感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第16話「断たれた音」

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刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第16話 断たれた音 THE MOST DANGEROUS MATCH (第2シーズン(1972~1973)・第7話)

 

あらすじ

刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!現役チェス・チャンピオンが、自分の地位を守るため、世界最高と言われたチェスの名人を殺害しようとするが…。


チェスの世界でチャンピオンとして名をはせるクレイトンは、かつてのチャンピオン、デューデックとの世紀の対決を控えていた。試合前夜、二人だけで行った勝負の結果は、クレイトンの惨敗。追い詰められたクレイトンは、デューデックを地下のゴミ粉砕機に突き落とし、彼が試合におじけづいて逃げたように工作する。しかしデューデックは一命を取り留め入院。クレイトンは彼の息の根を止めるため、再度犯行に及んだ。

●序盤

 チェスの世界チャンピオンであるエメット・クレイトンは、元チャンピオンで引退からカムバックしてきたトムリン・デューデックと対決を翌日に控え、試合会場となるホテルに宿泊していた。

 夕方、クレイトンは外出するデューデックを尾行するがフランス料理店で見つかってしまう。二人は店のテーブルクロスと調味料の瓶を使って対局するが、クレイトンは破れてしまった。夜、二人はこっそりホテルに戻るとクレイトンの部屋で再度対局するが、またしてもクレイトンは敗北してしまう。

 翌朝。二連敗で実力差を見せつけられたクレイトンは王座を守るためデューデック殺害を決意し、デューデックの荷物を鞄にまとめ、さらに巧みに彼にメモ用紙に謝罪のような言葉を書かせたあと、ホテルの地下にあるゴミ処理用の機械に突き落とした。



●中盤

 デューデックが対局に現れないため騒ぎになり、警察の捜索の結果、ホテルの地下でデューデックが発見され病院に搬送された。クレイトンはデューデックに書かせたメモをコロンボに見せ、デューデックが自分との対局を前に怖気づいて逃亡しようとして事故にあって死んだ、と思わせようとする。しかしクレイトンはコロンボから、デューデックは重傷だが死んでいない、と聞かされて動揺する。

 コロンボはデューデックが入れ歯なのに、鞄の中には普通の歯ブラシが入っていたことから、誰か本人以外が荷物をまとめたと考え、これは事故ではなく何者かによる殺人未遂ではないかと推測する。またデューデックのシャツにニンニクの匂いが染みついていたことから、ホテル以外でこっそり食事をしたことに気が付く。

 クレイトンはデューデックの見舞いのふりをして病院を訪問し、糖尿病のデューデックに薬が必要である話を聞き、薬のリストを記憶する。コロンボはクレイトンに、昨日、デューデックとクレイトンがフランス料理店で会っていた事実を認めさせるものの、クレイトンは店での対局は自分が勝利したと嘘を言う。

 コロンボはデューデックが対局毎につけていたチェス日記を取り出し、クレイトンに、レストランの対局では黒が負けたという事実を確認するが、クレイトンは自分は白だったとシラを切る。

 クレイトンはデューデックのホテルの部屋の薬をすり替え、その薬を注射したデューデックは急死する。コロンボはクレイトンが必要な薬のリストを見ていたという証言を得る。コロンボは、ホテル地下のゴミ処理の機械は、作動中に何かが捨てられた場合は、安全装置により緊急停止するという事実を知る。



●終盤

 コロンボはクレイトンをホテルの地下に連れていき、彼がデューデックをゴミ処理の機械に突き落とし、薬をすり替えて殺したと指摘する。耳が悪いクレイトンは、コロンボの話に激怒して補聴器をむしり取るが、そのためコロンボが機械を停止させたことに気が付かない。

 コロンボは、デューデックを突き落とした犯人は、機械が緊急停止した後再起動しなかったのは、それに気が付かなかったからだと指摘し、つまり犯人は耳の悪い人間でしかあり得ないと言い、クレイトンは黙り込む。


監督 エドワード・M・エイブロムス
脚本 ジャクソン・ギリス(原案:ジャクソン・ギリス&リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク)


感想

 評価は○(まずまず)。

 コロンボ物としてオーソドックスな展開の安心して視聴できた作品で、評価はまずまず。シナリオ執筆は第1・2シーズンに多くの作品を書いているジャクソン・ギリスだが、原案としてリチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクも参加していたためか、初期作品にありがちな変なひねりの無い王道展開のエピソードだった。


