放送開始50周年 刑事コロンボ|NHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム。
【※以下ネタバレ】
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第9話 パイルD-3の壁 BLUEPRINT FOR MURDER (第1シーズン(1971~1972)・第7話)
あらすじ
建築家のマーカムは、出資者である実業家ウィリアムソンの妻ジェニファーと共に大規模な都市改造計画を進めていた。これに激怒したウィリアムソンは、援助を打ち切ると宣言。マーカムはウィリアムソンを連れ去り、彼が旅に出たように偽装した。コロンボは建設中のビルの基礎工事に使う柱(パイル)に死体が隠されているのではと推理するが・・・。
建築家エリオット・マーカムは、大富豪ウィリアムソンの若き妻ジェニファーに取り入り、自分の理想とする一大都市「ウィリアムソン・シティ」実現のための費用を出資させようとしていた。しかし海外出張中だった夫ウィリアムソンは、帰国してこの計画の事を初めて知り、マーカムを詐欺師呼ばわりして絶対に出資などしないと言い放つ。直後、マーカムはウィリアムソンの牧場に忍び込むと、ウィリアムソンに銃を突きつけ、どこかに連れていく。
やがて警察にウィリアムソンの夫人から、ウィリアムソンはきっと殺されているので調べて欲しい、という連絡が入り、コロンボが担当することになった。しかし連絡をしたのはジェニファーではなく、ウィリアムソンの前妻ゴールディだった。
ゴールディはウィリアムソンと離婚した後も友好的な関係を保っており、自分に連絡も無く海外へ出張するはずがないので殺されているはず、という。しかしジェニファーは、夫はいつの通り海外で仕事をしていると疑ってもいなかった。
やがてウィリアムソンの車が空港近くで見つかるが、コロンボはウィリアムソンがウェスタン音楽好きにもかかわらずカーラジオはクラシック専門局にセッティングされていたことを発見する。またウィリアムソンは心臓にペースメーカーを入れており、医者に電池の交換の予約をしていたのに、病院に来ずに海外に出かけてしまったという話にも疑問を抱く。そしてコロンボは、マーカムがクラシック愛好家であること、ウィリアムソンとは傍目にも関係が悪かったこと、等を突き止める。
コロンボがウィリアムソンの遺言状の内容を調べると、ウィリアムソンが死んだ場合、財産の25パーセントはゴールディに行き、残りの75パーセントは信託扱いとされることが解る。ジェニファーは信託から十分な年金を受け取ることになっていたが、とてもマーカムが必要とする理想都市建設の費用を出すことは出来ない。ただし、ウィリアムソンが死亡ではなく行方不明のままなら、ジェニファーは全ての財産を自由にできる。
コロンボは、マーカムがウィリアムソンを殺したあと死体を隠して行方不明状態として、ジェニファーが大金を自由にできるようにしたと推測する。そしてコロンボは、マーカムがウィリアムソンの死体を、建物の基礎となるコンクリート部品「パイル」の一つ「D-3(でぃー・さん)」に埋め込んだと考えつく。そして許可を取ってパイルD-3を掘り起こすが、結局死体は見つからず、マーカムから皮肉を浴びせられる。
その夜。マーカムは車でウィリアムソンの死体を建設現場に運んでくるが、待ち換えていたコロンボたちに出迎えられる。マーカムはわざとコロンボにパイルD-3を掘り起こさせ、一度調べた場所に改めて死体を隠せば絶対見つからないと考えていたが、コロンボはマーカムの行動を全て読み切っていて騙されたふりをしていただけだった。マーカムは死体を見つけられて申し開きもできず、そのまま逮捕されるのだった。
感想
評価は△(凡作以下)。
コロンボシリーズの作品は、初期の第1・2シリーズの頃はシナリオが微妙な物が多いが、このエピソードも残念ながらその例にもれず、評価はいまいちである。
この作品は、シリーズ作品の基本パターン「殺人が発生してからコロンボが捜査にかかる」をあえて破り、殺人シーンも死体も一切見せないまま進んでいく、という異色の展開となっている。そのため、視聴者にも「ウィリアムソンは本当に殺されたのか?」「殺されたなら死体は何処に隠されたのか?」は謎のままで、コロンボと同じ視点で事件を追うことになる。
ただし、本作はこの意欲的な試みが全くもって成功しておらず、面白くもなんともない。本作でも、コロンボはいつもの通り、カーラジオの設定や、医者との予約、ウィリアムソンがマーカムの事務所の都市模型を破壊した事、などからマーカムを疑って追っていく。しかし、そもそもウィリアムソンが殺されたのかどうかも分かっていないのに、コロンボがマーカムに殺人の疑いをかける様は、何か言いがかりをつけているようにしか見えず、どうにもモヤモヤした。
また、いつもと違う話作りで間が持たなかったのか、ゴールディがウィリアムソンの帽子に血を付けて証拠をでっち上げる展開や、コロンボがパイル掘り出しの許可を得るために役所内をたらいまわしにされるシーンなど、他の作品ではお目にかかれないようなシチュエーションが登場するものの、特にそれが面白さを増したというわけでもなく、何かいつもと違うという違和感しか無かった。
また、終盤に深夜マーカムが車で死体(らしきもの)を運んでいる際にタイヤがパンクしてしまい、白バイ警官と遭遇するシーンも、緊張感は有ったものの、クライマックスの前に余計なシーンをいれて時間稼ぎをしている、という印象の方が強かった。
ラストの、コロンボたちが建設現場で待ち構えていてやって来たマーカムを出迎えるあのシーンは、お馴染みの「コロンボの罠」では有るのだろうが、さして痛快感も無く、大げさな仕掛けの割には印象は薄かった。やはり、初期の作品では視聴者が期待する「コロンボらしさ」という物は希薄な感じである。
ということで、見ていて殆ど満足感の得られない作品だった。
サブタイトルの原題「BLUEPRINT FOR MURDER」は「殺人の設計図」という意味。犯人が建築家という事を踏まえると、まあ妥当なサブタイトルではある。日本語サブタイトル「パイルD-3の壁」の方は、別に「壁」が事件のキーになったわけではないことを思うと、ちょっと外しているような感じである。
備考
放送時間:1時間16分。
本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第5位にランキングされた。
#9 パイルD-3の壁 BLUEPRINT FOR MURDER
日本初回放送:1973年
ピーター・フォークの演出作品!今回は「殺人の瞬間」が描かれておらず、さらに遺体の隠し場所についても、視聴者に隠しておくという大胆な手法をとっている。最後まで見ないと謎が解けない!
出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク(小池朝雄)
エリオット・マーカム・・・パトリック・オニール(川辺久造)
ウィリアムソン・・・フォレスト・タッカー(勝田久)
ゴールディ・・・ジャニス・ペイジ(中西妙子)
モス博士・・・ジョン・フィードラー(矢田稔)
演出
ピーター・フォーク
脚本
スティーブン・ボッコ
原案
ウィリアム・ケリー