【ウォーゲーム】感想:雑誌「ゲームジャーナル No.66」『特集:秀吉 怒涛の天下統一』

ゲームジャーナル66号 秀吉怒涛の天下統一

ゲームジャーナル公式サイト http://www.gamejournal.net/
発売日:2018年3月1日(3,6,9,12月の1日発売)

【※以下ネタバレ】

1.付録ゲーム

秀吉 怒涛の天下統一!(ゲームデザイン:呼拉中村)

http://www.gamejournal.net/item_list/gj_066
本作は秀吉プレーヤーと反秀吉プレーヤーの二人のプレーヤーによって争われ


ゲームはオープニングの「三日天下」ターンにおける明智光秀討伐にはじまり、当初は各陣営、羽柴、柴田他畿内周辺の数名の旧織田系大名しか参戦していないが、ゲームが進むにつれ、徳川、島津、北条、毛利、上杉、長曾我部、伊達など各地の有力大名が続々参戦し、次第に戦場が日本全国に拡大していく。
秀吉、怒涛の天下統一を描いた傑作!

 
 秀吉の1582~90年の天下統一の戦いをテーマにしたゲーム。考えてみれば「何故このテーマが今まで無かったのか」と思える作品。最終的に戦国時代を終わらせて日本を再統一したのは秀吉なのだから、いくらでもこのテーマが有って不思議は無かったのですが……

 やはり、光栄の「信長の野望」シリーズのせいでしょうか。織田信長か誰かになって一国を振り出しに日本を統一しよう!という野望溢れるテーマが一般的となったことで、逆にヒストリカルな「秀吉の立場になって、本能寺以降の歴史をトレースして日本を統一しよう」というテーマは、ゲーマーたちの頭に思い浮かばなくなっていたのかも……

 
 

2.雑誌内容

●特集「秀吉 怒涛の天下統一」

 上田洋一氏のヒストリカルノート、松田大秀氏のリプレイ漫画、を掲載。賤ケ岳あたりまでは結構語られてたのでそこそこ知っていましたが、四国・九州制圧の辺りは初めて知りました。



●ゲームの殿堂(座談会)

 今回のテーマは「対戦プレーの日本★全国の戦い」。つまり日本全体がマップになっていて、なおかつマルチではないゲームが対象。「信長最大の危機」を入れたら問答無用で一位になってしまうからか対象ゲームからは外されており、最終的にSSシリーズ「太平記」が殿堂入りとなりました。

 まあ「太平記」は近々再版するという話もあるので、そのための予告編だったのかもしれませんけど。



●ウォーゲームデザイン討論(座談会)

 今回のテーマは「ゲームジャーナルはディベロップしていない!?」。読者代表の方が、GJゲームに対する三大不満をぶつけて、関係者がそれに回答する形になっています。


Q1:
 GJのゲームはプレイ時間がやたら長い物が有ったりするが、これはまともにディベロップしていないのでは?

A1:
 基本的にデザイナーと編集部の関係は、「部下と上司」ではなく「作家と編集者」と同じ。編集者が直してくれと言ってもデザイナーが全く応じないこともあり、その時に編集者が強引に変更することはできない。

 またディベロップ前はプレイ時間16時間だったゲームが、ディベロップで半分の8時間に短縮されたとしても、プレイヤーからすれば「8時間もかかるなんてディベロップしてないのでは!?」と思われてしまう。


Q2:
 コンセプトがぼけているのでは? 「曹操最大の危機」など、官渡の戦いまでで十分で、赤壁までプレイさせる意味が無いような。

A2:
 それは売るため。官渡の戦いまでしかないゲームより、赤壁までプレイできるゲームの方が過去の経験からして絶対売れる。


Q3:
 ルールブックが読み辛い

A3:
 それはSPI時代から言われている話で、万人が納得する良いルールブックというのは無いのでは。



●ゲーム再発見

 今回のお題はアバロンヒルの超お手軽ファンタジーマルチ「The Mystic Wood」。翔企画版シミュレイターで紹介されていましたよねぇ。

 ちなみに何故2018年にこのゲームのネタかと言うと、2017年に新ルールが発表されたからだそうです。

これですな。

Mystic Wood rules, version 2.0 | The Mystic Wood | BoardGameGeek
https://boardgamegeek.com/filepage/90958/mystic-wood-rules-version-20

 
 

3.次号予告

 No.67(2018年6月1日発売予定)の特集/付録ゲームは「激闘!タイフーン電撃戦」。いつものテーマのやつです。そして将来的には「バルバロッサ電撃戦」シリーズ三部作と連結可能になるかも?ですって。
 
