【ゲームブック】感想:ゲームブック「クトゥルー短編集」(杉本=ヨハネ 他/2018年)【クリア】

ゲームブック クトゥルー短編集 異次元の抱擁 〜ゾルタクスゼイアンの卵〜 ゲームブッククトゥルー短編集

http://www.amazon.co.jp/dp/B09YWYK8N9
ゲームブック クトゥルー短編集 異次元の抱擁 ~ゾルタクスゼイアンの卵~ ゲームブッククトゥルー短編集 Kindle
杉本=ヨハネ (著), カワラベ (イラスト) 形式: Kindle

★★【以下ネタバレ】★★
 

踏み入ってはいけない。
分かってはいるが、目をそらすことが出来ない。

 
 

概要

 ホラー物。クトゥルークトゥルフ)神話テーマの短編ゲームブック6作入り。


ゲームシステムなど

 どの作品もサイコロ振りは無し。ただし主人公の簡単なステータス・持ち物・フラグの管理やパラグラフジャンプ等の要素がありメモは必要。


収録作品

1 異次元の抱擁~ゾルタクスゼイアンの卵~ 杉本=ヨハネ著 パラグラフ数32

 一年前から体調不良に苦しめられていた主人公は衝動的に飛び降り自殺を図るが一命をとりとめる。そして、このことをきっかけに美人女医・吉澤アイコに出合うが……



2 ノイズマン ロアスペイダー著 パラグラフ数46

 二ヵ月前、姉はひき逃げされて亡くなり、しかも事件の捜査は何者かに圧力をかけられ遅々として進んでいなかった。刑事の姉の婚約者は単身捜査を続けていたが、やがて行方不明となってしまい……



3 クトゥルフ新話 山田賢治著 パラグラフ数71

 君のもとに突然「新訳ネクロノミコン断章」なる怪しげなメールが送られてきた。君はメールの不可思議な魅力に抗えずその内容を読んでしまうが……



4 NOISE 神崎マコト著 パラグラフ数35

 三流オカルト雑誌の新米ライターの君は、編集長の命令で奇病が蔓延しているという町に取材に赴いた。そしてまず病院を訪ねたが……



5 死者の彷徨(うろつ)く島 丹野佑著 パラグラフ数82

 君は破格の報酬の治験のアルバイトのため、ある島の研究施設へと向かった。しかしその島で待ち受けていたものは……



6 ゾンビ・ザ・ワールド 靴下ぬぎ夫、杉本=ヨハネ著 パラグラフ数22

 君は日本からフランスへやってきた留学生だ。陸上競技の成績が伸びないため、ドーピングで有名な研究者を訪ねると、足が超速くなる薬があるが、代金は3000万円もするという。しかし新薬の実験台になればタダになると知り……


各作品の感想

1 異次元の抱擁~ゾルタクスゼイアンの卵~ 杉本=ヨハネ著 パラグラフ数32

 評価は◎(これぞクトゥルフ物)

 複雑な分岐は無くほぼ一本道の展開で、下手に横道にそれるとゲームオーバーになる程度。ゲームブックというよりは「ゲームオーバーも有る小説」といった雰囲気でした。

 その代わりストーリーがもう『最高』で「これぞクトゥルフ物!」というドストレートなクトゥルフホラー作品。本のオープニングを飾るのにふさわしい一作でした。全6作品の中でも最高の評価です。



2 ノイズマン ロアスペイダー著

 評価は○(まずまず)

 姉はひき逃げで殺され、姉の婚約者も失踪、そしてその婚約者が残した怪しげなメモリーカードの中身を見たことで異常な世界に引きずり込まれ…… と怪奇風味の一作。分岐もそれなりにあり、選択次第で色々に展開するのでやり込み要素もまずまず。それなりに楽しめました。

 ただ……、これは怪奇モノかもしれませんが「クトゥルフ神話」モノでは無いですね……



3 クトゥルフ新話 山田賢治著

 評価は△(なんだこりゃ?)

