【漫画】「突撃!! アニメ調査官」はアニメ業界の様子をリアルに描いていて超オススメ

プリンセスGOLD(ゴールド) 2016年 04 月号 [雑誌]


 最近は、TVアニメ「SHIROBAKO

 漫画「これだからアニメってやつは!」(峠比呂

 といったアニメ業界を舞台とした創作作品が次々と出ていますが、同じジャンルを扱った漫画「突撃!! アニメ調査官」(三枝陽子)が超面白いのでオススメしたいと思います。秋田書店の「プリンセスゴールド」での連載で、2013年11月号で連載がスタートし、このほど2016年4月号で完結したのですが、実に楽しくて笑える漫画でした。


 主人公の川崎さん(メガネ美人)は、有名大学を卒業後、霞ヶ関の某官庁に勤務する正真正銘のエリート。彼女の勤務するお役所は「クールジャパン」推進のため、アニメ業界に補助金を出そうとしているのですが、そのために開いたパーティーに集まってきたのは、今までアニメ制作に関わったこともないのに金だけは掠め取ろうとする業界ゴロばかり。川崎さんの上司は、自分たちがいかにアニメ業界を知らないかを痛感し、実体を把握するため、川崎さんにアニメ制作会社への潜入調査を命じます。かくして川崎さんは、身分を隠して、K井草にある弱小アニメ制作会社「ぶっほん」の門を叩きます。

 業界の事をまったく知らない川崎さんは、「アニメ=オタク=メイド喫茶」という貧弱な知識を元に、メイドの格好をしてぶっほんに乗り込み、社員たちを困惑させながらもぶっほんに入社する事に成功します。かくして川崎さんは制作進行として業界の実態に触れていく事に……


 という形でスタートし、以後毎回川崎さんがアニメーターたちの非常識な生態に驚かされるというのが基本の展開で、毎回描かれるエピソードが、もうおかしい。エピソードをいくつかとりあげると……


●会社の人間たちの内輪話。社員は全員夜中に不審者として職務質問されたことがある。職場近くのコンビニは夜中の四時に大盛況。川崎さんは出合ったおまわりさんから「あんなヤクザな業界に勤めるなんて……」とか言われてしまう。


●若手アニメーターがあまりにも貧しい弁当を食べているので、川崎さんが懐具合を尋ねてみると、アニメーター学校で講師に「一年目は食えないから貯金してから仕事を始めろ」と忠告されたとか。実際一ヶ月の手取りが10万円以下なので、今は貯金を取り崩して生活中。しかし食費は削っても、好きな同人誌には何千円でもつぎ込んでいます。


●川崎さんに(役所の)上司から秘密指令が届き、ヨーロッパの要人の娘さんたちが日本のオタク文化を知りたいというので案内してくれと命令されます。しかし川崎さんが秋葉原に連れて行こうとすると、もうアキバなどは古いとクレームが。そこに会社の同僚(腐女)が現われ、中野ブロードウェイとか原宿とかの穴場を案内してくれて、外人さんたちは大満足。オタク同士、言葉が通じないのに何故か完全に意思疎通できていました。


●某国民的監督の某有名アニメ会社が今後は新作を作らない、というニュースにぶっほんの社員たちはショックを受けます。そこからアニメーターはいかに薄給かという話へ移行していきます。川崎さんは、社長が「お役所のアニメへの補助? あんなの役に立たないよ。アニメの仕事は急な変更がつき物なのに、書類を作って申請しろとか、大手さんしかムリ」とか言われてショック。最後に、アニメーターたちから『お米みたいに、原画一枚に補助金いくらとか出せば良いんじゃね?』とかいう話になりました。


●ぶっほんの若手アニメーター(女の子)は原画昇格試験に受からずイライラ。社長は川崎さんに退職しないようになだめるように頼んできたので彼女から話を聞きますが、アニメーターとしての収入よりその合間のバイトの収入が多いと言われ、辞めるなとも言えません。そんな彼女はとある漫画のキャラが好きでその作品のアニメに関わりたがっていると聞き、自分で同人誌的に原画を描けばいいとアドバイス。そしてそのおかげで実力が付いたのか、彼女は原画に昇格しますが、すぐに退職してしまいます。なぜならその好きな漫画のアニメを作る会社に入る事になったから。そして彼女はその後作画監督を務めるほどに。社員たちは「逃がした魚は大きかったなぁ」「よくある事さ」とか言ったり。


 と、どこまでが本当なのかは業界人にしか分からないものの、「いかにも有りそう(笑)」というエピソードがこれでもかと展開されて、毎回苦笑の連続でした。


 最終回はぶっほんが借金を抱えて倒産し、それを機会に川崎さんは退社して数ヶ月……、ぶっほんは有限会社から株式会社へと移行してそのまま立ち直っており、社員たちもまたそれなりに立ち直って元気でやっていました。そして様子を見に行った川崎さんを元同僚が見つけて、というシーンでめでたしめでたしのうちに〆と相成りました。


 コミックにまとまるかどうかは今のところ不明なのですが、実に面白い漫画だったので、是非単行本化して欲しいですね。