【ゲームブック】感想:ゲームブック「地獄の館」(スティーブ・ジャクソン/2022年)【クリア】

Fighting Fantasy 10 House Of Hell (Puffin Adventure Gamebooks)
Fighting Fantasy 10 House Of Hell

http://www.amazon.co.jp/dp/4815613966
ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活 単行本(ソフトカバー) 2022/7/16
出版社:SBクリエイティブ (2022/7/16)
発売日:2022/7/16
単行本(ソフトカバー):1280ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

地獄の館
これもまたスティーブ・ジャクソン氏による作品で、「現代」「ホラー」という題材に挑んだ意欲作。豪雨の中、事故で車を失ってしまった主人公は、奇妙な洋館へと迷い込む……。本作では独自の数値として、主人公が許容できる「恐怖」の限界を表した「恐怖点」を導入。体力点の管理などと並行してこの数値の上昇を極力抑えながら、館に隠された真相を解き明かさねばならない。

 
 今年7月に発売されたゲームブック5冊詰め合わせセット「ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活~」

ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活~ | SBクリエイティブ
https://www.sbcr.jp/product/4815613969/

www.sbcr.jp

 の中の一冊「地獄の館」(本国イギリスでは1984年発売)をクリアしましたので、感想をば。


概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」10作目。シリーズ初の現代ホラー。


あらすじ

 真夜中、土砂降りの中で車を運転していた君は、完全に道に迷った末に、人里離れた場所で事故を起こし立ち往生してしまった。君は助けを求め、近くに見える館へと向かったが、その館で待ち受けていたのは想像を絶する恐怖だった。君は館での恐怖の夜を生き延びることができるか!?


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は400。ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というシステム。

 その他に本作独自の追加ルールとして、主人公にパラメーター「恐怖限界点」(サイコロの目+6)が用意されています。主人公はストーリーの中で恐怖体験をするたびに、指定された「恐怖点」という数値を加算し、恐怖点の合計が恐怖限界点に達すると、体力が残っていても精神的に耐えられなかった、としてショック死することになります。


感想

 評価は◎(面白い)。

 「スティーブ・ジャクソン初」にして「FFシリーズ初」の現代ホラー物。難易度が極めて高い作品でしたが、にもかかわらず何度でも挑戦したくなるやりごたえがあり、クリアした時の満足度も高い秀作でした。


 内容は「探索型」で、恐怖の館に迷い込んだ主人公が、館の中を隅々まで歩き回って、クリアするための情報やアイテムを集め、最終的に館からの脱出を果たす、というもの。プレイヤーの選択によって、館の探索は色々と異なるルートから行えるバリエーションがあり、自由度はそれなりに高い作品です。


 さて、この作品の難易度はとにかく高く、プレイしていてくじけそうになることもしばしばでしたが、その理由は以下の四つ。


 一つ目は館の広大さ。舞台となる館は、地上二階と地下室からなる広大な間取りで、しかも各階層に多くの部屋が存在するため、間取りや発生するイベントなどを記録していくだけでかなりの手間がかかりました。また部屋と部屋との繋がりについての描写が結構あいまいなため、間取り図をどのように記載していけばよいのかについても頭を悩ませられました。


 二つ目はバッドエンドの頻発。館には「入室した時点で既にバッドエンド確定」(入室したこと自体が間違いで、素通りすべきだった)という部屋がやたら多く、室内でイベントが発生して話が進みそうに見えても、結局は袋小路でどうにもならなかった……、ということが多数あり、これに引っかかって何度も何度もやり直しを余儀なくされました。またバッドエンドでないとしても「入っても恐怖点が上昇するだけで得るものは何もない部屋」(入室するだけ損)もかなりあり、その場合も恐怖点がMAXに達してショック死してしまい先に進めないという事に……


 三つめは複雑なフラグ立て。例えば「ある人物」から手掛かりを聞き出すためには、それ以前にも一度顔合わせをしておく必要があり、また必須のアイテムを入手しておいて渡さないといけない、というように、フラグ立てが複合的。たとえ、プレイヤーが幸運にも死なずにそこまでたどり着けても、適切にフラグを立てていないと結局は行き詰ってやり直し、という様に作られており、相当に意地悪です。


 そして四つ目は実に巧妙な(というより悪質な)パラグラフ構成。本作は、館内の同じ場所であってもいくつも違うパラグラフ番号が付けられており、一見同じ文章に見えても、「その場所にどちらの方向から来たか」で、微妙に展開が異なるように作られています。つまり右方向から来た場合には何も起きないが、左方向から来た場合にはイベントが発生する、という場所が何か所も存在します。

 二階の部屋「アスモデュース」と「エブリス」はその典型で、ある方向から行くと前を通り過ぎる事しかできないため、別のパラグラフを経由すれば部屋に入れる、と気が付くまでに相当な時間がかかりました。

 さらに悪質なのが、クライマックスの最終決戦の場に向かうためのパラグラフで、きちんと武器を手に入れたにもかかわらず、決戦場に乗り込むパラグラフが見つけられず、解決策に気が付くまでに数時間煩悶しました。ようやく、その仕掛けに気が付いた時には「いやはや、これは酷いわ……」と心底思いましたね(苦笑)


 と、このように、本作は難易度が高くてプレイがキツイことは間違いなかったのですが、にもかかわらず途中で放り出す気にはならない魅力がありました。なんといっても館の各部屋で発生するイベントがそれぞれ面白く、全てのイベントを体験するまではとても止められないという気持ちは、やり直し作業の大変さを打ち消して上回りました。また、ラストバトルで勝利した時には「やった……」と何とも言えぬ高揚感が巻き上がってきましたし。このあたりは、さすがスティーブ・ジャクソンの手腕というべきでしょう。

 ということで、プレイしている途中は、本当にクリアできるのかがなかなか見えてこず、泣きたくなることもありましたが、いざ終わってみれば、十分な満足感を与えてくれる作品でありました。良かったです。
 
 

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