 

他の号の内容・感想はこちらからどうぞ

ゲームジャーナル内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
秀吉の天下統一戦争 (戦争の日本史)
 
 

【映画】感想:映画「生きる」(1952年:日本)


生きる [Blu-ray]

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム 2017年12月31日(日)

【※以下ネタバレ】
【※以下、相当辛辣な感想ですので、当作品が好きな方はご注意ください】
 

市役所の市民課長・渡辺は、勤勉にみえながら無気力な日々を送っていたが、ある日、自分がガンで、余命わずかなことを知り、がく然とする。自暴自棄になるが、希望に燃える若い女性事務員の姿に、自分も生きがいを見つけようと感じた渡辺は、さまざまな困難に立ち向かい、市民から要望されていた、清潔で新しい児童公園を作ろうと奔走するが…。黒澤明監督の代表作であり、志村喬のこん身の演技が胸を打つヒューマンドラマの名作。

 

あらすじ

 市役所の市民課長・渡辺は長い間の役所勤めで、もう惰性で仕事をしているだけだった。ところが、ある日胃の調子が悪いため医者にかかると、医者からは「軽い胃潰瘍」で何もする必要は無いと言われ、そのことで逆に自分が手遅れの胃ガンで余命半年だと悟ってしまう。

 ショックを受けた渡辺は市役所を欠勤し、ふらふらと街をさまようが、自分でも何をどうして良いのかわからない。そして息子に病気のことを告げようとするが、息子は父親の金の事しか頭になく、渡辺の言葉を聞かずに一方的に口ぎたなくののしるだけだった。

 やがて渡辺は市役所の元部下の小田切に胃ガンのことを打ち明け、生きた証に何かを作ればいいとアドバイスされる。翌日渡辺は市役所に出勤し、役所内でたらいまわしになっている公園建設の仕事を進めるように指示を出す。

 五か月後。渡辺は死に、彼の通夜には助役以下が出席していた。そこに新聞記者たちが現れ、助役に公園を建設できたのは渡辺の尽力のせいではないかと質問するが、助役は笑い飛ばす。そして助役や課長たちは、自分こそが公園建設の功労者で、渡辺など何もしなかったと口々にバカにする。

 しかし渡辺の部下がそれを否定し、涙ながらに渡辺こそ真の功労者だと言い、渡辺の働きぶりを思い出させる。やがて課長たちも、渡辺は病気や余命のことを知っていて、そのためにあの働きぶりだったのではないかと思い始める。そして自分たちも渡辺の様に一生懸命働こうと言いあう。

 しかしその後、新しい市民課長は相変わらず仕事をたらいまわしにしているだけだった。おしまい。


感想

【※以下、相当辛辣な感想ですので、当作品が好きな方はご注意ください】

 評価は×。

 ヒューマンドラマだと聞いていたので、難病物としてさぞ泣けるのかと期待していたら、もうこれが腹が立って腹が立って仕方ない映画でした。世界の黒澤の映画でなかったら絶対最後まで見なかった。「世界の黒澤の作品の勉強」のために我慢して最後まで粘りましたが、シナリオへの怒りで血管が切れそうでしたよ。


 内容は大体こんな感じでして。

1~30分
 渡辺が医者から胃潰瘍を宣告されてガンだと悟り絶望。しかし息子は父親の退職金の事しか頭になく「退職金ガー、退職金デー、退職金ヲー」とそればかり。さらにその嫁は、義父を害虫の如く忌み嫌い、それを隠そうともしない悪女。そしてそういう描写が延々続く鬱展開。


31~60分
 渡辺、たまたま知り合った作家に連れられて夜の街を延々とさまよう。退屈の一言。


61~90分
 渡辺、元部下の小田切と共に街をさまよう。渡辺息子は父親に向かい、若い女に財産をやる気かと父親を口汚くののしり、金への執着をいかんなく発揮。怒りのメーターがクライマックスに到達。


91~120分
 いきなり渡辺の通夜。市役所の助役たちはほぼ全員で、「公園を作ったのは俺たちであって、渡辺は何もしていなかった」と口汚く罵倒三昧。渡辺息子は息子で「父は自分が胃ガンだとは知らなかったでしょう。だって知っていたら息子の私に話してくれていたはずですからね」(ドヤ顔)。見ていて怒りで画面をけり倒してやりたくなるくらい腹が立った時間帯。


121~143分
 市役所の面々が「やはり渡辺はガンであることや死期を悟っていたのでは」と思い直し、これからは渡辺の様に頑張って働こう、と盛り上がるが、すぐにそれを忘れるという、トホホにも程が有る〆。