 本作のサブタイトルは、原題は「THE MOST DANGEROUS MATCH」で、意味は「最も危険な対局」となり、犯人がチェスプレイヤーであることから来た、まあ可もなく不可も無くといったタイトルである。もっとも、同じ第2シーズンに放送された「第12話 アリバイのダイヤル」の原題が「THE MOST CRUCIAL GAME」なので、うっかりすると、どっちがどっちだかわからなくなってしまいそうではある。


 このエピソードは、細かい証拠の積み重ねで犯人を追い詰めていく、というコロンボの王道展開が気持ちよいくらいに味わえる。荷物の中に普通の歯ブラシが入っていた事だけで事故ではなく殺人未遂であると看破し、シャツのニンニクの匂いからレストランを探すことを思いつき、店の主人の証言でクレイトンとデューデックの繋がりを見つけ、と、次から次へと手掛かりを手繰り寄せて解決へと近づいていく。74分とコンパクトな作品だが、コロンボらしさが十分に堪能できる話だった。


 劇中にコロンボがデューデックのチェス日記を持ち出し、クレイトン相手に「黒が負けたと書いてあるので、頭がこんがらがって……」とこぼすシーンがあるが、この辺りはチェスの知識が無いと何を悩んでいるのかさっぱりわからない。スッキリするため調べてみたが、チェスは「白が先手」と決まっているそうで、指し始めたデューデックが「白」、それを受けて立ったクレイトンが「黒」、の筈で、だから負けたのはクレイトンの筈なのに……、と困っていたわけである。

 物語の本筋とは何の関係も無いが、クレイトンとデューデックがレストランで、塩や胡椒などの瓶をチェスの駒に見立てて、テーブルクロスの上でゲームをするシーンがやたらと印象に残った。一見子供のごっこ遊びにしか見えない光景だが、二人共尋常ではない記憶力なので、どの瓶がどちらの陣営のどの種類の駒か、を記憶して進めていたわけで、そう考えると凄いワンシーンだった訳である。


 クレイトンがホテルの他人の部屋に忍び込む前に、ドアの横のロックの辺りを触っているのが何をしているのかよく解らなかったのだが、あれはロックの辺りにテープを張っておいて、自動ロックがかからないように仕掛けをしていた、とのこと。言われてみればなるほどではあった。


 今回は第10話「黒のエチュード」で初登場したコロンボの愛犬が再登場している(相変わらず名前は無し)。今回は、登場して画面を和ませるだけではなく、最後にゴミ処理施設の係員から緊急停止用の安全装置の存在を引き出すきっかけを作るなど、相棒(?)として活躍していた。

 この犬絡みのシーンではとぼけたシーンが多く、コロンボが麻酔で寝ている犬から変な音が聞こえるので「先生、この怪しい物音何です?」と聞いて「いびきというものです」と返答されるシーンは苦笑物だったし、またクレイトンと会っている時にポケベルから連絡が入り、電話で「治るんですね? 動いた!? それは良かった」と話してそれを漏れ聞いたクレイトンが辛そうな顔をするのに、実は犬の話だった、とかいうオチには笑ってしまった。


 結末は「犯人は耳の聞こえない人物だった」と言っているだけで、じっくり考えればクレイトンの犯行と断定出来ている訳ではないのが弱いところだが、状況証拠や動機を積み重ねて総合的に考えればクレイトン以外に犯人はあり得ず、説得力的にはまずまず。ということでコンパクトながら、手堅くまとまった一作だった。


備考

 放送時間:1時間14分。
 
 

#16 断たれた音 THE MOST DANGEROUS MATCH
日本初回放送:1973年


冒頭に登場するクレイトンの悪夢のシーン(もちろんチェスがモチーフ)が強烈なインパクトを与える。クレイトン役のローレンス・ハーベイは本作放映後、45歳の若さで死去した。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
エメット・クレイトン・・・ローレンス・ハーベイ(小笠原良知)
ベロスキー・・・ロイド・ボックナー(宮田光
デューデック・・・ジャック・クラスチェン(松村彦次郎)


演出
エドワード・M・エイブロムス


脚本
ジャクソン・ギリス

 

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