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幻のユニコーンクエスト 単行本 1988/2/1
スティーブ ジャクスン (著), ガイ・W. マクリモア (著), ハワード トムプスン (著), 西村 ヒロユキ (翻訳), 佐脇 洋平 (翻訳), 和泉 文子 (翻訳), すざき あきら (翻訳)
出版社:ホビージャパン (1988/2/1)
発売日:1988/2/1
単行本:166ページ
★★【以下ネタバレ】★★
本書は、“ファンタジートリップ”シリーズを1冊の本に編集したものです。この本に含まれる7つのシナリオストーリーは、それぞれが独立して楽しめるゲームでありながら、これらが結合して“ファンタジートリップ”ロールプレイング・システムになっていきます。すなわち、この「プログラムド・システム・アドヴェンチャー」は、ファンタジーの物語、世界の設定からこれを「体験」すべく、シミュレーション・ボードゲーム、さらに、「ファンタジーマスター」と呼ばれる「進行役」を置くことで、本格的なロールプレイング・ゲームへと発展させることのできる、驚異的なシステムをもっているのです。
以前にも本書「幻のユニコーンクエスト」(スティーブ・ジャクソン他/1988年)の感想を書いたことがあったのですが、
↓
【TRPG】感想:ゲーム書籍「幻のユニコーンクエスト」(スティーブ・ジャクソン他/1988年)
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2023/05/07/230235
書くべき内容を上手く整理しきれないままだったので、今から見直すと恥ずかしい限りのため、改めて内容を整理してみました。これが完全版です。
内容(概要)
アメリカの「メタゲーミング社」から発売されていたファンタジーTRPG「ファンタジー・トリップ」のルールやシナリオをまとめた本。
『ファンタジー・トリップ』は、戦士や魔術師が戦うボードゲーム「メレー」「ウィザード」をベースに、あとからシナリオを追加してTRPGとしたもの。プレイには「メレー」と「ウィザード」が必須で、あとは様々なシナリオと組み合わせることで色々な冒険を楽しむことが出来る。
本書は以下の内容が収録されている。
・ゲーム「メレー」ルール
・ゲーム「ウィザード」ルール
・メレー/ウィザード用ゲーム盤(折り込みの紙)
・メレー/ウィザード用ユニット(厚紙に印刷された戦士やモンスターなど。ハサミで切り離して使用する)
・シナリオ5本
・シナリオで使用する地図
内容(詳細)
●ゲームルール
・「メレー」
「メレー」は戦士キャラクターを作成し、付属のゲームボード(六角形のマス目が書かれた紙)を競技場に見立ててモンスターなどと戦うゲーム。規定のポイントを能力値に割り振ってキャラを作り、武器や防具を装備させ、剣や弓などで敵と戦う。
・「ウィザード」
「ウィザード」は「メレー」の姉妹作で、魔術師キャラクターを作成しモンスターなどと戦うゲーム。様々な魔法を駆使して敵と戦う。
●シナリオ
「メレー」「ウィザード」で作成した戦士・魔術師キャラクターを使って様々な冒険を行うためのもの。戦闘は「メレー」「ウィザード」のゲームボードを使って解決する。
どのシナリオもゲームブックのようなパラグラフ形式となっており、「ゲームブック的に一人でプレイする」「二人で冒険者側と敵側に分かれてプレイする」「三人以上で、一人がゲームマスター役で敵を担当し、残りは一人が冒険者一キャラクターを担当するなど本格TRPG的にプレイする」などの様々な形でのプレイが可能。
1)「滅びの試練 前編 デス・テスト」
ダンジョン探索シナリオ。冒険者たちは、とある都市の領主の親衛隊への入隊試験として、様々な試練が待ち受ける迷宮に挑む。
2)「滅びの試練 後編 デス・テストII」
ダンジョン探索シナリオ。「デス・テスト」の続編。冒険者たちは、より凶悪に改装された迷宮へと挑む、
3)「消えた銀竜を求めて」
屋外冒険シナリオ。探索者たちは姿を消したシルバードラゴンを発見するための旅に出る。
キャラクターは付属のマップの端から捜索を開始し、パラグラフ番号の記入された地点でのイベントで手がかりを入手しつつ謎を解明していく。
