ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BS。
www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
本当の謎は、人間の闇
「エニグマ 究極の暗号機に挑む ~極秘!史上最大の頭脳戦~」(2024年12月13日(金)放送)
内容
ダークサイドミステリー エニグマ 究極の暗号機に挑む 史上最大の頭脳戦
[BS] 2024年12月13日 午後9:00 ~ 午後10:00 (1時間0分)
第二次世界大戦の行方を動かしたドイツの暗号機械エニグマ。解読に挑む連合軍対セキュリティを固めるドイツ驚きの攻防!知られざる暗号解読の世界をわかりやすく徹底解説!
第二次世界大戦の序盤に連勝し続けたドイツ軍。圧倒的な強さの立役者が、究極の暗号機エニグマだ。極秘の暗号で素早く作戦を共有。連携攻撃を次々と成功させた優れた機能の秘密とは?エニグマ解読に挑んだ連合国の天才数学者たち。膨大なデータと鉄壁のセキュリティに隠された、打倒エニグマのヒントとは?エニグマ解読の最終決戦は因縁のライバル、ドイツ対イギリス。勝敗を分けた「人間と暗号が持つ2000年のジレンマ」とは?
●エニグマ暗号機
エニグマ暗号機とは、100年前のドイツが開発した究極の暗号機。
●エニグマ暗号機開発
1923年イギリス。元海軍大臣チャーチルが「第一次世界大戦に勝利できたのはドイツの暗号を解読できたから」という機密をうっかり公開してしまった。
ドイツが戦争中に使った暗号は、ひとつの単語を3桁から5桁の数字に対応させるもので、その対応は「コードブック」という本に書かれていた。そのコードブックが敵に渡れば暗号は解読されてしまうが、ドイツはそれに備え複数のコードブックを用意し、一冊盗まれても他のコードを使えば問題ない、という運用にしていた。
しかし暗号を作るのは人の癖が出るので、結局一冊でもコードブックが盗まれてしまえば、他の暗号もやがて解読されることになった。
そのためドイツは人間的なくせなどを排除するため、完全機械で暗号を作成する「エニグマ暗号機」を開発した。エニグマ暗号機はタイプライター風の機械で、暗号作成に必要な「ローター」という回転部品が三枚用意されている。そしてまずこの三枚の組み合わせ(例えばABC)を設定し、次にキーで人間が文章を打ち込むと、エニグマがローターの設定に基づいて文章を変換してくれる。
受信した側もローターの組み合わせを設定してから暗号を打ち込むと、自動的に平文に変換してくれる。暗号作成も解読も完全自動、しかも軽くてどこにでも持ち運べる、という便利さで、まさしく究極の暗号機だった。
※エニグマのうち一台が2024年の日本に存在しており、所有者が顔出しNGを条件に番組中で動作させる映像が公開された。
●暗号の歴史
暗号の歴史は2000年前の古代ローマにまで遡る。最初期の暗号「カエサル暗号」は、例えば「CAT」を一文字ずらして「DBU」という様に別の言葉にする形式。二文字ずらして「ECV」、三文字ずらして「FDW」にしても良い。ただしこれは解読を試みる側からすれば、アルファベットを一文字ずつ根気よくずらせていけば、いつか必ず解読できてしまう。簡単に作れる暗号は簡単に解読できてしまう、つまりセキュリティに問題が発生してしまう。
その後も色々な暗号が考案されたが、9世紀にすべての暗号を解読する究極の手法が開発された。それは頻度分析法。英語の文章なら、使われる文字はEが一番多く、それ以降はT、A、O、I、……、と続く。そこで暗号で一番多くつかわれる言葉をE、その次をA、と当てはめていけば解読できてしまう。
16世紀、フランスの外交官ブレーズ・ド・ヴィジュネルは頻度分析法に対抗するため、同じEの字でも一個目はX、二個目はK、三個目はI、……という様に変換する暗号を考えた。しかしこれは作るのも読むのも大変すぎて実用性に欠けた。
エニグマはこの「セキュリティ」と「実用性」を両立させた。同じDのキーを押下しても、一回目はBに変換され、二回目はOに変換され、と、何も考えずに複雑な暗号が作成できる。しかも暗号のパターンはローターとフラグコードという部品の組合わせで一京(一兆の一万倍)と天文学的な数となった。
