【ゲームブック】21世紀にファイティング・ファンタジーが大復活!『ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび~』

 
ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび

http://www.amazon.co.jp/dp/4815606951
ファイティング・ファンタジー・コレクション ~火吹山の魔法使いふたたび 単行本(ソフトカバー) 2021/7/16
安田均グループSNE (著)
出版社:SBクリエイティブ (2021/7/16)
発売日:2021/7/16
単行本(ソフトカバー):1416ページ

【※以下ネタバレ】

 ゲームブックファンに朗報です。あのファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズが、なんと2021年の夏に帰ってきました~、マジかよ!? 現物が手元にあるのに未だになんか夢みたいだ。


ファイティング・ファンタジーの帰還

火吹山の魔法使い ファイティング・ファンタジー (現代教養文庫)

 今を去る事30年以上前、1985~1987年頃に爆発的ブームとなった娯楽「ゲームブック」。当時多数の作品が各社から発売されましたが、その中で人気トップだったのが、社会思想社から発売されていたイギリスのゲームブックシリーズ「ファイティング・ファンタジー(FF)」シリーズでした。

 しっかりしたストーリー、難しすぎず簡単過ぎずのゲームシステム、その他諸々きちんと商品として完成されており、作品によって多少当たりはずれはありましたが、一番信頼できるシリーズだった事は間違いありません。

 そのFFシリーズが、なんとブームから30年以上過ぎた今、再翻訳されて帰って来てくれたのです。しかも五冊まとめて。これはビックリ!


何故今FFシリーズ?

アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版

 しかし、ゲームブックブームが遥かに通り過ぎた今、何故突然FFシリーズが復活したのか?

 FFシリーズは、ファンタジー作品以外にSF・ホラー・スーパーヒーロー物なども含めたバラエティに富んだシリーズでしたが、基本はファンタジー物で、さらにそれらは共通した一つの世界を舞台として書かれていました。

 そのためゲームブックの派生商品として、その作品世界を利用したTRPGが作られ展開されていたのですが、そういったTRPGの最新版「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版(AFF2e)」が日本でも2018年に発売されて、現在も順調に展開されています。

 今回発売された「ファイティング・ファンタジー・コレクション」に収録された五作品は、全てこの作品世界の冒険を扱ったもの。つまりゲームブック単体として人気があるから発売した、という事ではなく、AFF2eの資料、あるいは副読本、といった位置づけで発売されたわけです。まあ、理由はともあれ、ゲームブックの新商品が現代日本で発売されたのだから嬉しい話には違いありません。


内容

バルサスの要塞-アドベンチャーゲームブック (2)

 商品の内容は、ゲームブック五冊と副読本一冊の六冊の組み合わせ。本はDVDケースサイズで、さらに六冊がセットになってDVDボックス風の箱に詰め合わせになっているので、ゴージャスさがたまりません。まあお値段が税込み8250円もしますので、これくらいは当然だよな、という気も致しますけど。


 中に入っているのは、

火吹山の魔法使いスティーブ・ジャクソンイアン・リビングストン
 シリーズ1作目。

バルサスの要塞スティーブ・ジャクソン
 シリーズ2作目。

・盗賊都市(イアン・リビングストン
 シリーズ5作目。

・モンスター誕生(スティーブ・ジャクソン
 シリーズ24作目。

火吹山の魔法使いふたたび(イアン・リビングストン
 シリーズ50作目。商業版としては初邦訳(同人誌での翻訳版はあった)

ファイティング・ファンタジーとAFF(安田均
 安田均先生による解説本。ゲームブックTRPGの歴史、ファイティング・ファンタジーの歴史、TRPGファイティング・ファンタジーについて、etc。


 というところ。「火吹き山」「バルサス」「盗賊都市」は今でも古本が2000円程度で入手できるのでありがたみは薄い(?)ですが、「モンスター誕生」は現在は希少で市場で一冊15,000円程度で取引されていますので、今回の再発売は実にありがたいです。さらにあの火吹き山の続編(ただし主人公は別人ですが)も初翻訳で同梱されているので、他の四冊を持っている人間でも購入する価値は十分にあります。この辺り上手いチョイスですよねぇ。


 中をさらっと確認してみましたが、イラストが昔のままなので嬉しい限り。ただし、社会思想社版と違い、ルール説明が本編の後、巻末に来ているのが大きな違いでしょう。社会思想社版で「プロローグ」→「ルール説明」の順番で読んでやる気を高めてから冒険に挑んだ身としては、ちょっとアレっという感じでしたが、まあそこはそれ、慣れればいいだけの話ですし。


 まあゲームブック詰め合わせに8250円も払うのは結構な冒険なので、万人向けの商品とは言い難いのですが、FFシリーズに興味を持つマニアなら買って損はない商品でしょう。というか、多分今が最安値で、今後どんどん値上がりすると思うので、速攻購入するのが正解です(断言)
 
