【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第44話「攻撃命令」

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刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第44話 攻撃命令 HOW TO DIAL A MURDER (第7シーズン(1977~1978)・第4話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(44)「攻撃命令」
[BSプレミアム] 2021年02月03日 午後9:00 ~ 午後10:14 (74分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!心理学者が妻の浮気相手を殺害!犯人が映画ファン、特に「市民ケーン」が好き、という設定で映画トリビア満載。


妻を事故で亡くした心理学者エリック・メイスンは、妻の浮気相手だった助手のチャーリー殺害を企てていた。あるキーワードで人を攻撃するように2匹のドーベルマンを訓練したのだ。メイスンはチャーリーを自宅に招いておき、健康診断を受けている病院から電話をかける。電話に出たチャーリーが、犬の前でそのキーワードを口にするよう誘導した。

●序盤

 心理学者エリック・メイスン(犯人)は、自分が飼っている二頭のドーベルマン「ローレル」「ハーディ」に対し、電話のベルを聞くと電話に近寄って臨戦態勢に入り、「薔薇のつぼみ」という言葉を聞くと、それを発した人間に襲い掛かるように訓練していた。

 メイスンは半年前、妻のロレーンを車の事故で亡くしていた。

 ある日、メイスンは同僚のチャーリー・ハンター(被害者)を先に自宅に行かせてから、自宅に電話をかけ、台所にある電話をチャーリーに取らせるように仕向ける。電話のベルを聞いてドーベルマン二頭がチャーリーに接近し、さらにチャーリーはメイスンに「薔薇のつぼみ」と大声で言う様に指示され、その通りにした途端、襲い掛かって来た二頭に殺されてしまう。



●中盤

 コロンボたちは、メイスンの屋敷のゲストハウスに同居している女子学生ジョアン・ニコルズの通報で駆け付け、チャーリーの死を確認する。

 そこに素知らぬ顔でメイスンが戻ってくるが、コロンボは台所の電話の受話器が外れていたことを気にする。電話機の発信音を聞くと、外部からメイスン邸にかかって来たことが解るが、電話していた相手はチャーリーの異常を知りながら当局に通報をしていないため、コロンボはその相手を探そうとしていた。

 コロンボは犬の訓練所を訪ね、犬に対し、特定のキーワードなどで人を襲う様に訓練できることを知る。

 メイスンはローレルとハーディが保護されている警察を訪れ、証拠となる二頭を毒殺しようとするが、コロンボがやってきたため未遂に終わる。メイスンが立ち去った後、コロンボは二頭が電話のベルの音を聞くと殺気立った様子になることを発見する。

 コロンボはメイスンの屋敷の台所の、チャーリーが襲われた辺りの梁に、用途不明のフックが付いていることを見つける。また映画好きのメイスンがどこからか古いスポットライトを拾ってきた事を知り、その出所を探しゴーストタウンと化した町にたどり着く。そこには天井から何かを吊るしたあとと、スピーカーが残されていた。

 メイスンは故チャーリーのオフィスに忍び込み、チャーリーが妻ロレーンと写っている写真を回収するが、実は先にコロンボがやってきていて、手掛かりを見つけようとしていた。コロンボはチャーリーの上着が一着見つからない事を発見していた。

 夜。コロンボはメイスン邸を訪ね、雑談がてらメイスンに自分の心理テストをしてもらう。実はコロンボはその会話を全てカセットテープに録音していたが、その内容を犬に聞かせても反応は無かった。ところが偶然から、全く関係無いと思っていた映画に関する会話を聞かせると犬が狂暴になることを突き止める。



●終盤

 コロンボはローレルとハーディと共にメイスン邸を訪問し、メイスンが妻のロレーンとチャーリーの不倫関係に気が付いており、二人を殺したと指摘する。そしてロレーンの件は立証できなくても、チャーリー殺しは明らかだといって、メイスンの犯行の方法を具体的に説明して見せる。

 コロンボは、メイスンがスピーカーを仕込んだ藁人形を天井からつるし、犬に電話のベルと特定のキーワードの組み合わせで人形を襲う様に訓練し、最終的にチャーリーを殺害させたと指摘する。チャーリーの上着が一着消えていたのは、犬に臭いを覚えさせるためだったとも推測する。

 メイスンはコロンボに全てが見抜かれていると知り、ローレルとハーディに対し「薔薇のつぼみ」というキーワードを発してコロンボを襲う様にけしかけるが、二頭はコロンボを殺すどころかじゃれつくだけだった。コロンボは攻撃命令となるキーワード「薔薇のつぼみ」を突き止めており、訓練士に二頭の訓練をし直してもらい、「薔薇のつぼみ」でじゃれつくようにしていたのだった。メイスンはコロンボに脱帽するほかは無かった。


監督:ジェームズ・フローリー
脚本:トム・ラザルス(原案:アンソニー・ローレンス ANTHONY LAWRENCE)


