感想:小説「ハミラー・チューブ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 517巻)(2016年3月24日(木)発売)


ハミラー・チューブ (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-517 宇宙英雄ローダン・シリーズ 517)

ハミラー・チューブ (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-517 宇宙英雄ローダン・シリーズ 517)

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ハミラー・チューブ (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-517 宇宙英雄ローダン・シリーズ 517) 文庫 2016/3/24
ペーター・グリーゼ (著), H・G・フランシス (著), 工藤 稜 (イラスト), 小津 薫 (翻訳)


ノルガン・テュア銀河への出発直前に《バジス》船内に思いもよらぬ声が響きわたった!


新銀河暦424年末に、ペリー・ローダンは地球から8600万光年かなたにあるノルガン・テュア銀河へ“バジス”を送ろうとしていた。ノルガン・テュア銀河の惑星クーラトにある深淵の騎士の関連施設に行けば、三つの究極の謎を解く鍵が見つかるかもしれないのだ。ところが、出発準備の進む“バジス”内で、四百年あまり前に完成したのち一度も作動しなかった新型ポジトロニクス“ハミラー・チューブ”がいきなり活性化した!


発売日 = 2016年3月24日(木)
サイクル= 第16サイクル「宇宙ハンザ」


【※以下ネタバレ】


内容

◆1033話 ハミラー・チューブ(ペーター・グリーゼ)(訳者:小津 薫)

 過去NGZ2年に死んだ天才科学者ペイン・ハミラーは、超ポジトロニクス「ハミラー・チューブ」を《バジス》に搭載したものの、ハミラー・チューブは起動しないままだった。ところがNGZ424年、突如ハミラー・チューブが動作を開始し!?


 非常に面白い話。まずは序章で400年前の政府に批判的な新聞(かわら版)の記事が引用されるのですが、これが新銀河暦を認めていなくて、発行日が「3589年(違法な新暦では2年)」とか「3589年(容認不可能な新暦では2年)」とか書いてあるのが笑えます。確かに、いきなり今年で西暦を廃止して別の暦法に変えます、とかいわれても納得できませんよねぇ。

 P17〜19にかけては、新開発の「メタグラヴ・エンジン」の技術説明が記事の引用の形で書かれています。このエンジンは何かを噴射するのでは無く仮想的なブラックホール的な物を進行方向に作ってそれに牽引させるため船の形に制約が無くなるし、亜光速/超光速を同一のエンジンでまかなえるため、今までの様に「光速以下用」「超光速(銀河内用)」「超光速(銀河間飛行用)」と何種類も搭載しなくていいし、外部から燃料を持ってくる必要もない(別の宇宙から持ってくる)し、という夢の様なエンジンです。

 《バジス》船内に船長の6歳の息子オリヴァーがうろうろしていて仰天しますが、もう《バジス》はLFTの軍艦では無く、名目上は貿易組織の宇宙ハンザに所属する船だから、これも有りなんでしょうね。

 初登場のハミラー・チューブの性格が機械とは思えない愉快なキャラで、大騒ぎを引き起こしても全く悪びれない、結構ずうずうしいキャラだったりします。

 さらに何故か老いずに若いままのデメテルが再登場。ロワ・ダントンはデメテルと引きこもって暮しているそうですが、収入はどうしているのかしらと気になりました。



◇1034話 虚無からの指令(H・G・フランシス)(訳者:小津 薫)

 謎の力に操られるテホ・トロトは惑星アルキスタルで未知の施設を発見するが!?


 トロトを操る謎の力は綿密なのだが雑なのだか良くわからない。アルキスタルの謎の手袋を入手するため、トロトを操ってあれこれしたようですが、もっとスマートな手があったのではないかという気がしなくもなく。また140億光年向こうのクエーサーが目標とは、ローダン・シリーズもいきなり物凄いスケールアップぶりです。


 前半はすごく面白く、後半はそこそこ、のお話でした。


表紙絵

 メインは横たわるデメテル。背景は戦闘中の《バジス》。


あとがきにかえて

 担当は「小津薫」氏。全5ページ。イタリア旅行に行ったときに車上荒らしの被害にあった話。


次巻予告

 次巻は518巻「少女スフィンクス」(ウィリアム・フォルツ&ペーター・テリド)(2016年4月7日(木)発売予定)。


おまけ

 あらすじネタバレ版はこちらへ。

ペリー・ローダンへの道
http://homepage2.nifty.com/archduke/PRSindex.htm