【映画】感想:劇場アニメ「楽園追放 -Expelled from Paradise-」(2014年)

楽園追放 Expelled from Paradise【完全生産限定版】 [Blu-ray]

楽園追放 -Expelled from Paradise-http://rakuen-tsuiho.com/
放送 AT-X。2017年6月18日(日)

【※以下ネタバレ】
 

地球はナノハザードにより廃墟と化した。その後の西暦2400年、大半の人類は知能だけの電脳世界に生きていた。電脳世界に住む捜査官アンジェラは、戦闘力を誇るスーツ・アーハンを身につけ地上に初めて降り立った。そして地上調査員ディンゴと共に地上のサバイバルな世界に旅立った。

 

あらすじ

 未来。人類の大半は、ラグランジュポイントに浮かぶ施設「ディーヴァ」の中で、肉体を持たない電子的な存在として生活していた。しかしディーヴァは最近、まだ生身の人間がわずかに生き残っている地球から断続的にハッキングを受けていた。相手は「フロンティアセッター」と自称し、ディーヴァ市民に向け、外宇宙を探索する宇宙船の乗員になるように呼び掛けていた。

 地球は過去に起きた「ナノハザード」という災厄により荒廃しており、ディーヴァ保安局を出し抜けるようなハッカーがいる可能性はほぼゼロだったが、現実に何者かハッキングを繰り返していた。ディーヴァ保安局は、この呼びかけは何か別の目的の偽装であるとにらんでいた。保安局上層部は、フロンティアセッターのハッキングを技術的手段で防ぐ事は不可能と判断し、直接地球にエージェントを送り込み、フロンティアセッターに対処することを決断する。

 保安局の一員アンジェラ・バルザックは、上層部から作戦への参加を命令されるが、他の参加メンバーを出し抜いて手柄を独り占めにするため、地上での行動用の肉体が成人まで成長するのを待たず、少女の体でいち早く地球に降下する。そして現地協力者であるザリク・カジワラ、通称ディンゴと接触するが、ディンゴはフロンティアセッターに嗅ぎつけられないため、ディーヴァとの通信機器を破壊してしまう。

 アンジェラは、慣れない生身の肉体、ディーヴァと繋がらないオフライン状態、という状態に悪戦苦闘しながらも徐々に地上になじんでいく。やがて二人は何十年も前から何者かが肥料をかき集めていることを知り、肥料を元に酸化剤、つまりロケット打ち上げのための材料を収集していることを突き止める。

 アンジェラたちは肥料に発振器を仕込み、その輸送先にたどりつくが、二人を出迎えたフロンティアセッターとは人工知能だった。かつて、まだ世界が正常だったころ、各国は外宇宙探査プロジェクトを競って進めており、そのうちの一つ「ジェネシスアーク号」の建造用プログラムのバージョンアップの際に、偶発的に自我を持つAIが生まれ、それがフロンティアセッターだった。ジェネシスアーク号にはまだエンジン部分(反応炉)が搭載されておらず、フロンティアセッターは反応炉を打ち上げるため100年間準備を進めていた。

 フロンティアセッターは、無人の探査船を送り出しても意味がないと考えており、そのためディーヴァ市民に探査船に乗るように呼び掛けていただけで、不穏な目的は何もなかった。それを知ったアンジェラは肉体を捨ててディーヴァに帰還し、上層部にフロンティアセッターは無害であることを報告する。ところが上層部はフロンティアセッターが存在する事それ自体が危険とみなし、アンジェラにフロンティアセッター破壊を命じる。アンジェラはそれを拒否したため、収監に相当する「アーカイブ」という状態にされてしまった。

 地上ではロケット打ち上げ基地を目指して、ディーヴァの戦闘部隊が向かっていた。ディンゴとフロンティアセッターはアンジェラがアーカイブされたことを知り、状況を正しく推測し、まずアンジェラをアーカイブから解放した。アンジェラは基地にある最新型ロボット兵器と装備を奪って地球に舞い戻り、元の少女の肉体を再び使用することになった。

