【ゲームブック】感想:ゲームブック「アランシアの暗殺者」(イアン・リビングストン/2023年)【クリア】

ASSASSINS OF ALLANSIA (Fighting Fantasy)
ASSASSINS OF ALLANSIA (Fighting Fantasy) 2019/9/5

http://www.amazon.co.jp/dp/481561962X
ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」 単行本(ソフトカバー) 2023/7/14
安田均グループSNE (著)
出版社:SBクリエイティブ (2023/7/14)
発売日:2023/7/14
単行本(ソフトカバー):1384ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

アランシアの暗殺者


2019年に発表された新作。賞金首となってしまった主人公に手練れの暗殺者たちが襲いかかる。はたして生き延びることができるか……!?

 
 今年(2023年)7月に発売されたゲームブック5冊詰め合わせセット「ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」」

ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~イアン・リビングストン編~「巨人の影」 | SBクリエイティブ
https://www.sbcr.jp/product/4815619626/

www.sbcr.jp
 
 の中の一冊「アランシアの暗殺者」(イアン・リビングストン/本国イギリスでは2019年発売)をクリアしたので感想をば。

概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」68作目。剣と魔法系ファンタジー物。


あらすじ

 冒険者であるきみは、ポート・ブラックサンドで出会った老船長との賭けで、無人島・蛇島へと向かうことになった。上陸した者は全て行方不明になるという蛇島で一か月間生き延びることが出来れば、きみは金貨20枚を手に入れることが出来る。きみはこの危険な島で生き延びることが出来るか!?


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は400。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 特別ルールは無し。


感想

 評価は○(バランスは厳しいがストーリーは面白い)

 FFシリーズ68作目。本国イギリスで2019年に発売された、今回初めて翻訳された作品です。リビングストン作品らしく相変わらずバランスは厳しいものの、ストーリーは秀逸で夢中になれる一作でした。


 かつて魔王子ザンバー・ボーンを倒しアランシアを救った主人公は、賭けのため無人島・蛇島を訪れていた。だがやがて主人公は、ザンバー・ボーンの部下にしてポート・ブラックサンドの支配者アズール卿が、復讐のため自分を重罪人として指名手配したことを知る。主人公は、賞金目当てに襲い来る暗殺者たちを退けて生き延びることが出来るか?!


 本作はある程度プレイすると66作目「危難の港」
 ↓

ゲームブック】感想:ゲームブック「危難の港」(イアン・リビングストン/2022年)【一応クリア】
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2022/08/15/190333

perry-r.hatenablog.com


のその後を描いたものとわかるようになっており、FFシリーズ初の「同じ主人公が別の作品でも活躍する続編※」という事が解ったときには妙に感慨深かったですね(※ソーサリー四部作は別枠と考えた場合)


 さて、本作はとにかくストーリーがめっぽう面白く、プレイしていて時間を忘れてのめり込んでしまいました。序盤の蛇島滞在中こそ、おなじみのFF風味の「アイテムを見つけた、使うか?/そのまま先に進むか?」という選択肢だらけでやや失望しましたが、一旦主人公が暗殺者に狙われていると解ってからは雰囲気も一変。襲い来る暗殺者との死闘を繰り広げながら展開される逃避行は、今後どの様に進んでいくのか全く予想がつかず、選択肢を選ぶのももどかしいほどに夢中にさせられました。

 本作はフローチャートを書いてみると、蛇島滞在時は単純なほぼ一本道ですが、一旦島を離れてからはリビングストン作品とは思えないほど複雑に絡み合う物となり、書いていくのにかなり手間がかかりましたが、ストーリーの面白さはそれを全く苦にさせませんでした。

 ゲームバランスの方は相変わらずのリビングストン作品らしい辛さで、暗殺者集団との次から次への連戦は厳しいものがありました。まあ、一人目の暗殺者を倒した際にペンダントを入手する描写があったので、すぐに「倒した暗殺者の数が少ないとクリアできない」ことは理解できましたが、まさか暗殺者が合計××人もいて、そのすべてに勝利しないとクリアできない、という過酷な条件だったとは想像もしませんでした(苦笑) 

 「プレイのヒント」には、いつもの決まり文句で「正しいルートなら、どんな低い能力値のキャラクターでもクリア可能」云々と書かれていますが、あの暗殺者集団に全勝するのは、超優秀なキャラでないと無理なのでは?


 と、いつものバランス問題はありましたが、ストーリーはリビングストン作品の中でも屈指の面白さでした。暗殺者集団だけでなく賞金目当ての市民なども襲ってくるという、誰にも気を許せない状況の中での決死の逃避行。蛇島をふりだしにポート・ブラックサンド、カアドの街を経て、迷宮探検競技で有名なファングでクライマックスを迎えるというワクワクする構成。あの伝説の存在アズール卿と対面するだけでなく、サカムビット公まで登場するという豪華さ。あと「死の罠の地下迷宮」の蛮人スロムも登場するし。etcetc。

 とどめで、必死に生き延びてパラグラフ400にたどり着いてもハッピーエンドにならず、強制的に迷宮探検競技に挑戦させられるというなんともやるせない結末……、と、ストーリーのどれもが強烈に記憶に残りました。


 ゲームブックは「ゲーム+ストーリー」の二つの面を併せ持っていますが、FFシリーズは「ゲーム」要素、つまり、迷宮を探索したりアイテムの入手に四苦八苦したりといった要素が強めという印象があります。しかし本作は、もちろんゲーム性もあるものの、比重としては「ストーリー」要素が圧倒的に強く、読み終えた時には比喩でもなんでもなく、一冊の小説を読み終えたような満足感がありました。

 前作「危難の港」が難易度が低めで初心者向けだったのに対し、続編の本作は一転難易度が高めに設定されていましたが、にもかかわらず同じくらいの満足感を得ることが出来ました。ベテラン作家リビングストンの円熟味が生み出した素晴らしい一作でしたね。

 しかしあの結末を読んだ読者なら誰でも思うでしょうけど、この作品の後主人公がどうなったのか、その続きを書いてほしいですよね~。
 
 

おまけ

 日本語版の表紙絵は「ファイティング・ファンタジー・フェスト3」で発売された限定版のものだそうです。
 ↓

Assassins of Allansia | fightingfantasy
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おまけ2

 作中に登場する、わりと親切な雑貨店店主ハロルド・コーンペッパーのイラスト(パラグラフ23)は、どこかで見たような顔過ぎて笑った(笑)
 
 
 

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