感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第80話(シーズン4 第2話)「第三次世界大戦」


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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第80話 第三次世界大戦 The Numbers Game (シーズン4 第2話)

 

あらすじ

5年前に失脚した元独裁者。彼の復権のカギを握る軍資金を押さえるため、IMFチームは第三次世界大戦勃発を装い、スイスの口座番号を聞き出そうとする。

【今回の指令】
 ラグザニア(Luxania)の独裁者だったラドス・ゴーラン将軍は、5年前公職を追放されたが、現在権力奪回のための反乱を企てている。IMFはゴーラン将軍の意図を粉砕しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:トレーシー、ゼグラー(医師)、無名の劇団員たち(「ハートフォード劇団」所属)


【作戦の舞台】
 ラグザニア


【作戦】
 IMFはゴーラン将軍がスイスの銀行に預けてある莫大な財産を全て盗み取ることで、将軍の反乱計画を叩き潰すことにした。そのためには、将軍から銀行の口座番号を聞き出す必要があった。

 ゴーラン将軍の若い妻エバと、ゴーラン将軍の副官デネシュは、それぞれ将軍の莫大な財産を欲しがっており、互いに憎み合っていた。

 ゼグラー医師は、ゴーラン将軍に肺炎そっくりの症状が起きるように仕組んでおいて、往診という名目で看護師役のトレーシーと共に屋敷を訪問する。そして、ゴーラン将軍に、ラジオに偽装したテープレコーダーで、戦争が起きそうだという偽ニュースを聞かせた後、麻酔で眠らせて、ゼグラーは一旦屋敷を離れる。

 その後、フェルプス・パリス・ゼグラー・劇団員二人は、ゴーランの屋敷の地下にある地下壕に忍び込み、さらにゴーランを運び込んでから目を覚まさせる。ゼグラーはゴーランに「各国とヨーロッパ人民共和国との間で第三次世界大戦が始まった」と説明し、首都は原爆で破壊され、エバたちは既に死に、地表は放射線で汚染されていて出られない、と大嘘を吹き込む。

 一方、屋敷では、トレーシーたちがエバやデネシュにコーラン将軍は病気で死んだと説明し、二人は財産を手に入れようと暗闘を始める。

 フェルプスやパリスたちは、命からがら地下壕に逃げこんで来た兵士という設定で、パリス演じる軍曹はフェルプス演じる大尉の命令に辟易している、という態度を見せる。ゼグラー医師は、ゴーランに対し、ペニシリンを打たないともう助からないと宣告するが、ペニシリンフェルプスが持っていて渡そうとしない。

 ゴーランはパリスに対し、金をやるのでフェルプスを殺してペニシリンを奪ってくれ、と依頼する。パリスはフェルプスを射殺したふりをしたあと、報酬を要求するが、ゴーランからラグザニア紙幣を差し出されて、もうこの国の金など意味が無いと怒り出す。

 狼狽したゴーランは、スイスの銀行には金塊などの財産を預けてあるので、その口座番号を教える代わりにペニシリンをくれと頼む。パリスがその番号(49743)を確認したその瞬間、地上から地下壕にエバやデネシュたちが降りてくる。ゴーランはエバたちが生きていることに仰天するが、さらに死んだはずのフェルプスたちが突然起き上がって壁の穴から出て行くのを見て唖然とする。最後、ゴーラン・エバ・デネシュが地下壕で呆然としているシーンのあと、IMF一行が車で立ち去るシーンで〆。


監督: レザ・S・バディイ
脚本: リー・ヴァンス


感想

 評価は○。

 核戦争の勃発という途方もない大芝居を仕掛けてターゲットをひっかける、という痛快エピソード。IMFチームが相手を騙すときは、変にリアリティがあるより突拍子もない設定の方が視聴者としては楽しいが、今回はその好例だった。

 ターゲットから銀行の口座番号を聞き出すのに、他の手もいくらでもあったとは思うが、今回IMFチームが選んだのは「第三次世界大戦の勃発」という大ネタなのが実に嬉しい。「第三次世界大戦」は、2017年時点では、もうSFの範疇に入る空想じみた設定でしかないが、1980年代末まではリアルに「明日起こるかもしれない出来事」だった。放送時点(1969年)はキューバ危機(1962年)から10年も経っていないのだから、リアリティは21世紀とは比較にならないだろう。そんな背景を考えると、冷戦時代を体験している世代とそれ以降では、今同じ番組を見ていても受け取り方が違うのだろうなぁ、と妙に感慨にふけってしまった。

 核戦争が勃発したという設定で、外部から隔絶されたシェルターの中でターゲットを騙して秘密を聞き出す、という展開は、第43話(シーズン2 第15話)「焦土作戦」で一度使われたネタではある。しかし今回は、シチュエーションは似ていても、フェルプスとパリスの対立を見せておいて、それを餌に相手を上手く釣り上げる、という展開で違いを出しており、とくに二番煎じ感は無かった。

 今回はゲストメンバーとして、トレーシー(リー・メリーウェザー)が登場する。トレーシーは、序盤のIMFチームの作戦会議のところから参加しており、看護師に化けて屋敷の中で工作を行うなど、1~3シーズン目のシナモンと同じくらい活躍していた。

 またいつもは裏方のウィリーも、今回は弁護士役でエバやデネシュを騙す役を担当しており、いつもの回の5倍くらいは喋っていたのが新鮮だった。

 今回はIMFチームの助っ人として、第78話「尋問」(シーズン3 最終話(第25話))に登場していた「ハートフォード劇団」が再登場して、また兵士役を演じてくれていた。基本的にIMFの実行チームは、リーダーのフェルプスがミッションの内容に応じて、手持ちファイルから適したメンバーを選抜して編成するが、冒頭のシーンを見る限り、この劇団は「劇団員全員でワンセット」という形で呼び出される様である。兵士役のモブが必要なミッション専用で契約しているのかもしれない。

 トレーシーたちは、ゴーラン将軍を地下壕に運んだあと、エバたちの目をごまかすため、ゴーランそっくりのダミー人形をベッドに寝かせる。これは空気を入れて膨らませると人間大になるという空気人形なのだが、顔がびっくりするほど精巧にできており、膨らませるシーンを見せられなければ、作り物だとは信じられなかっただろう。

 今回はIMFチームは特に人死にも出さずにマイルドに作戦を終了させるが、チームが立ち去った後、ゴーランとエバが地下壕で腑抜けた表情でぼんやり座り込んでいるオチがなんとも印象的だった。


 今回のサブタイトルの原題「The Numbers Game」とは、数字を当てるタイプの宝くじのこと。口座番号を宝くじの数字に見立てて、当りの数字を見つけ出そう、という意味合いかもしれない。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが港に設置されている望遠鏡に近寄り、望遠鏡の基部に鍵を差し込みふたを開けると、オープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ望遠鏡を覗いていると、写真が映し出される。指令は最後に「なお、この録音は自動的に消滅する」といい、望遠鏡の中の写真が燃え上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。ラグザニアの元独裁者ラドス・ゴーラン将軍は、公職追放後五年を経た今、権力奪回のための反乱を決意、このような反乱は現民主主義体制を覆し、内戦に持ち込むことによって成功する。

 そこで君の使命だが、ゴーラン将軍の意図を粉砕することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