 いやー、参った参った。二時間半ひたすら耐えただけだったわ。私は今までは「黒澤映画って噂程面白くないなぁ」とか思っていましたが、この映画に比べたら何だって相対的には面白いと解りました。今後はそういう視点で黒澤映画を見ていくことにします。
 
 

年越し映画マラソン 生きる
BSプレミアム12月31日(日)午後1時02分~3時26分


【製作】
本木荘二郎
【監督・脚本】
黒澤明
【脚本】
橋本忍小国英雄
【撮影】
中井朝一
【音楽】
早坂文雄
【出演】
志村喬日守新一田中春男千秋実小田切みき、左ト全 ほか


製作国:
日本
製作年:
1952
備考:
白黒/スタンダード・サイズ

 

2018年視聴映画のあらすじ・感想の一覧は以下のページでどうぞ

2018年視聴映画あらすじ・感想一覧

perry-r.hatenablog.com
 

感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第141話(シーズン6 第14話)「秘密の島」

スパイ大作戦 シーズン6<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第141話 秘密の島 The Connection (シーズン6 第14話)

 

あらすじ

薬物密輸業者が、アフリカ沖の島にヘロイン精製所の設立を企てている。アメリカにニセの工場を造り、アフリカだと騙して男らを連れていき、原料の入手経路と買い手を突き止める作戦を立てるが…。

※DVD版のタイトルは「殺しのジェット空輸」。
 
 
【今回の指令】
 リース・ドーラン(Reece Dolan)は、最近東海岸一帯でのヘロイン供給者として頭角を現してきた。ドーランは、この度アフリカ北西部海岸の小島にヘロイン精製の拠点を作ろうと企んでいる。IMFは、ドーランのアヘンの入手先およびヘロインの売却先を突き止め、関係者を有罪にできる証拠を入手しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:無名キャラ数名


【作戦の舞台】
 アメリカ国内・ジョージア州/イタリア・ローマ


【作戦】
 冒頭。麻薬販売業者のクレッグのところにドーランが現れ、前任者は不幸な事故で死んだので、今後は自分が仕事を引き受けるという。そしてヘロインを今までの6割の価格で提供するので、準備金として100万ドル用立ててほしいと要求する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 ドーランは、アフリカ北西部にある「マロー島」に住むマダムと契約し、マダムの屋敷でヘロインを精製する計画を立てていた。IMFはマロー島と気候などがそっくりな、アメリカ・ジョージア州の小島に飛行場や屋敷を準備し、ケイシーがマダム役を担当することになった。

 ドーランと部下二人は、マロー島に行くため、まずイタリア・ローマ空港にやってくるが、その後をクレッグの部下が密かに尾行していた。IMFはドーランたちをビジネスジェット機に乗せると、麻酔ガスで眠らせ腕時計を細工してから、大西洋を横断しジョージア州まで運ぶが、その機にはドーランの部下も忍び込んでいた。

 ドーランはトルコ・イスタンブールにいる業者に連絡し、アヘンをローマまで送るように指示するが、運び屋は待ち構えていたIMFと警察に逮捕される。IMFはアヘンをドーランに渡し、ドーランたちはアヘンを元にヘロインの精製を開始する。そしてドーランは完成したヘロインの第一陣を部下に持たせてアメリカのクレッグに向けて発送するが、この部下も警察に捕まってしまう。

 アメリカのクレッグは、部下からの連絡が途絶え、ドーランからのヘロインが届かない上に、さらにトルコの業者からはドーランがアヘンの代金を払っていないと知らされる。直後ウィリーがヘロインの売人役でクレッグを訪問するが、すぐに怪しまれて尋問され、自分はマダムの手下で、アメリカ人と一緒にヘロインを作っていると白状する。それを聞いたクレッグは、ドーランが自分たちを裏切ったと信じ込み、マロー島に行くことを決める。そして彼らもIMFによってジョージア州の島に連れてこられる。

 クレッグはマダムの屋敷でドーランと対面して裏切りを非難し、ドーランはこれは罠だと主張するが、マダム(ケイシー)がもう裏切りがばれてしまったなどと口にして、ドーランを陥れる。同じころ、島に忍び込んでいたクレッグの部下は、ここがジョージア州だと気が付き、フェルプスに銃を突きつけるが格闘の末に自分を撃って死ぬ。死体を見たクレッグは、ますますドーランを信用しなくなる。

 二人が対峙しているところにアメリカのパトカーのサイレンが聞こえ、ドーランやクレッグたちは警察に逮捕される。最後にIMFチームがジェット機で飛び去って行くシーンで〆。


