【ゲームブック】感想:ゲームブック「魔法使いディノン2 闇と炎の狩人(新紀元社版)」(門倉直人/2014年)【クリア】

闇と炎の狩人 (ゲームブック 魔法使いディノン2)

http://www.amazon.co.jp/dp/4775313061
闇と炎の狩人 (ゲームブック 魔法使いディノン2) 単行本(ソフトカバー) 2014/11/25
門倉 直人 (著), 酒井 武之 (編集), 佐藤 道明 (イラスト)
出版社:新紀元社 (2014/11/25)
発売日:2014/11/25
単行本(ソフトカバー):312ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

魔法使いディノンシリーズ完結編。光と闇の魔力を得て、異境に取り残されたディノンに新たな恐怖が忍び寄る。モデムの呪縛から放たれたザーゴンがディノンを支配しようと動き出したのだ。君は、謎と恐怖の渦巻くハバン邸内に潜むザーゴンを見つけ出し、倒さなければならない。果たして君は幾重にも張り巡らされた謎の先にある“道”に到達することができるだろうか?からみあう伏線が感動のエンディングに収束する。これを読まずしてゲームブックは語れない。そして、ゲームブック史上最高の難易度とも言われた「最後の謎」のヒントも載録。


★この中の誰が敵なのか?
蘇る名作ゲームブック。魔法使いディノンシリーズ完結編。
からみあう伏線が感動のエンディグに収束する。これを読まずしてゲームブックは語ない。そして、ゲームブック史上最高の難易度とも言われた「最後の謎」のヒントも載録。
※魔法使いディノン1『失われた体』を未読の方でも本作はお楽しみいただけます。


光と闇の魔力を得て、異境に取り残されたディノンに新たな恐怖が忍び寄る。モデムの呪縛から放たれザーゴンがディノンを支配しようと動き出したのだ。君は、謎と恐怖の渦巻くハバン邸内に潜むザーゴンを見つけ出し、倒さなければならない。果たして君は幾重にも張り巡らされた謎の先にある"道"に到達することができるだろうか? 圧倒的なスケールと奥深いストーリー。これぞゲームブックの到達しうる一つの理想型! !

 

前作の感想

perry-r.hatenablog.com
 
 
 

概要

 ファンタジーゲームブック。1987年に早川書房から発売された「魔法使いディノン」二部作の二作目(完結編)を新紀元社から復刊した作品。巻末に作者からの「復刊に寄せて」という文章が追加されている。


あらすじ

 あなたこと「ディノン・バーム・テルス」は「守護神スィーラ」により目覚めさせられ、新たな体と果たすべき使命を与えられた。魔術師モデムの死と共にその束縛から逃れた闇の勢力の魔物「ザーゴン」は、今やその力を拡大させつつ、ディノンの魔力をも狙っているのだ。あなたは人間の中に潜むザーゴンを見つけ出して倒し、自らの道を見つけ出さなければならない。


ゲームシステムなど

 パラグラフ数271。

 パラメータ「体力(初期値11)」「知力(初期値8)」があり、状況に応じて数値が変動し、またこの値によって判定を行う。

 パラグラフの指定に応じて「ミスティックマーク」と呼ばれるアルファベット(C、P、S、など)を記録する。これはフラグとキャラクターのステータス表示を兼ねたもので、どのマークがいくつあるかでパラグラフが分岐する。


感想

 評価は○(前作と比較するともう一つ)。

 幻想的な世界観で読み手を魅了してくれた「魔法使いディノン1 失われた体」の続編にして二部作完結編。しかし、一定のクオリティには達していたものの期待ほどではなく、正直ちょっと期待外れでした。


 本書は、前作から「ゲームシステム」、「少なめのパラグラフ数」、「その代わりボリュームのあるパラグラフ内の文章」、「幻想的な魔法の設定」、等を全て引き継いでおり、プレイ感覚は前作と変わりありませんでしたが、ストーリーの雰囲気がまるっきり違っており、続編という感覚は殆ど無く「同一システムを流用した全く別の作品」の様に思えました。


