「並」評価が相応しいエピソード。


 ストーリーは、コロンボの定番フォーマット通りに展開するため安心して見ていられたが、いつもの「コロンボが鋭い観察力・推理力で犯人の周到に用意した犯行の真相を暴いていく』という流れではなくく、十二分に残された証拠を拾い集めて犯人にたどり着くだけのため、あまり名刑事感が無かったのはいささか物足りなかった。


 今回の犯人ファウラーは「芝居が仕事の俳優」という設定を差し引いてもかなり変なキャラクターで、コロンボに殺人犯としての疑いをかけられてもいきり立ったりせず、それどころか自分が「ルーサン警部」になり切って、その立場から「ファウラーは怪しい」などと言い出したりするので、この犯人は一体何を考えているのかさっぱりわからなかった。

 普通であれば、コロンボの推理を手伝うふりをして、自分に疑いがかからない様にうまく他人に疑いをかけようとするものだろうし、実際そういう偽装工作もしてはいるが、コロンボと対面して推理談義をするときには、殆ど自白に近いような事を喋ってしまっている。本作のシナリオライターとしては、何か深い意味を込めているのかもしれないが、視聴者的には「この犯人はどうかしていないか……?」としか映らなかった。


 結末も、コロンボがアリバイトリックのキモとなるビデオレコーダーについて決定的な証拠を見つけ出すのかと思いきや、そこは軽く流し、空包に残されていた指紋が決定打になるという拍子抜けの解決なのは、いささか唖然とさせられた。もちろんそれはそれで重要な証拠だろうが、もっと「犯人も視聴者も見逃していた決定的な何か」をコロンボが見つけ出すという様な展開にしてほしかった。


 ということで、一応形としては「刑事コロンボ」だったが、全体に雑さが感じられるというか、製作前にシナリオを見直してほしかった感があるエピソードだった。


 本エピソードの犯人ウォード・ファウラー役を演じたのは、SFドラマ「スタートレック 宇宙大作戦」の主役・カーク船長で有名なウィリアム・シャトナー。もっとも、ファウラーの妙なキャラクター付けのせいで、最初から最後まで変に芝居がかった演技ばかりだったので、何か「浮いている」感が強かった。


 作品のサブタイトル「FADE IN TO MURDER」は、意訳すると「殺人へのフェードイン」。フェードインとは、映像関係の用語で「映像が徐々にはっきりしてくること」という意味だそうで「殺人が始まる」とかそういうニュアンスを込めている模様。


 劇中で、コロンボが撮影所の中で、水の中から飛び出してくるサメの模型を見て「ジョーズのサメだ」と興奮するシーンがあるのはちょっと面白い。本作は1976年10月放送で、映画「ジョーズ」はその前年1975年6月に公開され、この池からサメが飛び出してくるアトラクションは本エピソードの放送前に完成したばかりだったらしい。コロンボがユニバーサルスタジオのアトラクションの宣伝に使われていたという面白い裏話である。

その他

 放送時間:1時間14分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ウィリアム・シャトナー山城新伍,ローラ・オルブライト…岩崎加根子,バート・レムゼン…宮川洋一,アラン・マンソン…稲垣昭三,【演出】バーナード・L・コワルスキー,【脚本】ルー・ショウ,ピーター・フィーブルマン

 

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