監督: バリー・クレーン
原案: エドワード・ラクソ
脚本: エドワード・ラクソ&ケン・ペットス


感想

 評価は○。

 今回の話は、犯罪者たちを騙して、実際に自分たちがいるのとは全く別の場所にいると思わせる、というトリックのエピソード。まあ今回はこのシチュエーション自体はそんなに面白いわけでもなかったが、最終的にはそこそこには楽しめたエピソードではあった。

 今回はiMFは、麻薬精製業者のドーラン一味にアフリカ沖の小島に移動したと思わせておいて、実際は大西洋をはるばる飛行してアメリカ・ジョージア州の島にまで運んでしまう。そしてばれないように、道路の標識を現地の地名に差し替えたり、車のナンバープレートを取り換える、という工作を行う。

 まあ、見ている側にとっては、ドーランたちが本来のアフリカ沖の島にいようが、はたまたジョージア州の島にいようが、実のところあまり変わりがないので、このだましの状況自体はあまり面白みが無かった、というのが正直なところではある。しかしまあ、何かするたびに一々ジェット機で大西洋を行ったり来たりしている、という作戦のスケールには多少楽しませてはもらった。

 今回ケイシーは、赤毛のかつらをかぶってフランス人犯罪者のマダムに変装する。もっともドーラン一味はマダムの本当の顔を知らないので、ケイシーはいつもの金髪で対面しても何の不都合もなかったわけで、この変装の意味がイマイチ解らないところではある。

 過去のスパイ大作戦で勉強させてもらったおかげで、アヘンを原料にヘロインを作る、という事は知っていたが、本当にあんな巨大なガラス瓶やぐるぐる螺旋を描いたパイプを使ってヘロインを作っているのだろうか。実態を知らないだけに、そのあたりが物凄く気になってしまった。

 さて、クレッグの部下フィンチはドーランを尾行し、ビジネスジェット機の床下(?)に忍び込んで、結果的に大西洋を横断する。そして島についた後も平気で飛行機から抜け出してきたが、ジェット機は高空を飛行するのだから、普通に考えて、フィンチは島につくまでに酸欠と寒さで死んでしまっていることは確実である。まあフィクションにそこまで突っ込むのも野暮かもしれないが、車のトランクに忍び込むのと同じノリで演出されていたので、どうも気になって仕方なかった。

 とまあ、このように色々あったものの、IMFが最後までばれずに芝居をやりとおし、犯罪者たちを騙しきったあと、涼しい顔で任地から立ち去る、といういつものバターンを完璧に実施していたので、見終えた後の満足感はまずまずだった。


 今回のサブタイトルの原題「The Connection」とは「連結、接続」といった意味で、今回のエピソードの何を現しているのかよく解らない。もしかすると交換台の女性が電話線のピンを差し込んで電話をつなぐあのシーンを意味しているのかもしれない。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプス陸上競技施設の観客席の上にある部屋に入り、レコードプレイヤーに置いてあるレコードを再生して指令を聞きつつ、そばの写真を確認する。指令は最後に「なお、このレコードは自動的に消滅する」と言い、レコードから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。写真は、東海岸一帯のヘロイン供給者として最近頭角を現してきたリース・ドーランである。ドーランは今、アフリカ北西部海岸に位置するある島で、ヘロイン精製および販売の効果的な方式を打ち立てんものと画策している。

 そこで君の使命だが、ドーランのアヘン入手の経路と、アメリカにおけるバイヤーを突き止め、ドーランの計画を阻止し、関係者を有罪にしうる証拠を手中に収めることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このレコードは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
 

感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第136話(シーズン6 第9話)「敗戦国アメリカ」

スパイ大作戦 シーズン6<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第136話 敗戦国アメリカ Invasion (シーズン6 第9話)

 

あらすじ

地震で遠距離レーダーが打撃を受け、核ミサイル攻撃に対して無防備になったアメリカ。国防省顧問が盗んだ極秘データが敵の手に渡れば国家的な危機に陥ってしまう。チームは巧妙な作戦で顧問を操り、アメリカの窮地を救う。

※DVD版のタイトルは「時間差で口を割れ」。
 
 
【今回の指令】
 現在アメリカは、先日の地震によって国防のための遠距離レーダー網が大損害を受けており、敵の核ミサイル攻撃に対して無防備同然の状態である。そして数時間前、国防相付き顧問のウイットモア・チャニング(Whitmore Channing)は、空軍高官を殺害してレーダー網の機能停止についての情報を盗み某所に隠した。その情報は明日五時敵国スパイが入手する予定だが、隠し場所は不明である。IMFはこの情報が敵の手に渡ることを阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:兵士役多数