 
盗賊都市-アドベンチャーゲームブック (5)
モンスター誕生‾ファイティング・ファンタジー (24)
 

■伝説の名作を手に、今ふたたび冒険の旅へ――

1984年――まだコンシューマゲーム機に
ロールプレイングゲーム」という概念が持ち込まれていなかった時代。

多くの若者たちが困難な冒険へと旅立っていった。一冊の本を手に……。

ある者は魔法使いの迷宮へ、またある者は危険と退廃に満ちた盗賊都市へ。
そしてまたある者は混沌の要塞へ。

そこで綴られた冒険譚は色褪せることなく、
むしろ時の流れを経て唯一無二の輝きを放つ――!

今、時代を超えた名編に加えて、
初の邦訳となる「火吹山の魔法使いふたたび」を新規収録。

全5冊からなる究極のコレクション・ボックス、堂々の刊行!




ファイティング・ファンタジーとは?

イギリスのクリエイターである
スティーブ・ジャクソン」と「イアン・リビングストン」の両名による
書籍シリーズで、本を読み進めながらさまざまな選択を重ね、
先の見えない結末へと至る物語。

このシリーズは世界中で大反響を巻き起こし、
本国であるイギリスはもちろんのこと、各国で人々の記憶に刻まれる作品となった。

このファイティング・ファンタジーの後を受けて、
玉石混交さまざまな類書が生まれてきたが、
本シリーズならではの魅力を以下に挙げる。



●豊富かつ大胆な選択と、意外性に富んだ展開
暗い迷宮に張り巡らされた罠、敵か味方かもわからぬ奇妙な人々、
得体の知れない未知の食物――旅の中で冒険者を待ち受ける数々の危難。
それらにどう対処していくのかが運命を分かつことになる。
本シリーズでは、そうした運命の分かれ道が「選択肢」という形で提示される。
中には読み手が思いつかないような機知に富んだものもあり、予想だにしない劇的な展開をもたらすことも。



●1人で遊ぶRPGとしての絶妙なバランス
本シリーズの源流にあるコンセプトは「1人で遊べるRPG」であり、それゆえに旅の途中で遭遇する敵は、それぞれ固有の「数値」や「能力」を持つ。
プレイヤーの分身たる冒険者も能力数値を有しており、敵との戦闘はもとより、過酷な環境や罠などによって次第に体力を消耗していく。
本シリーズはこうした「ゲーム」としての数値設定が絶妙であり、変化してゆく数値に一喜一憂する楽しみも魅力の1つと言える。



●緻密な描写で独特の雰囲気を醸し出す文芸性
文字を主体として冒険を描く本書では、あらゆる情報が文章を通じて表現される。
本格的なファンタジーとして描かれるその世界観は、後年のコンピュータゲームのようなパステルカラーに彩られてはおらず、重厚かつ濃密で、ときに猥雑ですらある。
そうした独自の世界観を描き出す表現力があるがゆえに、本作は不朽の名作として輝き続けている。



【収録作品】
今回のコレクションに収録される作品は、ぜんぶで5編。
いずれもシリーズの創始者であり、現在はレジェンドとして世界に知られる「スティーブ・ジャクソン」と「イアン・リビングストン」の筆によるもの。
両名の共著となる「火吹山の魔法使い」を筆頭に、2作品ずつ巨匠の作品世界に浸ってもらえる。
また、表紙やイラストも初期に好評だったものをメインとし、当時の雰囲気を伝える。



火吹山の魔法使い
シリーズの原点にして最初の作品。
スティーブ・ジャクソンイアン・リビングストンによる共著で、
本作の爆発的なヒットが1人で遊べるRPGたる「ゲームブック」というジャンルを確立した。


バルサスの要塞
シリーズ第2弾として「火吹き山」の基本システムを踏襲しつつ、
新たに「魔法」の概念が導入された。
劇的な効力を持った魔法。
どの魔法を選んで旅立つか。冒険開始前から運命の選択は始まっている。


■盗賊都市
「盗賊都市」の異名を持つ悪名高き港街
ポート・ブラックサンドを舞台にした都市型アドベンチャー
任務の達成段階に応じて、物語の舞台が移り変わっていく。
本シリーズの世界観を鮮やかに描き出した名編。


■モンスター誕生
既存作品と視点を変え「モンスター」側を描いた異色作。
たんに立場が逆転しているのみならず、読み進めていくことで
「自分が何者であるのか」が徐々に把握できるようになる演出が秀逸。


火吹山の魔法使いふたたび
火吹山の魔法使い」の続編でありながら、邦訳がなかった幻の名編。
今回が初邦訳となる。
火吹き山に至る過程までもが緊迫感をもって描かれる。