感想「極東細菌テロを爆砕せよ(上/下)」


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文庫:
出版社: 新潮社 (2006/11)
サイズ (cm): 15 x 11

 クライブ・カッスラーの海洋アクション物「ダーク・ピット・シリーズ」の18作目です。前巻「オデッセイの脅威を暴け」から1年半ぶりの新作ですが、外伝「オケアノスの野望を砕け」が今年6月に出ているので、あまり間が空いた気がしません。


■粗筋

 1944年、日本海軍の伊号潜水艦がある秘密兵器を搭載し、アメリカ西海岸へと攻撃を行うため出港したが、米軍駆逐艦の攻撃を受け撃沈された。

 2007年、アリューシャン列島の小島に滞在していた研究者たちが未知の毒物で危険な状態に陥る。同じ頃、日本ではJRA(日本赤軍)を自称する勢力が様々なテロを開始していた・・・


■感想

 色々な意味でシリーズの転回点になる作品だと思います。

 第一が書き手が、カッスラーだけではなく、息子のダークも参加したこと。同様の共著体制は外伝シリーズ「NUMAファイルシリーズ」でも行われていますが、外伝と違ってこちらは今までのシリーズのノリが全く変わっていません。大成功です。


 次に、主役が二人のダーク・ピット、即ち、親父ピットと息子ピット・ジュニアになったことです(あれですね、「ガンダムSEED DESTINY」を思い出しますね、どっちがメインだかよくわからん、というところが)。

 今までの作品でお馴染みの「悪党の工作員たちとカーチェイスを繰り広げる」とか「捕まってエライ目にあわされる」とか、派手な部分は若い方の息子ピットが担当するようになりましたが、親父ピットも長官として椅子に座っているのではなく、年齢相応の活躍をしてくれます。でも親父ピットとジョルディーノの漫才掛け合いが減ったのは寂しいなぁ。

 お話はかなりみっちり書き込まれており、最後の最後まで手に汗握る、という展開です。シリーズ全盛期(「ラドラダの秘宝を探せ」の頃)のノリと比較するとどうかとは思いますが、最近のボルテージの低い作品群と比較すると、かなり「生き返った」感じがします。これは今後もかなり期待できそうですね。

 ちなみに今回の敵は北朝鮮。さすがに(かつてカストロをメインキャラとして出したこのシリーズですが)北の首脳陣を名指しでメインキャラで描いたりはしませんが、隣国の情勢を知っているだけになんとなくリアルさも感じます。

 という事で再生したダーク・ピットシリーズ。いつも楽しみにしている「古代のうんちく」が無いことを除けば、大変満足いく仕上がりでした。

 評価は五段階評価で「☆☆☆☆☆」、満点です。