【ドラマ】感想:NHK番組「少年ドラマシリーズ 蜃気楼博士」(1978年)第9回~第12回(最終回)

蜃気楼博士 (都筑道夫少年小説コレクション (3))

プレミアムカフェ NHK https://www.nhk.jp/p/pcafe/ts/LR4X1K4WV7/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

少年ドラマシリーズ 蜃気楼(しんきろう)博士 第9回~最終回(1978年)都筑道夫・原作の小説をドラマ化した作品。全12回。蜃気楼博士が殺人実験の謎に挑む!


少年ドラマシリーズ 蜃気楼(しんきろう)博士 第9回~最終回(1978年)都筑道夫・原作の小説をドラマ化した作品。全12回。守護霊を使った殺人実験を行う峠原忠明。一方、超能力などあり得ないと断言する奇術師ドクター・ミラージュこと久保寺俊作。峠原は超能力で人を殺して見せると宣言し、マンションの一室に久保寺や記者の草間昭一、弟の次郎を集める。果たして実験は?さらなる実験、どんでん返しと驚きの結末!

 

第5回~第8回の内容

perry-r.hatenablog.com
 
 

あらすじ

●第9回

 突然現れた久保寺は警察と記者に対し種明かしを行った。実は久保寺は病室でシールの入った封筒と空の封筒をすり替え、記者が持ち去って保管したのは空の封筒の方だった。そして久保寺は助手の林田に変装して病室を抜け出すと、続いて記者に変装して小沢に近づき、隙を見て服にシールを貼りつけた。そして電話をしてきた「久保寺」は、実は声色を使った林田だった。奇術師の助手だった林田は、すり替わりトリックのため、久保寺と身のこなしも声もそっくりにふるまえるのだった。

 黒川をはじめとする記者たちは、峠原(とうげばら)のコメントを取るため一斉に事務所に押しかけるが、峠原は自分の霊能力はそんな子供だましの奇術とは違うというだけだった。納得しない記者たちは、峠原にさらなる心霊実験を行い、自分たちの目の前に霊魂を見せてみろと要求する。

 次郎は図書館に立ち寄ると、黒川が昔の新聞を調べているのを見かける。次郎は黒川が記事を切り取って持ち去ったことに憤慨する。

 夜。黒川は久保寺の家を訪ね。雑誌で久保寺の半生を記事にしたいといい、取材を申し込む。そして記録が抜けている日本に帰って来た後のことを質問し、久保寺がアメリカにいた時に結婚した妻を、五年前の土砂崩れ事故で亡くした事を持ち出す。その途端、久保寺は機嫌を損ね黒川を追い返してしう。



●第10回

 早朝。何者かが黒川のアパートの牛乳入れの中の瓶を別の物にすり替える。

 昭一は黒川が何者かに毒を盛られて病院に搬送されたという知らせを聞く。幸いにも発見が早かったため、黒川は命を取り留めたとのことだった。警察は峠原の事務所に向かい、峠原が関わっているのではと匂わすが、峠原は完全否定した。

 次郎と昭一は病院を退院した久保寺を訪ねるが、久保寺は持病の心臓の病が思わしくなく、床に就いたままだった。そんな時、峠原がマスコミに重大発表を行うとの知らせが入り、昭一は峠原の事務所に向かった。

 峠原は記者たちの前で四度目の心霊実験を行うと発表し、自分は事務所でクローゼットに閉じ込められた状態で、テレビ局のスタジオに自分の霊と守護霊を出現させてみせると宣言する。しかもその実験はテレビで生中継し、明後日夜八時から行うとのことだった。

 そして心霊実験が開始され、テレビで生中継される中、黒川のいるクローゼットの中から、アメリカ英語とイギリス英語の二人分の声が聞こえてきた。内容は、片方は見世物になりたくないと言い、もう一方がそうしなければ世間から信用を失う、となだめる内容だった。

 同じころ、警察に久保寺から「人を殺してしまった」という電話が入る。警察が久保寺邸に駆け付けると、黒川が首の骨を折って死んでいた。



●第11回

 小沢刑事は久保寺から事情を聴くが、久保寺の部屋の窓から黒川が侵入しそうになったため、久保寺が手元の時計を投げつけたところ、地面に転落したとのことだった。死体近くには針を打ち出す装置が見つかり、これが沼野を殺した凶器だと推測された。久保寺は、峠原の心霊実験中の二人の声は、一人で二人分の声色を使っているだけと指摘する。

