【歴史】感想:NHK番組「決戦!大坂の陣」(2021年12月30日(木)放送)

決戦! 大坂の陣 (実業之日本社文庫)

決戦!大坂の陣 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/1VN52XNPQ5/
放送 NHK BSプレミアム。2021年12月30日(木)

www.nhk.jp

【※以下ネタバレ】
 

決戦!大坂の陣
[BSプレミアム] 2021年12月30日 午後7:30 ~ 午後9:30 (120分)


戦国最後の決戦・大坂の陣。大洪水が発生し、大坂城が難攻不落の水の城になった!豊臣と徳川の水をめぐる攻防を徹底調査。ドキュメントと本格ドラマで描く2時間スペシャ


戦国最大の決戦・大坂の陣。本格ドラマとドキュメンタリーで描く2時間スペシャル。20万の大軍で攻め寄せる徳川家康。目の前に広がったのは、大洪水によって難攻不落の水の要塞と化した大坂城だった。作戦を指揮したのは、若きプリンス・豊臣秀頼だ。今回、最先端の洪水シミュレーションを駆使し、豊臣の洪水作戦を徹底解明。さらに大坂城の発掘調査や海外史料から真田丸の戦いや豊臣滅亡の謎も調査。幻の戦場がよみがえる。


【出演】村井美樹濱正悟,宍戸開,本宮泰風,しゅはまはるみ,【アナウンサー】近田雄一,【ゲスト】千田嘉博,クレインスフレデリック光成準治

 

内容

●冬の陣に至るまで

 慶長19年(1614年)の大坂冬の陣豊臣秀頼は直前まで戦を避けるために尽力していた。しかし徳川との交渉を任せていた片桐且元が徳川側に寝返り、家康に悪口を吹き込んだたため、家康が激怒して戦は不可避となった。

 秀頼は母・淀殿の言いなりの情けない若者だったという見方が一般的、しかしそれは徳川が「そんな情けない男に天下を任せたら大変なことになった」と自分たちを弁護するために悪口を言いふらした可能性がある。秀頼の側近の書き残した文章によれば、秀頼は淀殿に対し政治に口出しすることを止めるように命じたとある。


●冬の陣開始

 秀頼は豊臣家を守るため持久戦を決断。そのために淀川の堤防を決壊させ、大阪平野を水浸しにする作戦を敢行した。これにより大坂城の北と東は水に浸かり、攻められるのは西と南だけになって守りやすくなった。

 真田信繁が指揮したことで有名な砦「真田丸」。かつては大阪城の一部と考えられていたが、現在では大阪城の南側にあった独立した砦であったことが解っている。真田丸の北、大阪城との間には谷があり、そこに洪水の水が入り込んだことで、真田丸は全面包囲されず、北は守らなくてもよくなった。これで敵の攻撃を持ちこたえた。


●家康の反撃

 家康は大阪城を攻めあぐね、まず水を引かせるため、毛利などの大名に命じて堤防を作らせた。当時の毛利の人間の手記によると、昼も夜も無く働かされて心底キツイ、と書いてあった。

 数週間かけて堤防が完成し、水が引いたことで、徳川方の攻撃がやりやすくなった。家康は大阪城の北側500メートルのところに、最新のオランダ製大砲を据え付け、そこから大阪城を撃ちまくった。豊臣方はその攻撃に心理的に耐えられなくなり、交渉の席についた。


●堀を埋め立てる

 家康は、当然だが、大阪城に籠って戦う牢人たちを城から追い出すように要求した。ところが牢人たちはそもそも行く場所が無くて大阪城に来ているので、はいそうですかと退去する筈もなかった。

 かつては「大阪城の外堀を埋めたのは徳川方。豊臣の許可も得ずに勝手に埋めた」と言われていたが、現在では豊臣の了承のもとに行われたとされている。秀頼は、牢人を追い出すため、あえて大阪城の防御の要の堀を埋め、もう戦争する意思は無いと牢人たちに示したのではないか。


●牢人たちの狼藉

 一応冬の陣は終結したが、牢人たちは大阪に居座り、略奪や放火などを行って制御できない状態となっていた。国の統治者である家康はこの牢人たちをどうにかするように豊臣に命じるが、豊臣方にもコントロール不能だった。この牢人たち問題がきっかけとなり、慶長20年(1615年)に大坂夏の陣が勃発した。


大坂夏の陣

 もう大阪城の堀は埋め立てられていたので、持久戦は不可能で、牢人たちは外に出て打って出る方針だった。秀頼としては最後の最後まで話し合いに希望をかけていたが、真田信繁が命令を無視して家康の陣めがけて突入してしまう。

 信繁は家康を追い詰めるものの、結局は討ち死に。秀頼の話し合いも無駄になり、結局大阪城は落城し、秀頼も自害する事となった。


感想

 歴史マニアでなくてもそれなりに知っている大坂の陣を取り上げた番組。しかし、大坂冬の陣の際、秀頼が洪水戦法で徳川方に対抗したとかいう話は初耳も良いところでビックリ(;゚Д゚)エエー


 研究者たちの説明によると、この洪水作戦とか、徳川方の大名がそれに対抗して堤防を作った、とか、エピソードそのものは知られていたらしいのですが、どの程度の物かよくわからなかった模様。

 今回NHKは、デジタル地図や洪水シミュレーションの専門家たちと手を組み、一体どういう状況だったのかと、というのをシミュレート。その結果、台地にあった大坂城は水に浸からなかったものの、大坂平野はもう巨大な湖的な水浸しとなっていた! という事を発見したとのこと。

 まあ、これが本当なの? というのはまだまだ研究の余地があるでしょうが、今までの大坂の陣の常識が塗り替わったのは確実ですね。


 この番匠は専門家の語りと並行して、俳優たちによるドラマパートも並行して放送されたのですが、秀頼が必死に話し合い路線で生き延びようとしているのに、信繁が勝手に命令違反をして突撃してしまい、全てがぶち壊しになって秀頼が激怒する辺りの描写がもう胸に刺さる刺さる。

 信繁は突撃して歴史に名前を残せたので本望でしょうが、それで全てご破算にされて、挙句に道ずれで自決する羽目になった秀頼としてはやってられなかったろうなぁ感が物凄い。信繁に対する見方がめちゃくちゃ変わりました(笑)
 
 

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=32106
パワーアップ“大坂の陣
驚きの「洪水大作戦」!?

