【ゲームブック】感想:ゲームブック「巨人の影」(イアン・リビングストン/2023年)【クリア】

Fighting Fantasy: Shadow of the Giants
Fighting Fantasy: Shadow of the Giants 2022/9/1

http://www.amazon.co.jp/dp/481561962X
ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」 単行本(ソフトカバー) 2023/7/14
安田均グループSNE (著)
出版社:SBクリエイティブ (2023/7/14)
発売日:2023/7/14
単行本(ソフトカバー):1384ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

巨人の影


40周年記念作品でファンサービスにあふれた作品。火吹山の奥深くで発見されたアーティファクト。その力が巨人を世に解き放つ……!

 
 今年(2023年)7月に発売されたゲームブック5冊詰め合わせセット「ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」」

ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」 | SBクリエイティブ
https://www.sbcr.jp/product/4815619626/

www.sbcr.jp
 
 の中の一冊「巨人の影」(イアン・リビングストン/本国イギリスでは2022年発売)をクリアしたので感想をば。

概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」70作目。剣と魔法系ファンタジー物。


あらすじ

 冒険者であるきみは火吹山の迷宮に隠された財宝の隠し場所の地図を手に入れた。あの伝説の魔法使いザゴールが作った迷宮には、未だ発見されていない隠し部屋があり、そこには莫大な黄金が眠っているという。きみは財宝を手に入れるため、まず火吹山にほど近いアンヴィルの町を目指したが……?!


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は400。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 特別ルールは無し。


感想

 評価は○(まずまず楽しめる一作)

 FFシリーズ70作目。2022年に本国イギリスで「ファイティング・ファンタジー生誕40周年記念作品」としてイアン・リビングストン御大が発表した最新作です。記念すべき作品だけに、リビングストンも力を入れたのか、まずまず楽しめた一作でした。


 冒険者であるきみは、あの伝説の魔法使いザゴールが作った迷宮に未だ発見されていない隠し部屋があり、そこには莫大な黄金が隠されていると知り、すぐさま探索に向かった。しかしきみが見つけ出したものは呪われた財宝「混沌の王冠」で、しかもきみは誤って宝冠から敵の巨人四体を解放してしまった。きみは巨人たちにアランシア全土が蹂躙されるのを阻止することができるか?!


 本作は、シリーズ40周年記念作品という事でリビングストン御大が頑張ったのか、非常にボリューム感のあるプレイしがいのある一作に仕上がっていました。パラグラフ数自体は通常の400個ですが、既存作品と比較して量が5割増しくらいに感じるくらいに中身が濃かったですね、

 事件の発端があの火吹山で発生するというのはシリーズの原点を意識させてくれますが、同時に冒険のテーマが「魔法の鉄巨人との戦い」という今までに例を見ない新しいものであること、リビングストン作品では(おそらく)初となる「謎を解いてその答えのパラグラフに飛ぶ」というパラグラフジャンプが採用されていること、等、懐かしい要素と全く新しい要素を同時に取り入れており、その辺りの多彩さがとても楽しかったですね。


 また冒険の内容が

 シティーアトベンチャー(軽め)→ダンジョン探索(軽め)→野外での冒険(軽め)→
→シティーアトベンチャー(本格)→ダンジョン探索(本格)→野外での冒険(本格)→エンド

と何度も場所と種類を変えて展開されるので全く飽きが来ませんでした。特に中盤でのハーメリンの町での冒険は、シティーアドベンチャーの傑作「盗賊都市」の再来を思わせ、町の中を散策しながら様々なイベントを体験するのは心の底からワクワクさせられました。


 しかも、リビングストン作品というと「回避不可能な戦闘がやたら多い」という印象が強いのですが、本作では序盤から中盤にかけて戦闘が殆ど無く、しかも選択肢次第で回避可能な作りとなっており、終盤に来るまでは殆ど戦う必要がありません。という事で、終盤までは難易度的にはかなり楽な作りでした(※もっとも終盤に入るとそのツケをきっちり払わされるのですけどね(苦笑))


 という感じで本作は楽しくて良いところが多いのですが、同時に気になるところも同じくらいありました……


・不満1 アイテムが多すぎ

 主人公は色々な場所でアイテムを購入することが出来るのですが、その種類がやたら多く最終的には50~60種類にものぼり、しかもその中から必要なアイテムを的確に選んでいないとのちのち詰みになる、という構成になっています。この辺りは正直面倒くさくてやる気をなくしそうでした。


・不満2 緊迫感が薄い

 冒頭で鉄巨人が復活しアランシアを蹂躙しようと動き始めたというのに、一旦鉄巨人から離れた後は緊迫感がまるで感じられなくなるのはイマイチでした。主人公はハーメリンの町にたどり着いたら、すぐさま巨人を倒す方法を知っている男を見つける必要があるのに、その使命を忘れたかのように、パイ食い競争に参加したり道端にある倉庫を覗いてみたり、と、寄り道ばかりしていて、これはいかがなものかと思いました(まあ、そういう寄り道をさせているのはプレイヤー自身の選択ではありますけど……)


・不満3 終盤のバランス

 先に途中までは敵との戦闘が少なくて楽という風に書きましたが、その分終盤はバランスがきつくなっており、正しいアイテム、高い技術点、極上のサイコロの目、鋭いカン、の全てが揃っていないと、とにかく死にまくる羽目に陥ります。まあクライマックスだからきつめに仕上げるのは解りますが、正直これはやりすぎでは、という感じでした。


・不満4 主人公の扱い

 主人公は、最終的に鉄巨人を倒せた場合、人々から英雄として称えられ莫大な報酬を受け取れます……、が、そもそも鉄巨人を復活させアランシアを壊滅の危機に直面させたのは主人公であり、その当事者の主人公が自分の蒔いた種を自分で刈っただけなのに英雄面で賞賛と報酬を受け取るのはちょっと……、ねぇ?


 という事で、良い点が有ると共に不満点も結構ありましたので傑作認定とは行きませんでしたが、さすが巨匠らしい巧みなストーリー運びと密度で、プレイする甲斐があった作品でした。全くダメという事は無かったので40周年記念作品としては十分合格だったと思います。
 
 
 

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