【ゲームブック】感想:ゲームブック「ゲームブック クトゥルフのいざない」(杉本=ヨハネ/2019年)【クリア】

ゲームブック クトゥルフのいざない クトゥルフ・オリジン (FT書房)

http://www.amazon.co.jp/dp/B09YH2SP1M
ゲームブック クトゥルフのいざない クトゥルフ・オリジン (FT書房) Kindle
杉本=ヨハネ (著), 中山将平 (イラスト) 形式: Kindle

★★【以下ネタバレ】★★
 

あの永遠の暗黒神話を、君は体験する。

 
 

概要

 ホラー物。クトゥルフ神話テーマの中編ゲームブック2作入り。それぞれラヴクラフトの小説「クトゥルフの呼び声」「インスマスの影」をベースにゲームブック化したもの。


ゲームシステムなど

 どちらの作品もサイコロ振りは無し。ただし主人公の簡単なステータス・持ち物・フラグの管理等の要素がありメモは必要。


収録作品

1 クトゥルフのいざない パラグラフ数164

 1907年。アメリカ・ニューオリンズの警察に勤務する警視正ルグラースは、邪教を信奉する集団についての通報を受け、部下と共に沼地の奥に向かった。そこでルグラースたちが見たものは、邪神クトゥルフを信奉するクトゥルフ教団の恐るべき儀式だった……


2 インスマスの影 パラグラフ数182

 1927年。成人祝いに旅行をしていた「君」は、インスマスという小さな町に立ち寄ることになった。周囲の町の人間からは忌避され、住民が奇怪な宗教を信奉しているというインスマスで君が見たものとは……


各作品の感想

1 クトゥルフのいざない パラグラフ数164

 評価は○(世界を股にかける大冒険)

 超有名な「クトゥルフの呼び声」をベースにした作品。なかなかの面白さでした。

 本作は原作を三部構成に作り替え、三人の主人公がバトンタッチするような形でストーリーを繋いでいく、という流れになっています。

 第一部・第二部は、それぞれの主人公が地道な調査でクトゥルフ教団の秘密に迫っていきますが、第三部では一気に舞台が広がり、世界を股にかけての調査の末にクライマックスに突入! という派手な展開となっており、各地での冒険が手に汗握る面白さでした。

 色々フラグ立てが有りますが、管理が面倒という程でも無く、ちょっとしたメモを取っておくだけであとはストーリーにのめり込むことが出来ました。

 本作は活劇要素が強めになっていて原作小説とは随分違ったノリになっていますが、これはこれで楽しめる内容になっていたので全く問題無し! でしたね。



2 インスマスの影 パラグラフ数182

 評価は◎(超面白かった)

 周辺住民から忌み嫌われているインスマスの町に立ち寄った主人公は、ここで恐るべき体験をすることに……

 恐怖の結末も含めてあまりにも有名な作品ですが、こちらも原作をベースにゲームブックとして上手く作り替えており、原作を知っていても十二分に楽しめました。

 インスマスの町に到着した後、色々な場所に移動することが出来るため原作にはない様々な展開が楽しめますし、また後半に町から脱出する際も脱出ルートで色々なバリエーションがあり、そしてどのルートを通っても緊迫感と疾走感の組み合わせが実に見事で、この先どうなるのか? と時間を忘れて読みふけってしまいました。

 また結末はマルチエンドとなっていて、原作ままの超有名なあのラストもあれば、全く雰囲気の異なる物も用意されており、どういったオチになるのかバリエーションを調べるのが楽しくて仕方ありませんでした。

 こちらは原作を元に内容を一段上のレベルに昇華させてあり、もう「傑作」と言って間違いありませんね。


全体の感想

 評価は◎(面白い!)

 両作品とも原作の雰囲気や展開はきちんと押さえつつも、さらにそこにオリジナル要素をふんだんに盛り込んで話を膨らませており、原作既読であってもきっちり楽しめました。オリジナル展開部分の面白さも考えあわせると、これは「原作を超えた面白さ」と評価しても良いと思います。

 原作既読でも文句なく楽しめるので、クトゥルフ作品好きなら絶対読むべき一冊でしょう。
 
 
 

参考

FT書房のゲームブッククトゥルフのいざないのご紹介 | FT書房公式HP
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/kutwuruhunoizanai

クトゥルフのいざない)
時は20世紀前半。アメリカ南部の沼地で不気味な邪教徒どもが事件を起こす。彼らが持っていた奇妙な形の像。蛸に似た頭部、ウロコに覆われた身体。その禍々しい造形は、時を経て再び全く別の機会に現れる。その符合が表す一つの真実を、君は直視する勇気があるか?それが、君の世界観を永遠に変えてしまう深淵へのいざないであったとしても……。
 3章構成、3人の主人公。知識を受け継ぎ、恐るべき邪教徒の陰謀を追う。邪神の秘密を秘めたミクロネシアのポナペ島。グリーンランド。アラビア。君は世界を旅し、禁断の知識に触れることになるだろう、……もしそれを望むのであれば。


(インスマスの影)
ひょんなことから訪れた港町、インスマス。周囲の住人から忌み嫌われ、ダゴン密教団と呼ばれる邪教と生贄の儀式が噂される呪われた町。君はその中を探索し、この町の秘密を知ることになる。決して誰も知ってはいけない、認めがたいその秘密。住人たちの、魚のようにまばたきしない眼が、君をずっと見つめている。果たして無事にこの町を出ることは出来るのだろうか……。


【著者杉本=ヨハネの一言では終わらない解説】
クトゥルフのいざないは、冒険記録紙やサイコロを必要としない、気軽に遊べるゲームブックです。メモを取ったほうが遊びやすいかもしれませんが、必須ではありません。 この作品はH・P・ラブクラフトが書いた「クトゥルフの呼び声」「インスマスの影」をベースにしたゲームブックです。 原作に忠実なクリア・ルートと、そこから逸れたさいには別のクトゥルフ作品に迷い込む感覚が好評です。