●エニグマ解読その一
エニグマ暗号解読にまず挑んだのがドイツの隣国ポーランド陸軍の暗号解読者たち。ポーランドは歴史的にドイツとの関係が悪かったため必死に解読に取り掛かった。ポーランドは既にエニグマ暗号機のレプリカを入手していたため、解読は容易かと思われたがそうはいかなかった。
エニグマ暗号機は暗号作成のためまずローターの組み合わせを示す三桁のルール(例ABC)を設定し、暗号文にもそのルールを書いて送信する。ところがそのルール自体もエニグマ暗号機で暗号化されていたため、どのルールで解読して良いのかわからかった。
当時ドイツはこの三桁ルールを本文の先頭に二回繰り返していた。受信者が暗号を解読できないと困るのでルールを念のため二回繰り返すという安全策をとっていた。
1932年。数学者マリアン・レイエフスキはエニグマ暗号の規則性を見つけ出そうとしているうち、この冒頭三桁ルールの事を知り、例えば暗号文の冒頭6文字が「TUMOGS」だった場合、「TとO」「UとG」「MとS」は同じ文字になるとひらめいた。それを元に暗号の規則性を調べ、組み合わせを一京から十万にまで絞り込むことに成功。1938年にはエニグマ暗号の9割を解読することに成功していた。
ところが1938年12月頃から突然暗号が解読できなくなっていった。この頃ドイツはエニグマ暗号機のセキュリティ向上のため、ローターを五枚に、プラグコードを10本に、それぞれ増やし、その結果暗号の組み合わせは一京の一万倍にまで増えていたのだった。1939年8月にはエニグマ暗号の解読は不可能になり、その翌月ドイツはポーランドに侵攻した。
●エニグマ解読その二
その後、暗号解読はポーランドからエニグマ暗号機のレプリカを引き継いだイギリスが挑むことになった。イギリスは言語学者、歴史学者、数学者など200人からなる解読チームを編成。しかしドイツ側も1940年5月には暗号解読の手がかりになっていた三桁ルール二回繰り返しを止めてしまい、エニグマ暗号解読はますます困難になった。
数学者アラン・チューリングは機械の力で暗号を解読するため、エニグマ36台分の能力を持つ暗号解読機「BOMBE/ボンベ」を開発し、総当たりで暗号解読を試み、三日で解読できるようになった。しかし解読に三日もかかっては内容が分かっても既に軍事作戦が実行された後で役に立たなかった。
総当たりで解読していては遅すぎるため、何とか人間のくせなどを見つけ出し組み合わせを絞り込むしかない。そんなとき、どこかの発信者が毎朝六時にエニグマ暗号の通信をしていたが、その冒頭は必ず平文で「WETTER」(ドイツ語の「天気」)と書かれていた。
これはノルウェーのドイツ軍からの天気に関する情報の送信だったが、オペレーターが手を抜いて、一目で天気の情報と分かるように冒頭は平文にしていた。ボンベでこの通信の癖を分析することで、暗号解読は一時間でできるようになった。
エニグマ暗号の解読により以後連合軍はドイツに対し有利に軍事作戦を展開できるようになっていった。
感想
ミリタリー好きには超有名なエニグマ暗号機械のエピソードでめっちゃ面白かったです。
でも一つだけ気になったんですけど、エニグマ暗号の平文化に必要な三桁ルールすらエニグマで暗号化したら、その三桁ルールをどうやって解読したんですかね? 三桁ルールを平文に戻すには三桁ルールが必要なのに……、どうやって平文化したのかわからん!?
他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ
索引ページへは以下からどうぞ
この番組について
背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」のスピンオフ!
栗山千明、中田譲治、志方あきこのダークなトライアングル+新登場!池間昌人アナウンサー!
出演者・キャストほか
光と闇のナビゲーター 栗山 千明
語り 中田 譲治
司会 池間 昌人アナウンサー
テーマ音楽 志方 あきこ
2024年度分
暗号機エニグマへの挑戦

エニグマ暗号戦: 恐るべき英独情報戦
