感想:ゲームブック「闇に彷徨い続けるもの」(友野詳)(「闇のトラペゾヘドロン」収録)(2014年8月発売)【クリア済】


 ゲームブック「闇に彷徨い続けるもの」(友野詳)の感想です。

 クリアしての感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4798830186
闇のトラペゾヘドロン (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ) 単行本(ソフトカバー) 2014/8/27
倉阪鬼一郎 (著), 積木鏡介 (著), 友野詳 (著), 小島文美 (イラスト)
単行本(ソフトカバー): 380ページ
出版社: 創土社 (2014/8/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4798830186
ISBN-13: 978-4798830186
発売日: 2014/8/27

●『闇のトラペゾヘドロン』 倉阪鬼一郎積木鏡介友野詳
http://www.soudosha.jp/Cthulhu/yamino.html

>《闇に彷徨い続けるもの・友野詳
>ある日、世界は破滅した。「きみ」(プレイヤー)は、これまでの肉体と切り離され、精神を奇怪な結晶体に封じられた。きみが宿る〈輝くトラペゾヘドロン〉は、時の彼方へ飛ばされる。自力では移動もままならず、会話もできないきみにできるのは、周囲の知性体にビジョンを見せて誘導することだけだ。きみは、数億年の年月を旅する。なすべきことを推理し、単語を組み合わせ、進むべき道を見つけ出すのだ。人に戻るか、それとも人ではない何かになるか……。 

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■データ(個人的補足)

 創土社クトゥルフ神話アンソロジーシリーズ「クトゥルー・ミュトス・ファイルズ」の一作「闇のトラペゾヘドロン」に収録されている作品。作者はグループSNEのメンバーで、TRPGとかその手の仕事で有名な方です。


■あらすじ

 21世紀に暮らす「きみ」の世界はある日いきなり破滅した。「きみ」の精神は、死を覚悟した瞬間、謎の物体『輝くトラペゾヘドロン』に吸い込まれた。『輝くトラペゾヘドロン』は、時空を超え、ありとあらゆる知識にアクセスすることが出来るが、自らの意思では移動も会話もまならない。「きみ」を待ち受けている運命とは……


■内容紹介/感想

 パラグラフ数はおよそ60くらい。ゲームブック特有の「パラメーター」「サイコロ振り」「アイテム所有」といった概念は無く、また一パラグラフ(この本は「段落」と呼んでいます)は2〜4ページもあるため、ゲームブックというより「分岐小説」という表現の方がしっくりきます。


 ゲームシステムは、一般的ゲームブックとは異なる、グループSNEが新開発(?)したシステムが採用されています。簡単にいうと、従来のゲームブックはこんな感じでしたが、

次はどうする?
 銃を使うなら、45番へ
 ナイフを使うなら、89番へ


 本作品のシステムは、例えば

バラグラフ1
ダンジョンの中で敵が迫ってきた。呼びかける相手の数字を10の位、させる行動を1の位、として、その番号に進め
1:戦士
2:食事
3:休息
4:村長の娘
5:攻撃
6:酒場の主人

 ここで「戦士に攻撃を命じる」ならば「15番」に進むわけです。もしこの選択が正しいならば、飛び先の「パラグラフ15」の冒頭には「パラグラフ1から来た人は正解」と書かれています。間違っていれば、飛び先のパラグラフは意味が通じませんので、やり直しとなります。

 この数字組み合わせシステムは、過去にグループSNEメンバーが書いたゲームブック『魔女館からの脱出 キャット&チョコレート』で体験済みですが(http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20120917/p4)、当時めっちゃ酷評した記憶があります。ストーリーを楽しみたいのに、本筋とは違う数字の組み合わせ探しに時間を取られてめちゃめちゃイラつきましたからね。しかし本作ではその点について改善が見られ、数字の組み合わせを総当りで試す場面は減り、(上記例のように)一目で組み合わせの見当がつくようになっています。ただ、やはり迷う場面も数箇所あり、パラグラフを頭からしらみつぶしに調べる事も有りました。やはりこのシステムは、あまり良いアイデアとは言いがたいですね。


 ストーリーの方は、ズバリ「多数のクトゥルフ神話エピソードの詰め合わせ」です。主人公は不死存在なので、時間も空間も越えた活動が可能で、「輝くトラペゾヘドロン」が様々な場所・時代で多種多様な存在に出会い、利用されたり逆に相手を利用したり、というストーリーが展開されます。一パラグラフ移動するだけで「あれから●千年も経った」云々とかさらっと記述されることもしばしばで、数個の選択毎に舞台が激しく入れ替わるので、結果としてこの作品をプレイすればクトゥルフ神話世界の端から端まで飛びまわることとなります。あと、オマージュと言うかの要素も有り、グループSNEの作品や某巨匠の作品のキャラが登場したり、あるいは有名な特撮作品についてのネタなどが盛り込まれていたりします(後者についてはどうかと思いましたけど……)


 さて、評価ですが、ゲームシステムの「SNE流数字組み合わせシステム」はあまり好感は持てませんでしたが、プレイ困難と言うほどでもなかったので、まあ良し。お話は「いかにもクトゥルフっぽい血も凍る恐怖話」などでは全然無く、『クトゥルフ神話世界観光案内』でしたが、まあこれはこれでそれなりに面白かったし。という事で、絶賛するほどではないにしても、まあ悪くは無かったよ、という感想で締めたいと思います。



■その他
・プレイ時間:約2時間15分
・難易度:5段階評価(5が最高)で2
・面白さ:5段階評価(5が最高)で3

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