【TRPG】感想:ゲーム書籍「幻のユニコーンクエスト」(スティーブ・ジャクソン他/1988年)

幻のユニコーンクエスト

●2023/06/02追記

内容を完全改定しましたので、できればこちらもお読みください<(_ _)>

TRPG】感想:ゲーム書籍「幻のユニコーンエスト」(スティーブ・ジャクソン他/1988年):感想完全版
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2023/06/02/190340

perry-r.hatenablog.com



以下がオリジナルの内容です。
 

http://www.amazon.co.jp/dp/4938461293
幻のユニコーンエスト 単行本 1988/2/1
ティーブ ジャクスン (著), ガイ・W. マクリモア (著), ハワード トムプスン (著), 西村 ヒロユキ (翻訳), 佐脇 洋平 (翻訳), 和泉 文子 (翻訳), すざき あきら (翻訳)
出版社:ホビージャパン (1988/2/1)
発売日:1988/2/1
単行本:166ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

本書は、“ファンタジートリップ”シリーズを1冊の本に編集したものです。この本に含まれる7つのシナリオストーリーは、それぞれが独立して楽しめるゲームでありながら、これらが結合して“ファンタジートリップ”ロールプレイング・システムになっていきます。すなわち、この「プログラムド・システム・アドヴェンチャー」は、ファンタジーの物語、世界の設定からこれを「体験」すべく、シミュレーション・ボードゲーム、さらに、「ファンタジーマスター」と呼ばれる「進行役」を置くことで、本格的なロールプレイング・ゲームへと発展させることのできる、驚異的なシステムをもっているのです。

 

内容

 メタゲーミング社のTRPG「ファンタジー・トリップ」のルールとシナリオ5本を一冊にまとめた物。

 以下の内容が収録されています。

・「メレー」
  付属のヘクスマップを使った戦士用戦闘ルール。


・「ウィザード」
  付属のヘクスマップを使った魔法使い用戦闘ルール。


・「滅びの試練 前編 デス・テスト」
  シナリオ。ダンジョン探索。


・「滅びの試練 後編 デス・テストII
  シナリオ。ダンジョン探索。「デス・テスト」の続編。


・「消えた銀竜を求めて」
  シナリオ。屋外の冒険。


・「幻のユニコーンエスト」
  シナリオ。屋外の冒険。


・「聖杯探索」
  シナリオ。屋外の冒険。円卓の騎士たちの物語。


 シナリオは全てパラグラフ形式でソロプレイ可。また「冒険者側と敵側」に分かれての二人プレイ、さらに「冒険者一人を一人が受け持ち、敵側をマスターが担当」という完全にTRPGとしてのプレイも行えます。


 「消えた銀竜を求めて」と「幻のユニコーンエスト」は、アメリカで発売された際、シナリオに隠された手掛かりを解いてリアルに隠されている宝物を見つけ賞金を手に入れる、という企画と連動していたとのこと。


 本書に収録されている内容のうち幾つかは、当時ホビージャパンから発売されていたゲーム雑誌「タクテクス」に付録ゲームとして収録されていました。

・40号(1987年3月号)…「メレー」と「デス・テスト」
・46号(1987年9月号)…「ウィザード」と「デス・テストII


感想

 評価は△(読み辛過ぎ……)

 1988年1月頃、つまりTRPGの大ブームが到来する前夜的な時期に発売されたTRPG本ですが……、これはちょっと評価が辛くなるざるを得ない……


 本書は発売された1988年に速攻で入手したのですが、あまりに期待外れだったので(多分)そのまま捨ててしまいました。しかし最近1980年代のゲームブックをコツコツプレイしている関係で、本書もやたら懐かしくなったため再購入を決意したのですが……、なんと信じられないことに古本は最低でも一万数千円、高いところでは二万円超え、という仰天価格がついていたのでした! 元々の価格が1800円なのに! 

