【ゲームブック】感想:ゲームブック関連書籍「ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方」(安田均/1990年)

ゲームブックの楽しみ方―ファイティング・ファンタジー (現代教養文庫)

http://www.amazon.co.jp/dp/439011350X
ゲームブックの楽しみ方―ファイティング・ファンタジー (現代教養文庫) 文庫 1990/8/1
安田 均 (著)
出版社 : 社会思想社 (1990/8/1)
発売日 : 1990/8/1
言語 : 日本語
文庫 : 216ページ

【※以下ネタバレ】
 

ゲームブックは読むだけでなく、遊ぶものであり、さらには、自分でもそうした作品を作ってみたいと思わずにいられない魅力を持っている。


本書は、ファイティング・ファンタジーの各巻の紹介をしながら、その面白さを根本の部分から探り出そうと試みた。また、各章でのさまざまな分析と巻末のフローチャート図は、シリーズを別の角度からも楽しめるように、そして作品をつくる上でのヒントになるように配慮した。

 

内容

 1980~1990年代に社会思想社から発売されていたゲームブックシリーズ「ファイティング・ファンタジー」シリーズの評論本。ゲーム雑誌「ウォーロック」に1989~90年に掲載された連載「ファイティング・ファンタジーの楽しみ方」を改題して一冊にまとめたもの。


 まず、シリーズ一作目「火吹山の魔法使い」について、敵の強さなどの数値、パラブラフの構成(ストーリーの分岐)、パズル性、等について分析した後、シリーズの以後の作品について

・作品の紹介
・作者は、今までとは違うどのような新しい事を行っているか
・その試みは成功しているか、あるいは失敗したか

といった観点で評論を行っている。


 評論の対象となっているのは、
・「火吹山の魔法使い
・「バルサスの要塞
・「盗賊都市」
・「死のワナの地下迷宮」
・「ソーサリー」四部作
・「さまよえる宇宙船」
・「雪の魔女の洞窟」
・「サソリ沼の迷路」
・「地獄の館」
・「サイボーグを倒せ」
・「フリーウェイの戦士」
・「モンスター誕生」
・「甦る妖術使い」
etc

 と、シリーズのスター作家たち三人「イギリス人のスティーブ・ジャクソン」「イアン・リビングストン」「アメリカ人のスティーブ・ジャクソン」の作品がメインとなっており、他の作品の作家は参考程度に述べられるのみとなっている。

 また「ファイティング・ファンタジーの世界を扱う」という観点で、ゲームブックではない「TRPGファイティング・ファンタジー」や、資料集「モンスター辞典」「タイタン」も評論の対象に挙げられている。


 巻末付録として、以下の作品のフローチャートが掲載されている。
火吹山の魔法使い」「バルサスの要塞」「死のワナの地下迷宮」「さまよえる宇宙船」「サソリ沼の迷路」「地獄の館」「サイボーグを倒せ」「フリーウェイの戦士」「モンスター誕生」「甦る妖術使い」


感想

 タイトルだけ見ると、どういった本なのか全く分からないのですが、ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズを徹底的に掘り下げた評論本です。

 FFシリーズについては「感想」「リプレイ」「攻略」といった物は色々見た事がありますが、このような「評論」についてはおそらくこの本が唯一の物でしょう。


 火吹山の技術点とサイコロの目の出やすさの数値的な解説から始まって、

・ジャクソン(英)が「バルサスの要塞」で盛り込んだ魔法の狙い
・リビングストンが世界観を膨らませる方向に進んだ
・ジャクソン(米)が「サソリ沼の迷路」で双方向迷路にした理由
・ジャクソン(英)の「さまよえる宇宙船」は新ルール入れすぎ、ストーリー薄すぎ

 といったことを作品毎に色々と分析しています。


 もちろんこれらは全て著者の安田均氏の考えであり、二人のジャクソンやリビングストンたちが本当にそういうつもりで書いたのかどうかは解りませんが、読んでいて色々と納得させられるものがあったのもまた事実ですね。

 そして、FFシリーズは20巻台までは、ゲームシステムや世界観などで色々試行錯誤があったものの、世界観の資料集「タイタン」が発行されて以降は、タイタン世界物メインになっていったのだ云々、という説明には、ああなるほどと感じさせられました。

 ちなみに、この本が発売された1990年夏というのは、ゲームブックブームはとうに過ぎ去っていて、FFシリーズの発売もほぼ停止状態となっており、翌1991年に33巻「天空要塞アーロック」を思い出したように発売して本当に打ち止めになってしまったので、そのあたりの事を考えながら読むと、色々と複雑な気分になれました……(涙)

 まあ、とにかく、やや固い内容ではありましたが、FFシリーズに興味がある人間には楽しく読めた一冊でした。
 

おまけ

 アマゾンに書影が無いのが残念…… 表紙は米田仁士氏の絵なのですが、いつもの米田ファンタジーイラストにプラスしてジャクソン&リビングストンの似顔絵が描かれていて、なかなか良い感じの絵なのに……
 
 

2021年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
火吹山の魔法使い ファイティング・ファンタジー (現代教養文庫)
バルサスの要塞-アドベンチャーゲームブック (2)