【作戦の舞台】
 アメリカ国内・ロサンゼルス


【作戦】
 冒頭。チャニングがフランスにいるスパイ「ノバック」に重要情報を手に入れたと連絡し、ノバックがすぐ回収に行くと答える。しかしノバックは部下にチャニングはもう用済みだという。またチャニングはアメリカ側のスパイに尾行されていた。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFはチャニングの部屋の電気器具に細工して感電するようにしむけ、しびれたところにさらに麻酔を打ちこんで失神させる。そのあと、チャニングの腕時計のカレンダーの日付を進めて二日後の木曜日に変更し、また部屋のテレビとラジオに細工する。

 チャニングはすぐに目覚めるが、時計のカレンダーを見て感電して二日間失神していたと思い込み、さらにテレビやラジオをつけるとIMFが準備していた「アメリカがヨーロッパ人民共和国との戦争に敗れて降伏した」という偽ニュースが流れる。直後、IMFはチャニングの部屋を訪問し、チャニングを占領軍の司令部という設定の建物に連行する。

 一方、ノバックの部下はチャニングを射殺しようとしていたが、チャニングが謎の男たちに連行されるのを見て尾行する。

 「司令部」で、フェルプスは占領軍の大佐のふりをしており、アメリカの軍関係者を次々と裁判にかけ、すぐに死刑宣告し部下に銃殺させていく(という芝居をする)。そしてチャニングにも死刑を宣告するが、チャニングは自分は共和国の協力者で、自分のもたらした情報があったから共和国は戦争に勝てたのだと主張する。フェルプスは情報の隠し場所を言う様に命じるが、チャニングは具体的な場所までは明かせないと拒む。

 フェルプスはチャニングを小部屋に監禁すると、メンバーや協力者たちを隠れさせる。チャニングは様子がおかしいと感じて部屋を脱出し、誰もいないので、自分が騙されていたと悟る。そして電話で航空会社に連絡し、午後五時にやってくる「テオ・シックス」あてにメッセージを伝えようとするが、その最中に暗殺者に撃たれ、IMFは暗殺者を殺す。

 IMFは空港で「テオ・シックス」を呼び出して、やって来た相手二人の顔を確認した後、間違いだったといって追い返す。そして二人組の後を尾行し、空き倉庫の隠し場所から情報フィルムを持って出てきたところを捕まえ、フィルムを焼き捨てる。


監督: レスリー・H・マーティンソン
脚本: ジェームズ・ヘンダーソン&サム・ローカ


感想

 評価は○。

 今回の話は、IMFが「アメリカが敵国との戦争に負けて占領されてしまった」というとんでもないシチュエーションをでっちあげるという、スパイ大作戦らしい大げさなエピソードだった。ということで、途中までは面白かったのだが、クライマックスの展開がイマイチで、今一つ痛快感に欠ける惜しい回だった。

 スパイ大作戦では、IMFメンバーが芝居をしかける相手を失神させたあと、周囲から孤立した環境に放り込み、真面目な顔をして芝居をして突拍子もないシチュエーションを信じ込ませて、最終的に本人しか知らない秘密を吐かせる、という作戦が良く実施されてきた。

 過去には「失神している間に核戦争が勃発していて地下シェルターに押し込められていた」とか「いつの間にか死刑を宣告されていて、もう処刑の一時間前になっていた」といった設定で相手を追い込むエピソードが存在したが、今回は「アメリカが東側国家との戦争に敗北し、既に敵の兵士が都市を占領していた」という、今までに負けず劣らずの突拍子もない状況設定が展開され、見ていて思わずニヤリとしてしまった。

 チャニングを騙すため、自宅のテレビやラジオを細工をして、チャニングがテレビやラジオをつけると、アメリカの敗戦を知らせるニュースが流れてくるシーンは捧腹絶倒物の面白さだったし、またチャニングを外が見えない車に押し込んだ後、戦車のキャタピラ音や占領軍の告知をスピーカーで車内に向けて放送し、チャニングを徹底的にだましていく展開は見ているだけでワクワクさせられた。

 また裁判所の控室でケイシーがチャニングに縋り付いて「赤ん坊がいるから死にたくない」と哀れっぽく訴え、また裁判で有罪にされると泣きながら連れていかれるシーンなど、真相が解っている視聴者視点で見ると、もう面白くて仕方なかった。