メタゲーミング社が企画したリアル宝探しイベント用のシナリオで、ゲーム内の謎を解き、現実のアメリカのどこかに隠されたシルバードラゴン像を発見すると一万ドルがもらえる、という物だった。
4)「幻のユニコーンクエスト」
屋外冒険シナリオ。「消えた銀竜を求めて」の続編。冒険者たちはユニコーンを発見するため冒険に出なければならない。
「消えた銀竜を求めて」同様のリアル宝探しイベント用のシナリオ。現実のアメリカのどこかに隠されたユニコーン像を発見すると一万ドルがもらえる、という物。
5)「聖杯探索」
屋外冒険シナリオ。アーサー王に仕える騎士たちは、王のために「聖杯」を求め次々と旅立っていった。
マップは無し。スタート地点はキャメロット城で、パラグラフの指示に従い、東西南北に位置する村や宿、城などを巡りりつつ手がかりを入手し、聖杯を発見しなければならない。
感想
評価は○(まあまあ)
1970年後半から80年代前半に発売されていた米メタゲーミング社のTRPG「ファンタジー・トリップ」のプレイに必要な物をまとめた書籍。評価はまあまあ。
先述の通り、ファンタジー・トリップは「ボードゲーム+別売りシナリオ」で構成されるTRPGで、現代(2023年)の感覚からすれば、本格的なTRPGではなく、ユーロゲームによくある「ボードゲームにシナリオを付けた物」「TRPG風ボードゲーム」の方がカテゴリー的に近いように感じました。
仮に、この書籍の内容で、ルールはそのままでも、「見栄えのするヘクスゲーム版」「プラスチック製の戦士・魔術師・モンスターなどのフィギュア」「バインダーに閉じたカッコイイマニュアル」というコンポーネントに作り替え、とどめで大きな箱に詰めれば、意外と現代でも通用するのでは? という気がします。
逆に、この本の内容で本格TRPGとしてプレイするのはかなり難しいでしょうね。システムの中核は戦闘ボードゲームのため、TRPGと称しつつ、ほぼ戦闘についてのルールしかないですから。罠の成功失敗の判定とか、その他戦闘以外については全て自分で考えて解決しなくちゃいけないという……、それとも当時のファンタジーTRPGは、およそこんな感じで、戦闘ルールだけで成立していたのかな?(良く分からない)
各シナリオの感想は
1)「滅びの試練 前編 デス・テスト」
2)「滅びの試練 後編 デス・テストII」
どちらもダンジョン探索シナリオ。とにかく出てくる敵を打ち倒してひたすら前に進み出口を目指す、という勇ましい内容。まあ戦闘ボードゲームの拡張としては正当な方向という印象です。
どちらも屋外冒険シナリオ。ヘクスで区切られた平野・山・川・湖などがあるマップを端から進んでいきイベントを解決するという内容で、よりボードゲームに近い感じです。
ただし、この二つのシナリオには重大な問題があります。どちらも「謎解き宝探しイベント」用に作られているので、ゲーム中のキャラクターからは謎めいた言葉や暗号や地図の情報が手に入るだけで、ストーリーに明確なゴールがありません。つまり「全ての陰謀の根源である邪悪な魔術師を倒してハッピーエンド」というような結末に収束しないのです。結論:プレイするだけ無駄です(断言)
まあ「宝さがしイベントのシナリオとはどんな内容なのか見てみたい」というのなら、まだ意味がありますけど……
5)「聖杯探索」
屋外冒険シナリオ。地図は無く、パラグラフに「キャメロットから北に1日で村、南に5日で城、東に(以下略)」とか書いてあるのを読み、自分の行き先を決め、目的地で情報を集めたりイベントに遭遇したり、を繰り返していきます。
そして、悪徳領主を懲らしめたり、誘拐された貴婦人を救出したり、民を困らせる悪党を退治したり、と、騎士らしい働きをしなくてはなりません。聖杯の隠し場所はほどなく見つかるでしょうが、騎士らしい行いをしていないと聖杯は手に入りません。
安っぽくはあるものの、それなりに遊べました。
まとめ
今となっては、というか当時でも本格的TRPGとして遊ぶには不完全すぎの内容で、日本ではすぐ忘れられたのも納得ですが、「懐かしいオールドボードゲーム」と考えれば悪くないかという気はします。
それにしても、現在は普通に「ボードゲームでファンタジーTRPG風の体験ができるゲーム」が沢山あるわけで、本書はその先駆けというか遠い祖先の様に思え、40年も前にすでにこういう物があったのかと思うと、ちょっと不思議な感覚になりますね。