【ゲーム】感想「EVE burst error R」[Nintendo Switch](2018年)【クリア】

EVE burst error R

EVE burst error R
https://el-dia.net/eve/

el-dia.net
★★【以下ネタバレ】★★
 

EVE burst error R (イヴ バーストエラー アール)
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000014281.html

デジタルリマスターした「EVE burst error R」が、Nintendo Switchに登場!


EVE burst error R」は、マルチサイトシステムを採用したコマンド選択式のアドベンチャーゲームです。プレイヤーであるあなたは「小次郎」と「まりな」2人の主人公を操り、物語の謎を次々と解き明かしていきます。一方は美術品の捜索、もう一方は要人警護‥‥と、当初2人の主人公はまったく別々の事件をそれぞれ追いかけます。彼らは時にすれ違い、また時には助け合いながら、その天才的な判断力と行動力で、事件の真相に迫ります。

 

概要

 2018年発売のミステリー系アドベンチャーゲーム。2016年にWindowsPSVita用に発売された作品のNintendo Switch移植版。オリジナルは1995年に発売されたパソコン用(18禁)ゲーム「EVE burst error」で、その後セガサターンPS2等に次々と移植された作品の最新バージョン。

あらすじ(序盤)

 199X年12月。私立探偵「天城小次郎」は独立開業したものの三か月間仕事が無く時間を持て余していたが、資産家「孔」から、屋敷から紛失した絵画を探すという仕事を依頼され、早速調査に乗り出す。同じ頃、政府の一級エージェント「法条まりな」は、中東エルディア共和国の駐日大使の一人娘「御堂真弥子」を不審者から護衛するという任務を与えられる。

 全く関係のないはずの二人の物語は、しかし実は意外な形でつながりが有る事が徐々に判明していく……


ゲームジャンル/システムなど

 アドベンチャーゲーム

 コマンド選択式で「見る」「話す」「調べる」等の少数のコマンドを選択するだけでストーリーが進行する、詰まりややり直しは発生しないタイプ。

 「マルチサイト」という、二人の主人公の物語が全く別々に進行するシステムを使用しており、プレイヤーは「小次郎サイド」「まりなサイド」を全くの別のゲームとしてプレイする。ただし片方のストーリーが途中で進行しなくなった場合に、もう一人のサイドに切り替えてプレイするとフラグが立って進めるようになる、という作りで、結果として両サイドの主人公のストーリーを交互にプレイするという構成となっている。

感想

 評価は◎(29年ぶりにプレイしても傑作)

 プレイ時間:約36時間50分。

 本作は、今を去る事29年前の1995年にオリジナルの「EVE burst error」(PC-9801版)をクリアして、そのとき大絶賛したのですが(その時のテキストはもう無い……、口惜しい)、今年改めて本作をプレイしたところ、既にストーリーをすっかり忘れてしまっていたのですが、約30年前のゲームなのに古さを感じる事もなく30時間超のプレイをひたすら楽しむことができました。

 若いころにプレイして圧倒されたゲームは、今プレイしても傑作でした! 思い出が美しいままに蘇ってくれて本当に嬉しい……(感涙)


 本作は1990年~1996年頃に頂点を極めた(と思う)「ストーリー主導型アドベンチャーゲーム」の最高峰で、フラグ立てのわずらわしさを最小限に抑え、ひたすらストーリーを魅せることに特化した作品です。その作りから、もはや「ゲーム」という感覚は希薄ですが、映画や小説と同様にストーリーを楽しませてもらうメディアと考えれば、これはこれで十二分にありですね。

 本作は、オリジナル作品をグレードアップしていて、ユーザーインターフェースを今風の仕様に作り直し、グラフィックはデジタルリマスター化、という要素もそこそこは嬉しいのですが、何よりオリジナル原画家の田島直氏を21年ぶりに起用して追加絵を描いてもらっているのがポイントが高かったです。まあオリジナルから21年経っているのでもう昔の絵柄とは全然違ってしまっているのですが「オリジナル絵の人」を連れてきてくれた、というエルディアのこだわりは嬉しかったですね。


 さて、この作品の魅力はなんといっても、すぐに作品世界に引き込まれてしまう、絶妙に作りこまれたストーリーでした。片や無頼の私立探偵が消えた絵画を探すミステリー物、片や凄腕エージェントが正体不明の敵から重要人物を護衛するスパイアクション物、とタイプは違うものの、どちらもめっぽう面白く、意外な展開が次から次へと発生するので、プレイを止めるタイミングがつかめ無いほどの面白さでした。

 また、ストーリーは基本はシリアス風味ですが、1990年代に流行った冗談要素もそこかしこに用意されており、選択できるコマンドに唐突に「壁を殴る」「おしゃれなバーで牛丼を注文する」「床で寝る」「往来で服を脱ぐ」といったトンチキなものが出現するのが愉快の一言。

 しかもそれらを選択すると、周囲のキャラが主人公の奇行にツッコミを入れたり、または主人公がプレイヤーの選択に対して愚痴をこぼしたり、と軽妙な感じの反応が返ってくるので、これらを選んでみるのは実に楽しい体験でした。しっかし「屋上から飛び降りる」を選んだ時の展開には焦ったなぁ(笑)


 しかも、小次郎とまりなのそれぞれストーリーだけでも十分に堪能できるのに、さらにマルチサイトというシステムがその面白さを倍増させてくれていました。二人の主人公のそれぞれの視点で別々の物語を進めるという作りは、序盤は両者は同じ町に住んでいるというだけで全く接点は無く、あまり意味を感じません。