 しかし、この芝居を最後まで続ければ傑作になったかもしれないのに、途中でフェルプスはチャニングがまだ口を割らないと見るや、わざと芝居をしていることを相手に気が付かせて、チャニング自身がどこかに連絡するように持って行ってしまう。これはこれで作戦として成立してはいるのだが、せっかく面白いシチュエーションを構築したのに、中途半端なところで止めてしまったため、見ていて結構ガッカリさせられた。

 最後はIMFが上手く立ち回って、敵スパイを逮捕し、漏洩した機密情報も取り戻して処分に成功するのだが、「最後まで芝居をやり通し、相手が騙されたことに気が付かないままIMFはさっさと退散する」という展開の方が好みなので、今回のシナリオにはいささか不満が残るものとなってしまった。もう少し全盛期の頃の痛快さというものを楽しませてほしかったと思わずにはいられない。

 今回はIMFは久しぶりに東側国家「ヨーロッパ人民共和国」(European People's Republic)を相手にした作戦を行う。昔はIMFは毎回のように東側国家を相手に機密情報を盗んできたり、重要人物を亡命させたり、ニセ情報をつかませたり、と活躍していたが、第6シーズンに入ってからはシンジケートばかり相手にしていたので、今回のエピソードは妙に懐かしい気持ちにさせられてしまった。

 ところで、今回チャニングが部屋でヤカンに湯を沸かすとき、どう見ても電磁誘導調理器(IHクッキングヒーター)を使っているようにしか見えない。このエピソードの放送は1971年11月で、IH機器のようなハイテク製品がそんな昔から存在したのかと驚いたのだが、アメリカでIHが発売されたのも1971年とのことなので、どうやらチャニングは当時の最新調理器具を使っていた、ということらしい。さすが政府顧問である。

 今回のサブタイトルの原題「Invasion」とは「侵略」のこと。まあストレートなタイトルではある。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスがレストラン(?)で美女と乾杯していると、店員がフェルプスに電話が入っていると声をかけてくる。フェルプスが電話ボックスに入ると、ボックス内には大きめの封筒が置いてあり、フェルプスは封筒からオープンリール式テープレコーダーと写真を取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 こんばんは、フェルプス君。先日の地震によって遠距離レーダー網が深刻な打撃を被り、わが国は現在核ミサイル攻撃に対して無防備同然の危険にさらされている。一方、数時間前、国防相付き顧問ウイットモア・チャニングは、空軍の高官を殺害、地震の被害によって目下機能を停止しているレーダー網に関する極秘データーを盗み、それを明日午後5時、敵スパイの手に渡るよう某所に隠したが、その場所は不明である。

 そこで君の使命だが、この極秘データーが敵に渡ることを阻止することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
 

感想:アニメ「だがしかし2」第8話「ロールキャンディとハイエイトチョコと…」

だがしかし コンパクト・コレクション Blu-ray

TVアニメ『だがしかし2』公式ホームページ|TBSテレビ http://www.tbs.co.jp/anime/dagashi/
放送 BS-TBS。15分枠ショートアニメ。

【※以下ネタバレ】
 

第8話 ロールキャンディとハイエイトチョコと…

 

あらすじ

・1本目

 サヤは登校時にココノツの家に見知らぬ大人の女性がいるのを目撃し、一日中その事が気になって悶々としていた。そしてココノツが怪しい女にたぶらかされているのでは?と疑心暗鬼になり、下校するとすぐにココノツがいない間に店に乗りこみハジメと対面する。

 しかし話していると、ハジメが単なるバイトだと解り安堵して、ハジメと二人で「ココノツお勧め」だというロールキャンディの食べ方を色々と模索する。そのあとココノツが帰ってくるが、サヤはハジメが住み込みバイトだと知り、改めてココノツを締め上げるシーンで〆。


・2本目

 豆は最近ココノツ相手に「借金取り立て屋さんゴッコ」をするのがマイブーム。今日も借金取り風に店に乗りこむが、店番をしていたのはココノツではなくハジメだったため、それに気が付いて恥ずかしさでいたたまれなくなる。

 しかしハジメは本当に豆が借金取りだと信じ込んでしまい、真剣に対応する。それを見た豆もまた、ハジメが遊びに付き合ってくれたのだと勘違いしてしまい、ハジメに体で払えとか凄んでみせる。そして豆は、何か面白いことをしたら取り立てを待ってやってもいいと提案し、それを聞いたハジメはメガネ型のチョコ(ハイエイトチョコ)を取り出してメガネの代わりにするコントを披露する。それに大喜びした豆はハイエイトチョコを買い占めて上機嫌で帰っていった。

