【ゲームブック】感想:ゲームブック「バルサスの要塞」(スティーブ・ジャクソン/2021年)【クリア】

Fighting Fantasy 02 Citadel Of Chaos (Puffin Adventure Gamebooks)
Fighting Fantasy 02 Citadel Of Chaos

http://www.amazon.co.jp/dp/4815606951
ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび 単行本(ソフトカバー) 2021/7/16
安田均グループSNE (著)
出版社:SBクリエイティブ (2021/7/16)
発売日:2021/7/16
単行本(ソフトカバー):1416ページ

★★【※以下ネタバレ】★★
 
 

バルサスの要塞
シリーズ第 2 弾として「火吹き山」の基本システムを踏襲しつつ、新たに「魔法」の概念が導入された。劇的な効力を持った魔法。どの魔法を選んで旅立つか。冒険開始前から運命の選択は始まっている。

 
 昨年2021年7月に発売されたゲームブック5冊詰め合わせセット「ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび~」

ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび~ | SBクリエイティブ
https://www.sbcr.jp/product/4815606954/

www.sbcr.jp
 
 の中の一冊「バルサスの要塞」(スティーブ・ジャクソン/本国イギリスでは1983年発売)をクリアしたので感想をば。

概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」2作目。王道ファンタジー作品。


あらすじ

 強大な妖術使いバルサス・ダイアは、混沌の勢力を結集し、数日以内に攻撃を開始するべく準備を進めている。その野望を阻止する方法は、戦いが始まる前にバルサスを暗殺する事だけだ。高名な魔法使いの優秀な弟子である君は、王からの依頼を受け、単身バルサスの要塞へと向かった。君はこの危険な任務を果たすことができるか?!


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は400。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 本作独自の特別ルールとして「魔法」があり、キャラ作成時に「原魔法点」(サイコロの目+6)を決定すると、冒険の間はこの数だけ呪文を唱えることができます。呪文は12種類(「魔物写し身」「心話(ESP)」「火炎」「愚者の黄金」「幻影」「浮遊」「運回復」「防御」「技術回復」「体力回復」「強化」「弱体化」)あり、原魔法点の回数だけ、どの魔法を何回分持って行くか、を決めておきます。回復系魔法はいつでも使用可能で、その他の魔法は選択肢の指示で使用します。


感想

 評価は○(まずまず)。

 FFシリーズ2作目。伝説的大ヒット作「火吹き山の魔法使い」に続く作品ですが、本作も同レベルで面白く、初期FFを支えた双璧的な感じで評価されているのもうなずけました。


 本作で気に入ったのは、作品世界の描写が格段に増えていること。前作「火吹き山~」は、ダンジョン踏破というその一点に力を集中していて、世界観の説明やキャラ描写等は殆どありませんでしたが、本作は、基本的な展開は「ラスボスのバルサス目指してダンジョンを突き進むタイプ」というところは共通しているのですが、随所に世界観を感じさせる描写があり、その辺りが面白さを醸し出していました。

 まずプレイ前の背景説明で、地名として「柳谷」「サラモニス」「ヨーレの森」、人名で「サラモン王」「ヨーレの大魔術師」等が登場し、簡単ではありますが、これから冒険に挑む作品世界のイメージを膨らませてくれています。

 また敵地である要塞内に乗り込んでも、敵との戦闘シーンとか罠に落ちたとかそういう殺伐とした場面ばかりではなく、門番が軽口を叩いていたり、非番の兵士たちが休息していたり、商人と商売について交渉する展開が有ったり、賭博場に遭遇したり、と、作品世界のキャラクターが生きている存在として描写されており、単に「敵を斬り倒して先に進む」だけの作品になっていないのがポイントが高かったです。

 「火吹き山~」は複雑なダンジョンをどう攻略していくか、が主眼でしたが、本作は出会う多彩なキャラクターたちにどう対応するか、がメインとなっており、味わいが深くなっていました。


 ストーリー展開は、三つのパートに分かれており、「パート1 要塞に入り込み敵本拠の黒い塔にたどり着くまで」「パート2 塔に入りバルサスの元にたどり着くまで」「パート3 バルサスとの決戦」という感じの構成となっています。要塞に入ると、色々なルートを辿るものの最終的に黒い塔の入り口に到着する形で収束、そして黒い塔に入るとまた色々な分岐があるものの、またバルサスに遭遇するまでで収束、そしてバルサスとの死闘、という流れです。

 遭遇するキャラとは、戦闘ばかりではなく対話も行えることが多く、上手い事言いくるめて戦闘を回避して先に進むこともできたりします。しかし、そういった相手に限って、倒さないと手に入らないアイテムを所持していたりするので、「戦闘を回避できてラッキー」と喜んでいると、後からアイテムが足りなくて困ったりするなど、ちょっと意地悪なところもありました。


 そして、随所で本作の特徴である「魔法」が使用できます。例えば敵と出会ったときに「剣で戦うか、○○の魔法を使うか、△△の魔法を使うか」といった具合に決断を迫られます。魔法は使うとその場を楽に切り抜けることが出来ることもありますが、何の効果も無く、ただ魔法を無駄使いしただけで終わることもあります。また冒険がどれだけ続くかわからないので、序盤からむやみと魔法を使いたくない、という気持ちにもなります。ということで、この「魔法を使うか、使わずに切り抜けるか」は、序盤から頭から煙が出るくらい思案させられました。

 まあ、結局、最善手(どの魔法をどれだけ持って行って、どこで使えば良い)は、やり込んでゲームの全貌を解明しないと解らない話なので、悩んでも致し方なかった話ではありますけどね。「火吹き山~」が迷宮の地図作りで苦労したのと同様に、本作は魔法で本当に悩みました。


 「火吹き山~」では、ラスボス・ザコールは殆ど「ただ倒されるためにだけいたキャラ」でしかなく、殆ど存在感は無かったのですが、本作はそこを反省(?)したのか、バルサスとのラストバトルは相当数のパラグラフを割いており、かなり驚かされました。顔を合わせたあと、いきなり戦っておしまい、にはならず、言葉による前哨戦、魔法による力比べ、部屋の中でのポジション取り、等、多数の選択があり、ラストバトルを盛り上げておりました。しかし、選択次第では、「戦うことなく、カーテンを開けただけで、日光に弱いバルサスが即死したので勝利」という展開になるので、これは笑ったなぁ(笑)

 バルサスに勝利しても、完璧なハッピーエンドではなく、「これから無事要塞から脱出できるだろうか? それはまた別の物語だ」というハードボイルドな〆方がまためっぽう格好良くてしびれました。


 ということで、本作もその知名度にたがわぬ面白い作品でありました。満足。


おまけ

 社会思想社版の表紙に描かれた「歯をむき出した毛むくじゃらのケダモノ」のイラストのインパクトが凄すぎて、随分長い間、こいつこそが「バルサス」だと思ってました(笑)
 ↓
バルサスの要塞 アドベンチャーゲームブック (2)
バルサスの要塞-アドベンチャーゲームブック (2)
 
 
 

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