【ゲームブック】感想:ゲームブック「サイボーグを倒せ」(スティーブ・ジャクソン/2022年)【クリア】

Appointment with F.E.A.R. (Fighting Fantasy)
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http://www.amazon.co.jp/dp/4815613966
ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活 単行本(ソフトカバー) 2022/7/16
安田均グループSNE (著)
出版社:SBクリエイティブ (2022/7/16)
発売日:2022/7/16
単行本(ソフトカバー):1280ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

サイボーグを倒せ


つねに新しい分野を切り開いてきたスティーブ・ジャクソン氏の筆による「スーパーヒーロー」という、シリーズ中では他に類を見ないテーマの作品。タイタン・シティを舞台に、犯罪や災害から人々を守るヒーロー「シルバー・クルセイダー」の活躍を描く。シリーズ中でも異色の題材を再現すべく、「手がかり」「超能力」「英雄点」など独自のルールが多く盛り込まれている。

 
 昨年(2022年)7月に発売されたゲームブック5冊詰め合わせセット「ファイティング・ファンタジー・コレクション ~レジェンドの復活~」

ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活~ | SBクリエイティブ
https://www.sbcr.jp/product/4815613969/

www.sbcr.jp
 
 の中の一冊「サイボーグを倒せ」(スティーブ・ジャクソン/本国イギリスでは1985年発売)をクリアしたので感想をば。

概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」17作目。スーパーヒーローが活躍する活劇物


あらすじ

 きみの名前はシルバー・クルセイダー。タイタン・シティの悪と戦う正義の守護者だ。きみは犯罪組織「恐怖結社」の重要な秘密会議が、数日内にタイタン・シティのどこかで開催されるという情報を入手した。組織のリーダー・ウラジミール・ユトッシュスキーは、そのために部下の犯罪者たちを次々とタイタン・シティに呼び寄せているというのだ。きみは西側世界の平和を守るため、この危険な会議を絶対に阻止しなければならない! 

ゲームシステムなど

 パラグラフ数は440。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 特別ルールとして、シルバー・クルセイダーは四種類の超能力「超体力」「超思念」「超技術」「超電撃」のいずれか一つを選択する必要がある。

 またゲームのクリアとは関係が無いが、ゲーム内で英雄的な行為を行った場合に「英雄点」を入手することが可能で、この点数でヒーローとしての活躍ぶりを判定できる。


感想

 評価は○(夢のように楽しい一作)

 FFシリーズ17作目。スティーブ・ジャクソンアメリカン・ヒーロー・コミックの世界観をゲームブック化した作品で、プレイして楽しくて仕方ない一作でした。


 内容は、読者が架空の大都市「タイタン・シティ」の平和を守るスーパーヒーローとなり、様々な悪党(ヴィラン)たちを倒して回る、という、FFシリーズ初の(そして多分最後の)ヒーロー物ですが、これがもう面白かった!

 「主人公は普段は目立たない一市民として暮らしながら、いざ事件が発生するとスーパーヒーローに変身して悪党と対決」という設定は、アメリカンコミックのヒーロー物で読んだそのままの世界で、そんな世界で自分が主役となって活躍できるのですから、もう楽しくて楽しくてたまりませんでしたね。私はヒーロー物は別段好きというわけでは無いのですが、こういう設定や物語は何故か心をワクワクさせてくれました。

 また、ヒーローが活躍するためにはヒーローを引き立てる魅力的な悪党たちが不可欠ですが、その点についてもぬかりはありませんでした。まずはただのギャングやサメ(笑)から始まり、「アルケミスト」「サーペント」等カッコイイ二つ名を持っているものの「ただの人間」の犯罪者たち、そしてシルバー・クルセイダー同様に超能力を持つ超人たち、強大な力を持つ人外の怪物たちも登場し、最強の敵として《チタニウム・サイボーグ》のウラジミール・ユトッシュスキーが待ち受けているなど役者は豊富で、物語を読み進めながら「次はどんな敵と対決するのか?」と心躍らされました。

 またヒーロー物ですが殺伐とした要素は無く、どこかしらのんびりした空気が漂っていますし、さらにジャクソンが随所でおふざけをしているので、あちこちでちょっと笑ってしまいました。本屋に行けば「火吹山の魔法使い」が売られているし(笑)、ゲームショップでは「D&D」や「トリビアル・パスート」が置いてあるし、その他にコンピューターゲームの「ワックマン」だの、お芝居の「ラッツ」だの、遊園地の「ウィズニ―ランド」だの、歌手の「ジョージ・ボウイ」だの、と、発売当時の色々をもじったネタが多数盛り込まれており、その辺りもなかなかに面白がれました。



 しかし、ストーリー自体はとても楽しいのですが、難易度の方はジャクソン(英)作品らしくかなり高めで、クリアするまでには相当苦労させられました。

 ハッピーエンドにたどり着くためにシルバー・クルセイダーは秘密会議を阻止する必要がありますが、会議シーンは隠しパラグラフになっていて、ここにジャンプするためにはあらかじめ会議の開催日時と場所を知っていないといけないので、それまでに情報が手に入っていないとバッドエンド一直線です。

 そして会議に関する情報は悪党たちが持っているので、彼らを見つけて勝利し白状させる必要がありますが、物語は極めて複雑に分岐して拡散していくので、何も考えずにプレイすると悪党との戦いを素通りしてしまう危険があるため、悪党たちと漏れなく遭遇するのは結構大変です。

 特に会議の情報を持つ悪党たちは隠しパラグラフに隠れているので、どこに隠れているかという情報をまた別の悪党から聞き出す必要があり、このように情報の入手は数珠繋ぎになっているので、一つも見逃さないようにしなければなりません。

 また、本作は使用する超能力によってクリアするルートがそれぞれ別という意地悪な事になっています。本作はプレイ開始前に役立つ情報を幾つかもらえるのですが、それはどの超能力を選んだかで内容が違っています。また同じ敵と戦った場合でも、能力によって楽勝だったり逆に必敗だったり、と結果が違います。それらが積もり積もって、同じようにプレイしても、展開がまるで変わってくるのです。

 という具合で、複雑なフローチャートを大量に書く必要があり、膨大な隠しパラグラフがあり、会議の情報は断片的で意味の分かりづらいものばかり、etcetcという事で、本作はクリアするのが本当に大変でした。

 それだけに、秘密会議の隠しパラグラフにジャンプする前には「ジャンプした先がまるで見当はずれだったらどうしよう……?」と毎回不安になって緊張しましたね(笑) とは言え、ふりかえれば、難易度は理不尽に高いということは無く、入手した情報を丁寧にメモして活用すればクリアできましたので、この点については不満はありません。


 本作で一つだけ不満があるとすればストーリーの盛り上げ方ですね。本作は全5日間の物語なのですが、4日目まではタイタン・シティ各地でのんびり(?)悪党退治を楽しめるのに、5日目にいきなり「会議の場所はどこだ?」とクライマックスに切り替わってしまい、決戦に勝利すればそのままエンドなので、かなり唐突感が否めないのです。

 できる事なら、初日はのんびりした雰囲気から始まるが、1日経過するごとに登場する敵がどんどん強くなっていって雰囲気も緊迫していき、盛り上がったところで最終日の5日目を迎える、という感じになっていれば、これはもう文句無しだったのですが、高望みしすぎでしょうか。


 とはいえ、スーパーヒーロー物という珍しいテーマににもかかわらず、しっかりとした造りで楽しませてもらえたので、ゲームブックの品質としては全く文句はありません。スーパーヒーロー物というテーマを十二分に生かした大満足の一作でしたね。
 
 
 

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