感想

 評価は○(そこそこ)。

 一応コロンボの基本的なフォーマットは踏襲していて、そこそこには見られるものの、内容が薄く、見終わっても満足感の薄い一作だった。


 今回の事件では、特に深く追求していく謎は無く、「犬がどうして被害者を襲ったのか」というただそれだけを突き止めればよく、コロンボがそこに気が付けばもう事件解決のため、コロンボが細かい証拠を次々と見つけ出し、それを積み上げて事件の全体像を解き明かしていく、といった面白みは全く無かった。

 そして、犬を攻撃に駆り立てる「電話のベル」も「キーワード」も殆ど偶然に見つかってしまうし、その他のメイスンの犯行を示唆する証拠も苦も無くどんどん見つかるので、コロンボ自身が「簡単な事件でした」と言っている通り、事件を解明していく醍醐味は無く、なんとも薄味のエピソードだった。


 最後の最後に犯行を暴かれたメイスンは、犬にコロンボにけしかけて殺させようとするのだが、ここがどうにもおかしい。当初の訓練通りなら、二頭はコロンボではなくキーワードを口にしたメイスンに襲い掛かっていくはずで、この時点で話が破綻している。まあ、メイスンが二通りの訓練をしていて、主の自分が指差しをした場合にはその相手に襲い掛かる、という様に仕込んでいた可能性もあるが、その辺りがあいまいでいまひとつスッキリしなかった。

 また、クライマックスでメイスンに証拠をつきつける際、コロンボはビリヤードをしながら滔々と説明しつつ、ビリヤード台のポケットの中に仕込んでいた証拠を次々とメイスンに取り出させる。この辺りはあまりにも芝居がかっているというか、わざとらしい感じが否めず、この辺りも評価を低くする原因となった。

 あと、メイスン宅に住んでいた女子学生ジョアン・ニコルズが、終盤メイスンに殺されそうになりつつも、コロンボの乱入で命拾いしたあと出てこない。クライマックスで顔を出しても良かったと思うのだが、そのまま忘れ去られてしまっている。


 等等、ストーリーにさほど面白みを感じられず、粗が目に付き、満足感があまりない一作だった。


 メイスンの吹き替えの声が聞き覚えがあるので誰かと思っていたが、平田昭彦氏だと知って納得。「ゴジラ」や「ウルトラマン」や、その他昭和特撮で有名な方だが、吹き替えもやっていたとは知らなかった。


 犬の訓練所でコロンボの相手をしてくれる美人訓練士のコーコラン役を演じていたのはトリシア・オニールという女優。なかなかグッとくる美女なので、他にどんな仕事をしているのかと調べたが、テレビムービーとかがメインのパッとしない経歴だった模様。一番有名な仕事は「殺人魚フライングキラー」というトンデモ映画のヒロインらしく、その他には一応「タイタニック」にも端役で出演しているとのこと。

 本作では、コロンボの愛犬「ドッグ」が久々に登場。コロンボは美人訓練士に自宅の番犬として訓練してもらえないかと頼むが、訓練士は一目見ただけで「奥様がご心配なら空手を教えてあげる方が早いですよ、ではこれで」とあっさり流されているシーンが妙に面白い。

 この作品は、メイスンが映画マニアということで映画ネタがやたら多い。「薔薇のつぼみ」「壁に飾った雪ぞり」「冒頭にちらっと写るスノードーム」「Kの文字が入った門」などは全て「市民ケーン」から来ているのが劇中で明言されていて、一度でも「市民ケーン」を見ていると大ウケ出来るが、その他にもまだ映画ネタが隠されている。

・作品サブタイトル「HOW TO DIAL A MURDER」は、ヒッチコック監督の有名サスペンス映画「ダイヤルMを廻せ!(DIAL M FOR MURDER)」から来ている。ちなみに仮題の時点では「THE LAUREL AND HARDY W.C.FIELDS CITIZEN KANE MURDER CASE」(ローレル&ハーディ、W.C.フィールズ、市民ケーン、殺人事件)というとんでもないタイトルだったとのこと。


・事件を引き起こした二頭の犬の名前「ローレル」と「ハーディ」とは、1920~1940年頃にアメリカの映画界で活躍したお笑いコンビ「スタン・ローレル」「オリバー・ハーディ」から来ている。このコンビは日本では「極楽コンビ」と呼ばれている。


・メイスンの家に写真が飾られていた「W.C.フィールズ」とは、1910~1940年頃にアメリカの映画界で活躍したコメディアン・俳優。当時チャップリンに匹敵するようなポジションだった模様。

その他

 放送時間:1時間14分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ニコル・ウィリアムソン平田昭彦キム・キャトラル…宗形智子,トリシア・オニール…藤夏子,ジョエル・ファビアーニ…寺島幹夫,【演出】ジェームズ・フローリー,【脚本】トム・ラザラス

 

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