 まず、冒頭では前作では全く登場しなかった「守護神スィーラ」が現れ、ディノンに闇の魔物を打ち倒すという新たなる使命を授けます。前作はディノンが「自分の体を取り戻す」というあくまで個人的な理由で行動していた小さな物語でしたが、本作は神から魔物と戦う事を命じられるという英雄物語的な物に昇格してしまい、いきなりの方向性の変化に戸惑わされました。

 また、前作はマルチエンディングで、結末の中にはどう考えてもバッドエンドとしか思えない物も含まれていたので、続編につなげるためにどう処理するか注目していましたが、解決方法は「スィーラがディノンに新しい肉体を与えて、それまでの展開をリセットする」だったのも呆気にとられましたね…… あの竜はなんだったのか……


 そしてディノンが少年とも少女とも見えるような新しい体で、魔物ザーゴンを見つけ倒すために旅に出るのですが、すっかりこの世界になじんでいるという設定になっているので、目的地に行くまでに途中で寄り道してお祭りに参加してみたり、と、前作の異邦人感がすっかり消えてしまっていて、前作の雰囲気が気に入った身としては結構違和感がありました。

 また魔物ザーゴンが潜んでいるというエドクの村に到着しても、ディノンが行うのは「領主の屋敷に入り込み大家族の誰かに憑りついているザーゴンを見つけ出すため、根気よく証拠集めを行う」という、ただの探偵物のような展開。前作であれ程魅力的な魔法の世界を演出してくれた作品が、何故こんなに方向が変わってしまったのかと失望甚だしかったです。まあ巻末の作者インタビューによれば、同じ内容を続けて書くと飽きるという事だったようなのですが、この方向転換は失敗だったように思えます。


 しかも、魔物ザーゴンを倒したあとは、「あれから数十年経った……」云々と、ディノンが老いてその生涯を終える頃へと移り変わり、雰囲気は前作とそっくりの幻想的なものに戻ってしまうのですが、この軌道修正にもこれはこれで面食らいました。

 本作もマルチエンディングとなっており、その中でベストと思えるものは、前作の旅の仲間だった「魔法の頭飾り・セルクル」と「シルフのフィリオン」と数十年ぶりに再会し、なんとも泣かせる感じの文章で締めくくられるのですが……

 こういった感動系ラストが待っているのなら、話の途中を探偵物のような物にせず、一貫して前作と同じ幻想的な雰囲気で進めてほしかったです。最後にいきなり作品の方向を元に戻すので唐突感が物凄く、結構良い感じの展開なのに話に感動しきれませんでした。本当にもったいなかった。


 なお、本作には実は「隠された結末」が存在し、普通にプレイするだけではたどり着くことはできません。この結末は巻末の作者インタビューで軽く触れられていますが、1987年発売のハヤカワ文庫版では多くの読者を悩ませたらしく、本書で追加された「復刊に寄せて」でより詳細にヒントが語られているのですが……、作者の説明がここに来てもひどく遠回しの曖昧な言葉ばかりで、答えにたどりつくのにとてつもなく苦労しました(※末尾に答えを記載)

 しかも、たどり着いた答えがまた全く意味不明……、おそらくこれは作者の門倉氏が作成した、同じユルセルーム世界を舞台にしたTRPGローズ・トゥ・ロード」の設定を知らないと理解できないのだと思います……(嘆き)


 本作は、一冊のゲームブックとしてクオリティは低くはなかったのですが、魅力的だった前作の続編、あるいは二部作の完結編、という作品としては力不足だったように思います。ちょっと残念な完結編でした。


参考:謎解きの答え

パラグラフ171の各行の上から五番目の文字を、左から右に横に読む。内容は『君の血を引くキロスという者が現れ、統』


パラグラフ171は他パラグラフから飛び先が無く、また自分自身を飛び先にしている孤立パラグラフ。


ディノンたちはパラグラフ264で「162番目の踊り場」に到達し、またそのあとパラグラフ271で「9番目の踊り場」に登っている。この数字を合計すると「171」になる。

またパラグラフ271で階段を「37段」登った。この本の一行の文字数は42文字のため、下から数えて37文字目、つまり上から数えて5文字目が対象。これを左から右に読む。