 冒頭に「新訳ネクロノミコン断章」とか出してきて期待させてくれましたが、内容は失望の一言。1980年代初期の黎明期のパソコンアドベンチャーゲームをプレイしているのかと思わせる構成で、

「東西南北どちらに移動するか」→「北」
「北に移動すると宇宙人が現れた 留まるか逃げるか」→「留まる」
「留まっているとキミは宇宙人に殺された END」

 的な支離滅裂な内容が延々続いているだけ。まあ上手いルートを辿ればそれなりに意味のある結末にたどり着かなくもないですが、大半は上記のようなしようもない選択肢と結果ばかり。それでいてパラグラフ数が71と無駄にボリュームが有るので始末に負えませんでした。失望甚だしい一作。



4 NOISE 神崎マコト著

 評価は◎(めっちゃ面白い)

 オカルト雑誌ライターが怪しげな噂を取材するために現地に向かうと、本物のオカルト事件に巻き込まれてしまう……、という、これはこれでクトゥルフの王道的な一作。TRPGのシナリオにも出来そうな内容。

 適度なボリューム、パラグラフジャンプを組み込んだやりがいのある内容、そして終盤の疾走感、など、のめり込んでプレイできる一作でした。これは良かった。



5 死者の彷徨(うろつ)く島 丹野佑著

 評価は○(まあまあ)

 新薬の治験のアルバイトのためにとある島に向かった主人公。だが薬を打たれた人たちは次々とゾンビ化していき……

 王道ゾンビパニック物。いかにゾンビたちから逃れ島から脱出するか、というありがちな内容ながら、緊迫した展開には引き込まれました。マルチエンディングとなっており、例え島から脱出できてもそれまでにキチンとフラグを立てていないとロクな結末にならない、というのも良し。

 ただ、面白いゾンビ物ではありますが、これもクトゥルフ要素は殆ど無し。一応それらしい単語は出てきますが取ってつけた感強かったですしね。



6 ゾンビ・ザ・ワールド 靴下ぬぎ夫、杉本=ヨハネ

 評価は○(まあミニ作品だからねぇ)

 パラグラフ数22のミニ作品だけに、まともなストーリーは無く「こっちを選んだらこうなった、あっちを選んだらああなった」という、沢山有るオチを見つけていくことを楽しむだけの作品。オマケみたいなものと解釈しました。


全体の感想

 評価は○(なかなか)

 作品毎に面白さにばらつきがあり、プレイしていて楽しくて仕方ないものとプレイするのが苦痛になって来る作品が混じっていましたが、トータルで見れば十分満足できました。なかなかの当たりの一冊でしたね。
 
 
 

参考

FT書房のゲームブッククトゥルー短編集のご紹介 | FT書房公式HP
https://ftbooks.xyz/kikanjyoho/kutwurutanpenshu

ftbooks.xyz

(異次元の抱擁~ゾルタクスゼイアンの卵~ 杉本=ヨハネ著)
出会った美しい女医。彼女と仲を深めるうち、君は「ある違和感」に気づく。
耳にする得体のしれない言葉。ロゴス真理教。そしてゾルタクスゼイアン……。
君は真実を知りたいか?それが、おぞましいものだったとしても……。


(ノイズマン ロアスペイダー著)
事故にあった姉に関する謎のメモリーカードを再生する。
不気味なノイズと言葉たち。それ以上に不可解な現象を、君は目にする。
そして、君自身もまたノイズにのまれる感覚を味わうことになるのだ……。


クトゥルフ新話 山田賢治著)
君はニュースを見たり、町をうろついて暇をつぶしている。
怪しい宗教に入信したり、UFOに乗ったり、人を殺めてしまうこともあるだろう。
何気ない日常の一歩先、そこから狂気は少しずつ君に這い寄るのだ。


(NOISE 神崎マコト著)
君は三流オカルト誌の新米ライター。奇病の取材で訪れた病院で軟禁される。
脱出して取材を試みるが、患者たちに生気がない。
君がこの病院で目にするのは、有り得るはずのない真実だった……。


(死者の彷徨く島 丹野佑著)
君はアルバイトで、ある島の施設を訪れる。
だが、そこで与えられた薬で被験者がゾンビ化。
生き残るため誰を信じ、誰を見殺しにするのか。君は究極の選択を迫られる。


(ゾンビ・ザ・ワールド 靴下ぬぎ夫、杉本=ヨハネ著)
君は日本からフランスへの留学生。
陸上で結果を出すため新薬でドーピングしたら、副作用でゾンビになった。
B級映画的要素がこれでもかと詰め込まれた展開。ゾンビライフを謳歌しよう!


【杉本=ヨハネの一言では終わらない解説】
クトゥルー短編集は、冒険記録紙やサイコロを必要としない、気軽に遊べるゲームブックです。 作品によってはメモを取ったほうが遊びやすいものもありますが、大半はそれすら必要ありません。 この作品には6個の短編ゲームブックが収録されています。 どの作品もそれほど長くはなく、電車のなかなどで空いた時間に遊べるようになっています。