 しかし、先日なんと3000円という納得リーズナブル価格で発売されているのを発見し、ホクホクしながら購入しました。


 という事で、35年ぶりに読み直してみたのですが、うーん、やっぱりこれはちょっとなぁ……

 まず、内容紹介であげた七つの内容は全く関連しておらず「簡単なところからはじめてステップアップして高度な内容へと進んでいく」というような配慮は一切見当たりません。またいかにも英語を翻訳しましたという感じのとっつきの悪い文章、見通しの効かない構成、用語の索引が無いなど配慮に欠けている、etcetcと、とにかくTRPGのルールブックとしてはもう落第レベルなのでは、という出来でした。



●ファンタジートリップとは何か

 しかし「ファンタジー・トリップ」の歴史を調べてみるとその理由が解ってきました。

 メタゲーミング社(1974年~1983年)は、マイクロゲーム(MicroGame)という定価約3ドル(当時のレートで約550~600円)の安価なファンタジー/SFボードゲームのラインナップを持っていました。そしてその中に含まれていたのが「メレー」と「ウィザード」で、つまり、この二つは当初はTRPGの戦闘ルールではなく単独でプレイできるファンタジーシミュレーションゲームとして売られていたのです。

 その後、メタゲーミング社は「メレー」と「ウィザード」を拡張するセット「イン・ザ・ラビリンス」(In the Labyrinth)を発売し、ここにTRPG「ファンタジー・トリップ」(The Fantasy Trip)が誕生しました。続いてメタゲーミング社はファンタジー・トリップ用のシナリオ「MicroQuests」を発売しました。



●ごたまぜの理由

 と、ここまで調べると「幻のユニコーンエスト」の内容がこうなのかようやく理解できました。つまり「メレー」と「ウィザード」がウォーゲーム顔負けの複雑なルールなのは元々単体でプレイするシミュレーションゲームとして発売されていたからで、七つの要素がそれぞれまるで関連が無いのも最初から七つの別の商品だったからです。

 ホビージャパンは、七つの商品を単にひとまとめにぶち込んで、相互に連携させるような配慮も一切せず、読者が困惑するだろうことも考慮せずに、この商品を出したわけです。なんてことだ。多分メタゲーミング社のゲームの権利を持っていたから、それでちょっと稼いでやろう、と、雑な編集だけでこの本を出したのではないでしょうか。憶測ですけど。



●謎の解説文

 こうして「ファンタジー・トリップ」のなんたるかが理解できると、今まで意味不明だった雑誌のコピーが何を言いたいのかようやくわかりました。
 

本書は、“ファンタジートリップ”シリーズを1冊の本に編集したものです。

 
 確かにそうだ。ばら売りされていた物を集めたわけですから。
 
 

この本に含まれる7つのシナリオストーリーは、それぞれが独立して楽しめるゲームでありながら、これらが結合して“ファンタジートリップ”ロールプレイング・システムになっていきます。

 
 「メレー」と「ウィザード」は単体でもプレイ可能で、さらにそれらを合体させてTRPG「ファンタジー・トリップ」が作られた、という事を言っています。なるほど。
 
 

すなわち、この「プログラムド・システム・アドヴェンチャー」は、ファンタジーの物語、世界の設定からこれを「体験」すべく、シミュレーション・ボードゲーム、さらに、「ファンタジーマスター」と呼ばれる「進行役」を置くことで、本格的なロールプレイング・ゲームへと発展させることのできる、驚異的なシステムをもっているのです。

 
 驚異的かどうかはさておき、元々シミュレーション・ボードゲームだったものに、シナリオを付加して、ソロプレイできるゲーム、さらにゲームマスターを必要とするTRPG、と発展させたという事を言っている訳です。


 しかし、これらの文章はファンタジー・トリップの誕生の経緯を知らないと全く意味不明ではないですか(嘆き)



●ファイナルコメント

 正直言って、2020年代の読みやすいゲーム本に慣れていると、本書のとっつきの悪さはもう衝撃的ではありますが、ある種の郷愁と言うのを感じるので、3000円ならまあ買って悪いことはなかった、という評価です。他の人にお勧めはしませんけどね。