 最後。入れ違いでココノツが帰ってくるが、ハジメがココノツに「この店は私が守ります」とか力強く宣言するシーンで〆。


脚本:森田真由美 絵コンテ:桑原智 演出:又野弘道 作画監督斉藤圭


感想

 15分枠なのに二話入り。やろうと思えばできるんですね、というか水増しが無くて週刊連載の雰囲気がそのまま出ているので、なかなかよろしいかと。
 
 
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だがしかし(7) (少年サンデーコミックス)
 
 

感想:アニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」第9話「さくらのドキドキ水族館」

カードキャプターさくら クリアカード編(1) (KCデラックス なかよし)

カードキャプターさくら公式サイト http://ccsakura-official.com/
NHK アニメワールド|カードキャプターさくら クリアカード編 http://www.nhk.or.jp/anime/ccsakura/
放送 NHK BSプレミアム。7:30~8:00。全22話。

【※以下ネタバレ】
 

第9話 さくらのドキドキ水族館 (2018年3月4日(日)放送)

 

あらすじ

 休日。さくらは父親から水族館のチケットをもらったため、小狼を誘って二人で水族館デートに出かける。この水族館は、かつてクロウカード集めをしていた際、カード「ウォーティ」を回収した場所だった。

 二人は仲良く水族館巡りを楽しむが、館内のカフェでバイトしていた桃矢とばったり出会ってしまい、微妙な空気に……、その直後、水槽の中に何かが現れ水槽のガラスを破壊したために、水があふれだし大騒ぎになる。さくらはこの騒ぎにも謎のカードが関わっていると確信する。

 夜。さくら、知世、小狼の三人は水族館に忍び込むと、水の中からカードが襲い掛かってきた。さくらと小狼は力を合わせてカードを封印する。カードの正体は「螺旋/SPIRAL」だった。
 
 

感想

 んんん、今回のエピソードはクロウカード編の「ウォーティ」の回のまんまリメイクになってないですか(笑)

 しかしまあ、それともかく、さくらと小狼のくすぐったいお子様テートが延々堪能できたし、バトルシーンも派手で楽しめたので、評価としてはまずまずですね。
 
 

おまけ:クリアカード一覧

第1話 ゲール 疾風/GALE
第2話 シージ 包囲/SIEGE
第3話 アクア 水源/AQUA、
同上 リフレクト 反射/REFLECT
第4話 アクション 行動/ACTION
第5話 グラビテーション 引力/GRAVITATION
第6話 レコード 記録/RECORD
第7話 フライト 飛翔/FLIGHT
第8話 ルシッド 透過/LICID
第9話 スパイラル 螺旋/SPIRAL

 
 
カードキャプターさくら クリアカード編(2) (KCデラックス なかよし)
早見沙織/Jewelry(「カードキャプターさくら クリアカード編」EDテーマ) <通常盤>
カードキャプターさくら クリアカード編 クリアファイル 桜&小狼
 
 

【経済】感想:NHK番組「シリーズ 欲望の経済史~日本戦後編~」第3回「繁栄の光と影が交錯する 70s」

欲望の資本主義

シリーズ 欲望の経済史~ルールが変わる時~ http://www4.nhk.or.jp/P4384/
放送 NHK Eテレ。22:30~23:00。全6回。

【※以下ネタバレ】
 

第3回 繁栄の光と影が交錯する70s (2018年3月2日(金)放送)

 

あらすじ

3月2日金曜
NHKEテレ1 午後10時30分~ 午後11時00分
シリーズ 欲望の経済史~日本戦後編~ 第3回「繁栄の光と影が交錯する70s」


よど号ハイジャック事件大阪万博、作家三島由紀夫の自決など、さまざまな光と影が交錯する出来事が連続した年から始まった1970年代。「豊かさ」一途に走っていた日本の戦後だが、第4次中東戦争によるオイルショックなどで戦後初の「マイナス成長」を経験する。また公害問題も大きな社会問題に。そんな時代に日本の経済のひとつの方向性を決したのは、あの田中角栄だった。高度成長の矛盾が噴き出した時代を、再考する。


【ゲスト】早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問…野口悠紀雄,慶應義塾大学 教授…坂井豊貴,【語り】首藤奈知子,【朗読】園部啓一

 経済の専門家の野口悠紀雄・坂井豊貴両氏の対談の形で、戦後経済を分析していく番組。


 1972年田中角栄が首相になる。日本改造論。地方は大歓迎したが、地価の高騰を招いた。


 1973年代四次中東戦争勃発でオイルショック発生。脂が値上がりしたことで、トイレットペーパー他の買い占め騒ぎが起こり、漫画雑誌はページ数を減らして薄くなった。1974年には戦後初のマイナス成長となり、高度経済成長は終わりを告げた。