 一方、峠原の心霊実験は、霊が現れないまま時間が過ぎていったが、やがて峠原の脈拍と呼吸が停止してしまったため、昭一がすぐさまクロゼットの扉を開く。すると峠原は死んでおり、番組は緊急事態のためすぐに中断となってしまった。


 心霊殺人事件の中心人物の峠原が死んだ事で、マスコミは急速に事件への興味を失いつつあった。警察は事件の全容を明らかにするため捜査を続けるつもりだったが、はっきりしないことがあまりにも多すぎる状態だった。昭一は黒川が何故久保寺の部屋に侵入しようとしたのかに頭を悩ませる。

 久保寺は、小沢たちと話をするため警察に出かける際に次郎と昭一に付き添いを頼む。久保寺は、峠原は霊魂が離脱したように見せかけるため、呼吸と脈拍が弱くなる薬を服用していたが、今回はその量を誤ってしまい、それで死に至ったのだろうという。そして警察の検死解剖でもその種の薬が検出されていた。

 小沢は黒川が久保寺邸に侵入しようとした際に、よじ登った形跡はあるものの、指紋が検出されていないことを不審がっていた。また三件の心霊殺人で、例えば真瀬殺しで短剣はどうやって移動したのかについて久保寺に意見を求める。

 久保寺が答えようとしたが、突然久保寺は倒れ、次の瞬間部屋に峠原と名乗る声が響き渡り、霊魂の存在を示し自分が正しいことを証明すると宣言した。倒れた久保寺は救急車で搬送された。



●最終回

 久保寺は病院に搬送されるが重体で面会謝絶状態だった。

 警察は、久保寺の助手・林田について調査し、林田の弟は殺された時田博士の助手だったが、三年前に自殺していたことを突き止める。

 昭一は次郎に、図書館で黒川が見ていた古い新聞を調べた事を話し、それが五年前に久保寺の妻が土砂崩れで死んだときの記事であることを教える。しかも土砂崩れが起きた土地は、真瀬不動産が扱ったものだった。急速に疑いを深めた昭一は、林田の元を訪れ、真相を話してくれるように頼む。


 林田は昭一と共に警察に向かい、全てを明かす。一連の「心霊殺人」の黒幕は久保寺で林田は共犯者だった。久保寺は余命一年足らずと知り、法律で罰することのできない真瀬と時田博士の二人を殺すため、殺し屋の沼野と、マスコミに名前を売りたがっていた峠原を使った計画を立案した。

 久保寺は真瀬の扱った手抜き工事の土地で起きた土砂崩れで妻を失い、裁判でもどうにもならなかった。また時田博士は、助手だった林田の弟の研究を盗み、そのため林田の弟はノイローゼになり自殺した。久保寺はこの二人を殺す計画を立てた。

 第一の事件・真瀬殺しは、久保寺が次郎と昭一の目を盗んでクローゼットから短刀を持ち出して、その後殺し屋の沼野に渡した。

 第二の事件・時田殺しは、ライフルから弾丸を抜き取ったのも久保寺。また時田殺しに使われた銃は既に昼のうちに沼野に渡されており、テレビ局のスタジオに持ち込まれたのは同じ型の久保寺の銃だった。だから久保寺はライフルを持ち帰る必要があった。

 第三の事件・沼野殺しは、久保寺が沼野の口を封じるために行い、犯行後自分で麻酔をかいで倒れた。次郎が見た亡霊二人は、久保寺と沼野の変装だった。

 久保寺はこれで全てを終えるつもりだったが、黒川が現れ峠原をゆすり始め、峠原は黒川を毒殺しようとした。久保寺は峠原が頼りないため、自分で手を下し黒川を殺害した。峠原が死んだのは事故で、服用する薬の量を間違えたに違いなかった。峠原の亡霊の声は、久保寺が峠原に花を持たせてやるために仕組んだ腹話術だった。

