感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第23話「フラッシュバック」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第23話 フラッシュバック DEMONS

■あらすじ

EP23 フラッシュバック
ある朝見覚えのないモーテルの一室で目覚めたモルダー。銃からは弾が2発発射されていたが、全く記憶がない。空白の2日間を埋めるためモルダーはスカリーに助けを求める。

 お題は「精神療法」(※超常現象要素は無し)。


 ある朝、モルダーが目覚めると、見知らぬモーテルに泊まっており、しかも服は血だらけだった。さらに、過去二日間の記憶が無く、銃からは二発発射されていた。モルダーはスカリーを呼び、過去の行動を調べはじめるが、頻繁に発作に襲われ、その度に子供の頃の事を思い出す。


 やがてモルダーは、自分が乗っていた車やあやふやな記憶を頼りに、見知らぬ別荘にたどり着くが、中では車の持ち主であるカサンドラ夫妻が射殺されていた。モルダーは殺人の容疑者として警察に逮捕される。直後、警察署内で巡査が突然銃で自殺するが、彼は宇宙人の存在を信じる変わり者だったという。スカリーは巡査にもカサンドラ夫人エイミーにも、こめかみに傷があることに気が付く。


 現場検証の結果、カサンドラ夫妻の事件は、エイミーが夫を射殺し、その後自殺した無理心中事件だと判明、モルダーは釈放される。エイミーは宇宙人に誘拐されたと信じ、精神科医ゴールドスタインに過去を呼び覚ます治療を受けていたことがわかる。自殺した警官もやはりゴールドスタインにかかっていた。あまつさえ、モルダーも自身は覚えていなかったが、その医者に同様の治療を受けたらしい。モルダーの度重なる発作は治療の影響だった。


 モルダーは切れ切れに思い出す過去の光景で、子供の頃、母親がスモーキング・マンと男女関係にあったらしい事を思い出す。モルダーはその事で母親を問い詰めるが、完全に否定される。モルダーはさらに真実に迫ろうと、ゴールドスタインに再度精神療法を受けるが、ますます様子がおかしくなる。ゴールドスタインは違法な治療で逮捕され、モルダーはスカリーの説得でなんとか落ち着く。モルダーが見た「過去」が、本当にあったことなのか、たんなる幻覚なのか、は不明のままだった。




監督 : キム・マナーズ
脚本 : R.W.グッドウィン



■感想

 評価は×。


 通常のエピソードとは異なり、モルダーが記憶喪失状態で目覚め、さらにあきらかに犯罪に関わったとしか思えない状況からスタートする、という異色回。モルダーとスカリーが、僅かな手がかりを元に、空白の二日間の出来事を解明していくという、X-ファイルとは思えないサスペンスストーリーで、いきなり引きこまれた。


 途中、射殺死体の発見、モルダーに投与された薬物、警官の自殺、UFO誘拐体験者、といった要素が次から次へと提示され、話の真相がなかなか見えてこないのが面白い。「秘密組織によるモルダーに対する陰謀」「異星人による誘拐」などの可能性をにおわせ、視聴者を幻惑させるプロットは巧みだった。


 もっとも、中盤で、モルダーの記憶喪失も、カサンドラ夫妻の死も、警官の自殺も、全て精神科医ゴールドスタインの怪しげな治療が原因と判明するあたりから、話が一気にトーンダウンしてくる。複雑そうに見えた話が、蓋を開けてみればこの程度のオチだったのかと明かされ、前半が盛り上がっただけに反動で失望も大きかった。


 しかも、モルダーが子供の頃の記憶を思い出して、ついにサマンサについての真実を思い出したと思っていたのに、スカリーからは「それは幻覚よ」と諭されてしまうのだから、もう苦笑するほかは無かった。結局今回の話は「モルダーが怪しげな医者にかかって酷い目にあう話」でしか無かったわけである。前半が面白かっただけに、結末の酷さには怒りすら覚えた。


 スカリーは、ゴールドスタインの治療を受けた者は「ワックスマン・ゲシュイン症候群」を発症したと連呼していたが、調べてみるとこの病名は全く見当たらない。作家のドストエフスキーがかかっていたという台詞を元に調べなおしてみると、正式には「ゲシュヴィント症候群」という名前の様である。症状は、側頭葉てんかんの発作をわずらっている場合に、認知や記憶が強化される、というものである。ゴールドシュタインの犠牲者たちの症状とは何か違う気もする。


 サブタイトル「DEMONS」とは、物語の終盤、モルダーが「自分の中の悪魔を退治する」云々と口にした事に由来する。もっとも劇中で「悪魔」云々の意味は明かされないので、モルダーの言う悪魔がなんだったのか全く不明なのだが。


 前半、殺人事件の容疑者として逮捕されたモルダーがスカリーに「O・J・シンプソンより不利な状況だよ」とおどけて言うシーンが有る。これは放送当時(1997年)の時事ネタで、1994年に元フットボールの名選手で俳優だったO・J・シンプソンが元妻とその友人の殺人容疑で逮捕された事件のことを指している。