感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第2話「死者の身代金」

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放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第2話 死者の身代金 RANSOM FOR A DEAD MAN (パイロット版(1971年))

 

あらすじ

弁護士レスリー・ウィリアムズは、夫を射殺後、30万ドルの身代金を要求する脅迫状を自分宛てに郵送し、誘拐事件をでっちあげる。生前の夫の通話を録音したテープとタイマー装置を利用して、夫から自宅に電話がかかってきたように細工したのだった。だが、市警本部とFBIとの連絡係として現場に居合わせたコロンボは、彼女の電話の受け答えに違和感を覚える。

 
 弁護士レスリー・ウィリアムズは、自宅で夫を射殺し死体を海に投棄した後、自分あてに偽の脅迫状を送って、夫が何者かに誘拐されたように騒ぐ。そして架空の犯人の要求の通りに身代金30万ドルを用意すると、それを自家用機から犯人にむけて投棄したように見せかけて、実は空のバッグだけを捨てる。FBIは犯人が金を持って既に逃げ去ったと信じこみ、やがてウィリアムズの死体が発見される。

 捜査を続けるFBIが何の手掛かりもつかめない中、レスリーは夫を失った悲劇の妻を演じて見せる。しかしウィリアムズの前妻の娘でレスリーとは犬猿の仲であるマーガレットは、誘拐事件はレスリーが仕組んだ事ではないかと疑い始める。
 
 一方コロンボは、レスリーに「何故犯人はわざわざ空のバッグだけを置いて行ったのか」や「ウィリアムズは立った姿勢で座った犯人に射殺されていたこと」「犯人は小口径の22口径の銃で犯行に及んだこと」など、細かい疑問をぶつけてくる。

 やがてマーガレットはコロンボに会いに来て、レスリーが怪しいと打ち明ける。マーガレットは、レスリーが高名な弁護士だった故ウィリアムズを利用するためだけに結婚しただろうこと、最近はウィリアムズとの生活は冷え切っていたこと、ウィリアムズが近々レスリーと別居する予定だったこと、等を話す。コロンボはマーガレットとの会話で、誘拐事件そのものが狂言であり、ウィリアムズは最初から殺されていた可能性について思いつく。

 やがてレスリーとマーガレットの対立は頂点に達し、ついにマーガレットは空包の銃まで持ち出してレスリーを脅し、絶対にレスリーの犯行を暴いて見せると言う。レスリーはマーガレットの口を封じるため、今後五年間毎年二万ドルずつ払うと持ち掛けるが、マーガレットは翌日現金で二万五千ドル欲しいと要求する。

 翌日。レスリーは二万五千ドルをマーガレットに支払い、海外に追い払うことに成功する。ところが空港にコロンボが来ており、マーガレットの行動は全て自分が頼んだ事だったと説明する。レスリーがマーガレットに支払った現金は、ウィリアムズ誘拐犯が奪った身代金と同じものだった。レスリーコロンボの計略にまんまと引っかかった事を知り観念する。


感想

 評価は○(まずまず)。

 飛行機を使ったスケールの大きな犯行が印象的なエピソード。シナリオについて多少気になる点はあるものの、評価としてはまずまず、というところだった。

 本作は「殺人処方箋」に続くコロンボの第二作目だが、パイロット版、つまり「テレビシリーズを開始する前の試作品」という特殊な位置付けのエピソードとして製作されている。しかし「殺人処方箋」は、明らかに後のシリーズ作品とは雰囲気が異なっていたが、本作は概ね後の作品と同じノリで特に違和感も無かった。

 シナリオの質はまずまずで、犯人のレスリーがFBIや地元警察がすぐそばにいる状態で犯行を進める大胆不敵さや、自家用機を駆使した金を奪取するトリックなど、特に犯行シーンが強烈に印象に残る作品だった。また、コロンボが「何故、誘拐犯はわざわざバッグから金を抜き取るような手間のかかることをしたのか?」というところからレスリーの犯行に結び付けていくなどの過程も自然で、それなりには良く出来たシナリオだったとは思う。

 ただ、レスリーの犯行の描写、つまりFBIがウィリアムズ邸にやってきてからレスリーが空のバッグを投棄する辺りまでに時間をかけすぎて、中盤までの展開がやや冗長だった感は否めなかった。また、中盤以降になると、今度はレスリーと義理の娘のマーガレットのいがみ合いのドラマがメインになってしまい、結局、最初から最後まであまりコロンボが活躍していた印象が無い。コロンボレスリーによる対決は表面的なものにとどまり、じわじわと犯人を追い詰めていくようなシーンは無かったように思える。

 結末も、結局マーガレットの熱演のおかげでレスリーのしっぽを捕まえることが出来たのであり、マーガレットに計画を吹き込んだのがコロンボだったと明かされても、やはりコロンボの力で事件が解決した、という爽快さは無かった。

 結局のところ、本作は「レスリーとマーガレットの憎しみのドラマ」に、脇役としてコロンボが絡んだ作品、という感があるのだが、まあ「殺人処方箋」もまた犯人が主役のドラマだった事があり、その延長戦上に作られた作品と考えれば、わりと納得できる作りではある。


 ところで、本作では、作中の台詞に当時(製作は1971年)の時代背景というかが実に良く読み取れる。例えば、コロンボレスリーの部下に「ボスが女で大変でしょう」云々と同情して見せるし、またレスリーを評する言葉がいちいち「やっぱり女ですなぁ」なのである。こういう「男性が上/女性は下」という感覚は現在(2020年)では完全にNGだが、それが当たり前の時代だったという事なのだろう。

 ストーリーの中盤で、コロンボがチリを食べるレストランで、食事前にビリヤードをプレイするシーンがほんの短時間だが描写され、ピーター・フォーク自身がプレイして綺麗に三連続で決めていた。ストーリー上は全く必要性は無かったが、コロンボの刑事以外のプライベートな面が楽しめたので、個人的には悪くなかった。

 最後、コロンボが空港でレスリーと顔を合わせ、二人で飲み物を注文するシーンで、コロンボは「グレープジュース」を頼む。この場面では「何故ここで唐突にグレープジュースなのか?」と違和感を感じたのだが、実は英語版では「ルートビア」を頼んでいるらしい。ルートビアと言われても、日本人にはなじみが無くて、「スヌーピーが愛飲している謎の飲み物」のイメージしかないが、アメリカではポピュラーな、ノンアルコールの炭酸飲料、とのことである。


 サブタイトルの原題「RANSOM FOR A DEAD MAN」は、まさに「死者の身代金」の意味。コロンボシリーズは、日本語サブタイトルは原語版とは全く違った物になることが多いが、今回はオリジナルからして作品内容をズバリ表した物だったので、特にいじる必要も無かったということなのだろう。


備考

 放送時間:1時間36分。
 
 

#2 死者の身代金 RANSOM FOR A DEAD MAN
日本初回放送:1973年


シリーズ化のためのパイロット版として制作された本作では、初の女性犯人が登場!犯人のレスリーを演じるのは、1975年の映画『シャンプー』でアカデミー助演女優賞を獲得したリー・グラント。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
レスリー・ウィリアムズ・・・リー・グラント(山東昭子
マーガレット・・・パトリシア・マティック(上田みゆき
カールソン・・・ハロルド・グールド(北村弘一
マイケル・・・ジョン・フィンク(納谷六朗


演出
リチャード・アービング


脚本
ディーン・ハーグローブ

 

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