 次郎と昭一が病院に駆け付けた時には、既に久保寺は亡くなっていた。

 最後。次郎がクラスメートの丸山さんと公園で話し込んでいると、久保寺が現れる。しかし驚いた次郎が改めて見つめると、それは全くの別人だった。<完>

感想

 NHKBSプレミアム番組「プレミアムカフェ」の「甦る少年ドラマシリーズ」での再放送の三日目。

 いやー、メッチャクチャ面白かったわ。相変わらず名目上の主人公の次郎君の存在意義がほぼなくて「主役はお兄さんの昭一さんだよね」的なドラマでしたが(笑)、とにかくすんごく楽しかった。

 どの事件も種明かしされると、後知恵で「なんだぁ簡単な事件だったな」とか思いましたが、そこまでのワクワク感がもう物凄かったよね(山の中に現れた亡霊二体が久保寺と沼田の変装だった、というのはちょっち無理が過ぎる気もしましたけど(笑))

 全12回。今で言えば1クール分の内容を一回もダレることなくグイングイン引っ張りまくってくれて、すんごい興奮体験でした。これが今でも通じる内容なのか、単にレトロを懐かしがっているだけなのか、自分ではよく解りませんが、とにかく楽しい番組でした (^_^)b


 

プレミアムカフェ 少年ドラマ 蜃気楼博士 第9回~最終回(1978年)
[BSプレミアム] 2022年06月22日 午前9:00 ~ 午前10:31 (91分)


【出演】井上昭文田中健三,吉川浄,剣持伴紀,志摩晶,鬼頭昭夫,樫村慶,河合雅代,石垣浩子,若杉浩平,舟木淳,広瀬五朗,川村博信,青木信介,大桑明,伊藤春雄,原純二,藤城健太郎,岡部雅郎,藤尾年樹,榊原忠義,清水甚也,おかさだろ,槙田美栄子,江崎順三,八神雄二,吉田憲司,西戸威,松本喜臣,服部幸祐,柾木卓,天野有恒,狩野舞子,安東千恵夫,結城六介,石橋良子,出口睦美,【スタジオゲスト】コラムニスト…泉麻人,映画監督…犬童一心,【スタジオキャスター】渡邊あゆみ

 

少年ドラマ完全再放送!『蜃気楼博士』全12回 | NHK番組発掘プロジェクト通信
https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail311.html
2022.06.10


少年ドラマシリーズ」ファンの皆さま、お待たせしました!
なんと発掘したシリーズが一挙再放送されるといううれしいお知らせです。
その作品は…


蜃気楼博士(しんきろうはかせ)』。都筑道夫さん原作の小説をドラマ化した作品で全12回。NHK名古屋放送局制作。1978年、44年前の1月に放送しました。


霊媒師・峠原忠明が行う守護霊を使った殺人実験。一方、超能力などありえないと断言する奇術師、ドクター・ミラージュ『蜃気楼博士』こと久保寺俊作。さらに事件の真相に迫ろうとする週刊誌記者・昭一と中学生・次郎の草間兄弟…そして驚きの結末。


各回の20分があっという間に感じられるほどテンポ良く次から次へと不思議な出来事が描かれていきます!きっと当時の少年少女たちをくぎづけにしたことでしょうね。



それではドラマを楽しむにあたって、登場人物を少し詳しくご紹介しましょう!

まずは『蜃気楼博士』久保寺俊作(井上昭文さん)。かつてアメリカでも有名なマジシャンとして活躍、“ドクター・ミラージュ”と呼ばれていました。心臓に持病があり、日本に帰ってからはマジックの表舞台には出ていません。超能力をことごとく否定します。

演じている井上昭文さんは2013年に他界されていますが、こちらには井上さんのNHKでの出演作品が紹介されています。


そして霊媒師・峠原忠明(剣持伴紀さん)。超能力で人を殺して見せると宣言し、テレビや新聞、週刊誌を巻き込み大実験を行います。そしてなんと本当に殺人事件が…!?


好奇心旺盛な中学生・草間次郎(田中健三さん)と、兄で週刊誌の記者・草間昭一(吉川淨さん)。実は今回の発掘はお兄さん役の吉川さんがこのホームページに書き込んでくださったことからアーカイブスへの登録につながりました!本当にありがとうございます。

 
蜃気楼博士 (ソノラマ文庫)
蜃気楼博士 (ソノラマ文庫)
 
 

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