 もっともその後日本が不景気に陥ったという訳でもなかった。その頃「スーパーカーブーム」という高級車ブームが起きるなどした。それは、日本の労働組合が欧米と違い「企業別」だったから。つまり経営者と労働者が「同じ船に乗っている」状態なので、労働者側がめちゃくちゃな要求をしなかったから。ちなみに欧米の労働組合は「職種別」で、異なる企業の労働者が職種別に団結するタイプ。日本とは全く違う。


 1971年に映画「ゴジラ対へドラ」が公開される。怪獣映画のテーマになるほど、日本の公害は社会問題化していた。ヘドロ、光化学スモッグ、喘息etc。


 しかし1970年代後半日本の経済は復調した。それはエネルギーを大量に消費する鉄鋼他の産業から、省エネ産業、つまり電機などのハイテク製品、省エネ自動車などの産業が主役となり、それらを海外に輸出することで達成された。日本は輸出が好調で「安定成長期」となり、国民はみんな中流意識を持つようになった。


 1978年インベーダーゲーム登場。
 
 

感想

 だんだん実感のある時代に近づいてきました。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「シリーズ 欲望の経済史~日本戦後編~」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
戦後日本経済史 (新潮選書)
 
 

【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第9回「地球外生命体(エイリアン)も進化する?」

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第9回 地球外生命体(エイリアン)も進化する? (2018年3月2日(金)放送)

 

内容

3月2日金曜
NHKEテレ1 午後10時00分~ 午後10時30分
ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 9▽地球外生命体(エイリアン)も進化する?


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送。


ダイアモンド博士の講義9回目は、地球から宇宙の話に飛び出す。地球の外にも、私たちと同じように進化と発展を遂げた生物がいるかもしれない。そんな地球外生命体=エイリアンについて、みんなで議論する。エイリアンについて自由に考えることで、このシリーズで学んできた動物からヒトへの進化を見つめ直す。今回の講義の場所は、宇宙への好奇心を刺激し続けてきたウィルソン山天文台


【出演】進化生物学者…ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
●地球外生命体は存在するか?

 空飛ぶ円盤は既に地球に来ているか? とりあえず博士はまだ来ていないと考えている。その上で地球外に知的生命体が存在するかどうかを考えてみる。

 生命が存在するには、惑星が
・ガスではなく岩など固いもので出来ている
・水が液体でいられる適度な温度
放射線被爆しない
といった条件を満たす必要がある。このような惑星を「ハビタブルプラネット」と呼ぶ。

 有名な「ユーリー・ミラーの実験」は、ガラス容器の中にメタン・水素・アンモニアを入れ、水蒸気を発生させながら放電させてみた。これは地球の原初の状態を再現したもの。すると一週間ほどでアミノ酸が発生した。つまり必要な条件が揃えば生命の要素が揃うことが示された。



●何故地球外生命体と接触できないのか?

 何故人類は今まで地球外生命体と出会っていないのか? 博士の考えでは

・地球が遠すぎる。遠すぎてたどり着けない
・地球以外にもたくさんの星が有る。真っ先に地球に来てくれるとは限らない

 そして最大の理由が「高度な文明は長続きしない」。生命が生まれてから35億年、人類が初めてラジオ信号を発信したのは1901年だが、博士は2050年までに人類は核戦争などで滅びる可能性が高いと考えている。とすると、人類が地球外生命体と接触できるチャンスは1901年~2050年の149年間しかない。

 他の星の文明も同様に149年間で滅びてしまうとすれば、人類が地球外生命体と接触できないのも致し方ないのではないか。



●地球外生命体が地球に来たら何が起きるか?

 博士はもし地球外生命体が地球にやって来たとしたら、平和的な接触はあり得ないと考えている。何故なら、地球には人類以外にもクジラやチンパンジーやオウムなど知的な生物がいるが、人類が彼らに何をしているかを考えれば推測できる。人類は、他の知的生物のクジラたちを殺して肉にしたり、チンパンジーを動物実験の材料にしている。エイリアンだって人類に同じことをするだろう。

感想

 今回は、突然SFチックな話題になりましたが、「人類がクジラをぶっ殺している以上、エイリアンだって地球人に同じことをするだろうよ」という主張には一理ある気も致します。「人類皆殺し」という有名なSF小説が脳裏をよぎりましたな。
 
 

人類皆殺し (ハヤカワ文庫)

人類皆殺し (ハヤカワ文庫)

 
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)