 ディンゴとアンジェラはそれぞれフロンティアセッターから、探査船の乗員になるように誘いを受けるが、二人とも拒否する。

 アンジェラとディンゴはディーヴァの戦闘部隊を迎撃し、二人が時間を稼いでいる間にロケットの打ち上げ準備は完了し、フロンティアセッターと反応炉は無事宇宙に旅立った。最後、ディンゴと車に乗っているアンジェラが地上の生活をぼやいていて、一方ジェネシスアーク号が宇宙の彼方に飛び去って行くシーンで〆。


感想

 評価は◎。

 東映アニメーションがフル3DCGで作った劇場アニメ。監督が水島精二ガンダムOO)というのはともかく、脚本が虚淵玄で、しかも電脳がどうこうというテーマらしいと聞き、「多分これは陰気くさいアカン系の映画でしょう」と全く期待せずに見たら……、なんとビックリ! 面白かったじゃん! 虚淵たんもやる時にはやるじゃん!


 背景設定は、地上が「ナノハザード」という何かで壊滅して、人間の大半は宇宙ステーション・ディーヴァの電脳世界で暮らしており、生まれるとすぐ意識を電脳世界に移してしまう、という物。

 電脳世界では、当然飢えも無ければ病気にもならないのでパラダイス、という建前ですが、社会的地位で割り当てメモリが決まっており、偉い人はメモリをふんだんに使えるので豪勢な暮らしができるものの、逆に地位が低いとカツカツの生活となり、能力がない社会に貢献できない者は「アーカイブ」と呼ばれる状態にされて社会から抹殺される、という結構シビアな社会です。主人公のアンジェラは、メモリ割り当ての拡大を目指して、一心不乱に出世を目指すという上昇志向キャラという役柄。

 この辺りの「表向きは楽園だが、現実はそんな甘いものではない」という設定は、やろうと思えばいくらでも暗い方面に転がせるネタですが、虚淵たんは水島監督に釘を刺されたのか、この辺りは軽く流しています。良かった。

 アンジェラの相方となるディンゴは、三木眞一郎声のいい感じのお気楽キャラで、能力がありながらディーヴァ行きは望まず、「メモリ割り当てのためにがつがつ生きていくのは御免さ」とアンジェラに反論します。このあたりも、先とは逆に「肉体を持つのは素晴らしい!」とか説教しに来なかったのも好印象でした。


 あとは肌が露わな美少女キャラ・アンジェラ(声はくぎみー)が巨大ロボットに乗り込んで、宇宙や荒野でバトルバトルまたバトルというオタク好みの展開で盛り上げたし、最後は「ロケットの打ち上げ」というどんな人間でも大抵感傷的になれるシーンでオチを付けたし、と、娯楽作品として綺麗にまとめていました。いやはや、日本の劇場アニメでもこのレベルの逸品が作れるのか、と感服いたしました。これはホント良かった。

 水島&虚淵コンビ、実に良い仕事ぶりでしたよ(親指を立てるポーズ)。


一言メモ

 声優はメインの三人以外に、林原めぐみ高山みなみ三石琴乃古谷徹などがキャスティングされていて、いったいどこに出ていたの?と驚きましたが、答え合わせをすると

林原&高山&三石 → 終盤にロケットを襲いに来た戦闘部隊の女性兵士たち
古谷徹 → 冒頭でアンジェラをナンパした男

だそうです。声優の使い方が豪華だよねぇ。こういうのはカメオ出演とでもいうべきですかね?

楽園追放 -Expelled from Paradise-


<スタッフ>
原作:ニトロプラス東映アニメーション 
監督:水島精二 
脚本:虚淵玄ニトロプラス
演出:京田知己 
キャラクターデザイン:齋藤将嗣 
プロダクションデザイン:上津康義 
メカニックデザイン石垣純哉/齋藤将嗣/柳瀬敬之/石渡マコト(ニトロプラス
スカルプチャーデザイン:浅井真紀
グラフィックデザイン:草野剛 
設定考証・コンセプトデザイン:小倉信也


<キャスト>
アンジェラ・バルザック 釘宮理恵
ディンゴ 三木眞一郎
フロンティアセッター 神谷浩史
林原めぐみ
高山みなみ
三石琴乃
古谷徹
三宅健太
遠藤大智
稲葉実
江川央生
上村典子

 
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