決戦!大坂の陣
12月30日(木)[BSプレミアム]後7:30


歴史を動かした戦いを最新研究で読み解く「決戦シリーズ」。今回は「歴史探偵」で放送した「大坂の陣」を2時間に拡大バージョンアップして放送します。攻める徳川家康大坂城で守る豊臣秀頼。秀頼がとったのは、城の周囲を水びたしにする-大洪水をひきおこして大坂城を鉄壁の要塞とする作戦でした…。
番組に取材段階から協力していただいた、城郭考古学が専門の千田嘉博さん(奈良大学教授)から、番組の見どころを紹介してもらいます。


大坂の陣の実像に迫る大発見!
豊臣と徳川の最終決戦になった大坂冬の陣大坂夏の陣は、両軍合わせて30万人もの軍勢が激突した戦いでした。誰もが知るこの戦いは真田信繁(幸村)・後藤又兵衛たちの活躍や、徳川家康の周到な作戦などを通じてイメージされてきました。しかし戦いに敗れた豊臣軍がどんな作戦をめぐらし、総大将としての豊臣秀頼がどんな決断を下したのかは、大坂城の落城とともにほとんどの史料が失われたため、深い謎に包まれてきました。

そこで番組では先行研究の成果を網羅的に検討したうえで、これまで考えもしなかった「科学の目」を取り入れた新しい方法で、大坂の陣の謎に迫りました。その結果、冬の陣に際して豊臣軍が決行した「洪水作戦」の実像を、はじめて明らかにしました。


文字史料や古地図の分析、発掘成果、城郭研究、詳細な豊臣時代の地形復元、古気候学にもとづく降水量復元、現地踏査による遺構確認をはじめとして、番組が各分野の研究者・技術者とともに明らかにした成果は、まさに文理融合の先端研究そのものです。テレビの歴史番組はここまでするのだと、驚かれる方も多いと思います。


そして研究成果を統合した高精度のコンピューター・シミュレーションの結果によって見えてきた「洪水作戦」の実態は、今までの大坂の陣の常識をくつがえす画期的なものでした。刻々と変化していく洪水のようすを近田雄一アナウンサーの実況ではじめて見たときは、本当に衝撃を受けました。


洪水の範囲と水深は淀川の水量の想定などによって変わりうるので、さらに研究をつづけることが必要です。しかし、今後の研究の出発点になる実証的な仮説を番組によって示した意義は、きわめて大きいと思います。


新たな仮説から見えてくる人間ドラマを感じてほしい

「洪水作戦」は地域の住民に大きな被害を与えたため、秀頼にとって苦渋の選択でした。その苦渋の選択をもってしても、豊臣軍はなぜ勝てなかったのか。そこには両軍を率いた豊臣秀頼淀殿と、徳川家康・秀忠の決断だけでなく、それぞれの軍に加わった武将たち一人ひとりの思惑と置かれた状況が関わっていました。

冬の陣が終結して大坂城の内堀を除くすべての堀を壊したのに、なぜ夏の陣は起きたのか。「正義」の反対には「もうひとつの正義」があって、400年前の武士たちの交錯した思いが最後の戦いを避けられないものにしていきます。番組で読み解いていく武士たちの格差問題は、現代の私たちが直面する社会の課題とも重なります。

大坂の陣の実像を明らかにし、戦いの背景と人びとの姿を描き出したこの番組は、今までとは異なった豊臣秀頼真田信繁の姿を浮かび上がらせていきます。鮮やかな陰影を伴った秀頼と信繁から、彼らがそれぞれに背負い、守ろうとしたものを感じていただけたらと願っています。



番組プロデューサーより
今回、災害対策に使われる最新の洪水シミュレーターを駆使し、秀頼の洪水大作戦を徹底解明。さらに、大坂城の発掘現場や海外史料も調査。大坂城の内部で繰り広げられた豊臣秀頼真田信繁(幸村) の主導権争いの実態が明らかに! 真田丸の戦いや信繁最後の突撃の真相も本格ドラマで描き出します。これまでの常識を覆す戦国歴史ドキュメンタリー、驚きの連続の2時間です。


【スタジオ出演】
千田嘉博奈良大学教授)
フレデリック・クレインス(国際日本文化研究センター教授)
光成準治九州大学大学院特別研究者)
村井美樹(タレント)
近田雄一アナウンサー


【ドラマパート出演】
濱 正悟(豊臣秀頼
宍戸 開(徳川家康
本宮泰風(真田信繁
しゅはまはるみ淀殿
ほか

 
ゲームジャーナル別冊 幸村外伝 ~真田幸村 大坂夏の陣~
ゲームジャーナル別冊 幸村外伝 ~真田幸村 大坂夏の陣~
 
真説 大坂の陣 (学研M文庫)
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