http://www.amazon.co.jp/dp/B0CBYRFVJ4
エポック社のワールドウォーゲーム 砂漠の狐 トブルク41
※雑誌の書影が無いため、北アフリカ関係のウォーゲームの写真で代用しております。ご了承ください。
前書き
先日、1980年代初頭の古いウォーゲームについて調べようと、ホビージャパンのゲーム雑誌「タクテクス」を本棚の奥から引っ張り出して読んでいたら、2号だけが無いことに気が付いた。30年ほど前にすべてを買いそろえたと思っていたのだが、一冊だけ購入せずに忘れていたのである。
多分当時は「隔月時代のTACは面白くないから一冊くらい欠けていてもどうでもいいや」とか思ったに違いないが、さすがにこの歳になって一冊だけ欠けたコレクションを抱えているのに我慢できず、さっそくネットで検索。二千円もしないお手頃価格で見つかったので速攻購入した。ゲームブックみたいに一冊5万円もしたらどうしようかと思ったが良かった良かった。
内容
●特集 ビギナーのための北アフリカ作戦
・1941~42年史実概説「砂と鉄と星」
・ドイツアフリカ軍団の攻防
アバロンヒル「ドイツアフリカ軍団」作戦分析。ジェネラル誌抄訳
・バトル・レポート 砂漠の狐
エポック社「砂漠の狐」リプレイ
<コメント>
ジェネラルの抄訳などお堅い内容。
●魔法の島は最高
ジェネラル誌抄訳。アバロンヒル「魔法の島の戦い Wizard's Quest」作戦研究的な記事。
<コメント>
翻訳記事らしくさっぱり面白さが伝わってこない内容。ちなみに英語タイトルは「ウィザーズ・ベスト」で、ゲーム名「ウィザーズ・クエスト」の洒落である。
●“JABRO” REPLAY 追撃トリプル・ドム
ツクダホビー初のガンダムウォーゲーム「ジャブロー戦役」のリプレイ。ガンダム&ガンキャノン&ガンタンク対ドム三機の戦い。
<コメント>
ガンダムゲームの記事が、アバロンヒルゲームと同じレベルで扱われていることに驚かされる。まだまだウォーゲームが黎明期だったからか、ジャンルにかかわらず同じ熱量で扱われていた模様。
●初心者のためのABC-1 シミュレーションゲーム入門
連載一回目。シミュレーションゲームはルールが重要。他社のルールブックはアバロンヒル公認日本語版などとうたっているがアバロンヒルに日本語がわかる人間がいないのだから公認も何もない。ルールブックは随時更新される。ホビージャパンはそのたびに交換に応じるが、他社はそんなことはしない。
<コメント>
要するに、この当時ウォーゲームを扱うライバルだった木屋通商のルールは信用できないということを二ページかけて訴えているプロバガンダ記事。
●付録ゲーム「シェルブール攻防戦」
1ページのマップ+4ページのルールのミニゲーム。マップはコピーし、ユニットは厚紙で自作してプレイしてほしい的なゲーム。デザイナー名は不明。
<コメント>
これは正直驚いた。隔月TAC誌の付録ゲームは「ドイッチュラント・ウンターゲルト」があまりにも有名だが、それ以前、すでに2号の時点で付録ゲームがあったとは。
●大陸軍(ラ・グラン・ダルメ)、その光と影
連載1回目「その1、ナポレオン以前」。ナポレオニックゲームを楽しむためゲーマーにナポレオン時代の諸々をレクチャーするための連載。初回はフリードリヒ大王時代の戦争について。
<コメント>
TAC誌の名物連載の初回。この連載に感化されてナポレオニックにはまった人も結構いたのでは?
●アバロンヒル コンピューターシミュレーションゲームの実際
ジェネラル誌抄訳。アバロンヒルのパソコンゲームの紹介。ウォーゲーム「NORTH ATRANTIC CONVOY RAIDER」「THE MIDWAY CAMPAIGN GAME」。SF資源開発ゲームゲーム「PLANET MINERS」。テキストAVG「LOROS OF KARMA」紹介。
<コメント>
黎明期のパソコンゲームの紹介。1981年ころのゲームなので本当に黎明期のゲームたち。アバロンヒルが戦争シミュレーションはともかく、ファンタジーテキストアドベンチャーを作っていた事実に心底驚かされる(まあファンタジーRPG「テレンガード」を扱っていたくらいなので、同じ流れだったのか)。ちなみに誤植があり「LOROS OF~」ではなく「LORDS OF~」である。
●内外ゲームガイド
・SPI「潜水艦の戦い Up Scope!」
・アバロンヒル「日米航空母艦の戦い Flat Top」
・アバロンヒル「マキャベリ Machiavelli」
・ツクダホビー「激戦! ア・バオア・クー」
・アバロンヒル「日本武将の戦い Samurai」
<コメント>
黎明期感が半端ないラインナップ。
●クリークス・シュピール通り
雑情報コーナー。
・キャンパスライフ 紹介
同人ゲーム。慶応HQシミュレーションゲームクラブのメンバーが制作。大学生の四年間の学生生活、試験、バイト、合宿、ゼミ、ガールフレンド、その他もろもろを四時間で体験する。
<コメント>
これこそのちにツクダホビーのマクロスゲームに「マクロスライフ」として収録されるあのゲームの原型である。写真を見る限りヘクスマップがあったりするが、発想そのものはのちのコンピューターゲームの恋愛シミュレーションなどを先取りしている。1981年ころにこのゲームを思いついたというのは驚嘆するほかはない。
・エポック=レックカンパニーからのお知らせ
池袋西武百貨店で月一でシミュレーション講座を開いて対局指導を行っています。
<コメント>
信じ難いことだが40年前には「シミュレーションウォーゲーム」は「講座」で教えてくれるものだったのである。ある意味夢のような時代だった。
●編集後記
ウォーゲーム人口の拡大にともなう事務作業の増加に追い付けていない。編集部に電話してくるのはやめてほしい。
<コメント>
まさに黎明期の、若い世代の愛好者が爆発的に増加して上り調子だったことをうかがわせる内容。その後、わずか五年で衰退業界になるとこの時誰が予測しえただろうか?(溜息)
ファイナルコメント
正直、雰囲気が非常に硬く、読んでいて楽しいという雑誌ではなかった(月刊化以降の柔らかい内容を知っていると余計に)。とはいえ当時のゲーマーはこの雑誌をむさぼるように読んでいたのだろうとも思う。「夏草や兵どもが夢の跡」という言葉が脳裏にちらついて仕方ない。