 ところが話が進んでいくと、やがて片方の主人公が行った行動がもう一方のキャラクターの行動に影響を与える、といった展開が増えていき、マルチサイトというシステムを使った意味がどんどん発揮されていくため随所で唸らされることになりました。

 特に両サイドのキャラが同時に協力してデータベースのセキュリティ突破を試みる有名な場面では、それこそ数コマンド毎に両サイドを頻繁に切り替える必要があり、その緊迫感に「これこそマルチサイトだ!」と感じさせられ、そのプレイ体験にはゾクゾクさせられましたね。

 さらに、当初は全くつながりのなかったはずの二つの物語が、最終的にエルディアの次期王位を巡る一つの大きな流れに集約する展開は見事でしたし、クライマックスの沈没した客船内での密室劇、回想の形で語られる予想外の真相、そして感動の結末へ、という流れは圧巻の一言でした。この作品について、29年前に絶賛したことも、今でも伝説の作品として語られていることも、その後フォロワー作品が続出したことも、全て納得いくものでした。

 あと地味な要素ですがBGMが実に素晴らしく、クリア後にミュージックモードで色々な曲に聴き惚れてしまうほどでした。絵も良い、話も良い、音楽も良い、最高ですね。

 プレイする前は「一度クリアしたゲームを、再度時間をかけてプレイし直すのは無駄ではないか?」とか考えたりしたのですが、そんな考えは大間違いでした。再度プレイしてこの作品の素晴らしさを再認識できて、そして「ねぇ、笑って?」というあの場面を再体験出来て、本当に良かった。大満足です。

キャスト

天城小次郎 子安武人
法条まりな 三石琴乃
桂木弥生 本多知恵子
プリン 水谷優子
御堂真弥子 堀江由衣
氷室恭子 松井菜桜子
甲野本部長 野沢那智
鈴木源三郎 大塚明夫
柴田 茜 かないみか
シリア・フラット 高乃麗
ロス=御堂 若本規夫
二階堂進 上田祐司
アクア 田中敦子
香川美純 渕崎ゆり子
松乃広美 むたあきこ
 
 

あらすじ(完全ネタバレ)

 199X年12月。私立探偵「天城小次郎」は独立開業したものの三か月間仕事が無く時間を持て余していたが、資産家「孔」から、自宅から紛失した絵画を探すという仕事を依頼され、早速調査に乗り出す。やがて小次郎は訳ありらしい少女「プリン」を事務所で面倒を見ることになった。

 同じ頃、政府の一級エージェント「法条まりな」は、中東エルディア共和国の駐日大使「ロス=御堂」の一人娘「御堂真弥子」を不審者から護衛するという任務を与えられた。当初簡単な仕事と考えていたまりなだったが、真弥子は何者からか本格的に命を狙われ始め、何度も危機に陥る。さらにまりなは、中東で暗躍する正体不明の殺し屋「テラー」が日本に上陸したらしい事を知る。

 小次郎は鋭い推理で孔の屋敷内に絵画が隠されていることを発見し、法外な成功報酬を受け取った。しかし直後孔の屋敷で殺人事件が発生し、殺された人物が本物の「孔」で、小次郎に依頼をした人物は孔を名乗っていた全く別人であると判明する。

 まりなと同じ組織に所属するエージェント「氷室恭子」は、孔の横領疑惑を追っていたが、孔の死と共に調査から外されてしまった。不満を抱く恭子は、孔と関わっていた小次郎に協力を依頼し、こうして小次郎はこの事件に踏み込んでいくことになった。

 小次郎は、解体され今は存在しないはずの旧エルディア情報部の残党がプリンを追っていることを知る。実はプリンの正体は先日暗殺された国王の姪「プリシア」で、次期王位継承候補者だった。また同じころ、まりなもまた旧エルディア情報部が真弥子襲撃に関わっていることを突き止める。真弥子は死んだエルディア国王の側室の娘で、彼女もまたエルディアの王位継承権を持っており、女王となる事を決意していた。

 そしてエルディア新国王の戴冠式が豪華客船トリスタン号で行われることになり、小次郎とまりなはそれぞれ別の方法でトリスタン号に乗り込んだ。小次郎はプリシアを、まりなは真弥子を、それぞれ心情的に支持しており、二人は対立する。だが真弥子は王位争いから身を引き、プリシアがエルディアの女王として即位することになった。

 まりなはロス=御堂が娘の真弥子を国王にするために日本で暗躍していたことを突き止めており、御堂を日本の領海内で逮捕しようとするが、御堂は船内に爆弾を仕掛け乗客を人質に公海へと逃走を図った。しかし御堂もまた何者かに惨殺され、さらに爆弾の爆発により、小次郎・まりな・プリシア・真弥子は船室に閉じ込められた状態で、トリスタン号は沈没してしまった。救助を待っていた小次郎・まりなたちは、船が海溝に転落し始めたため、緊急脱出を試みる。

 実は真弥子は御堂の娘ではなく、それどころか人間ですらなかった。真弥子はエルディア科学陣がプリシアを元に創造した人工の人間「μ-101有機ヒューマノイド」で、彼女には先王の記憶がコピーされていた。先王は暴政で周囲の支持を失い暗殺の危機にあったが、権力を握り続けるため、μ-101に自分の記憶をコピーしてから自身を殺害し、御堂は「先王/真弥子」を再度王にするため暗躍していたのだった。真弥子は自分の記憶がない間に先王が「テラー」として多くの人間を次々と殺害していたと知るが、μ-101は失敗作で、もう死が目前に迫っていた。

 最後。ブリシアはエルディア女王として、今はカプセルの中で眠る真弥子を目覚めさせようとしていた。いつの日にか真弥子が目覚める日が来るのかもしれない。<完>


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