インディ・ジョーンズ・シリーズ幻の4作目とは?
「インディ・ジョーンズ」シリーズは、ハリソン・フォード主演の冒険活劇映画で、考古学者(というより冒険家だ)のインディアナ・ジョーンズが、世界各地の様々な秘宝を巡って大活躍する痛快娯楽シリーズです。
ラインナップは
1.「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」 RAIDERS OF THE LOST ARK 1981年
2.「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」 INDIANA JONES AND THE TEMPLE OF DOOM 1984年
3.「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」 INDIANA JONES AND THE LAST CRUSADE 1989年
4.「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」 INDIANA JONES AND THE KINGDOM OF THE CRYSTAL SKULL 2008年
と4作品ありますが……
実はこの中に含まれていない「幻の4作目」が有ることをご存知でしょうか。その名は「Indiana Jones and the Fate of Atlantis」(以下Atlantis)。
「Indiana Jones and the Fate of Atlantis」とは
「Atlantis」は、「最後の聖戦」の3年後の1992年にアメリカで発表されているのですが、よほどのインディ・ファンでないと、この名前は知らないと思います。というのも、この作品は映画ではなく、「ゲーム」という形で発売されたからなのですね。プレイヤーがインディを操って秘宝を求めて冒険するというAVGなのです。
もっとも、ケームだからといって、(ファミコン時代のグーニーズとかみたいに)どこかの日本のメーカーが映画を元ネタに、適当に作品をでっちあげて「4作目」と名乗った、という訳ではありません。
このゲームを制作したのは、アメリカのゲームメーカー「ルーカスアーツ」で、会社名を見れば解るとおり、あのジョージ・ルーカスが作った会社です。インディ・シリーズのプロデューサーが関わっている会社のゲームなのですから、もうルーカスお墨付きという訳です。実際、発売された頃は、この作品は「使用されなかった映画の脚本を元に作成した」という様に伝えられていました。
このゲームは1992年に発売されて大好評を博した後、さらに翌1993年には「トーキー版」として、キャラがしゃべりまくるバージョンが発売されました(ちなみにインディの声はハリソンフォードではない)。今でも人気は高く、アメリカではAVGの古典として今でも高く評価されています。
日本語バージョンはFM TOWNS用
「Atlantis」は、1993年に、日本のビクターエンタテインメントがトーキー版をFM TOWNS(エフエム・タウンズ)用に移植し、邦題は「インディ・ジョーンズ アトランティスの運命」として発売されました。
ちなみにFM TOWNSは1989年に富士通が発売したパソコンで、「世界で初めて本体にCD-ROMドライブを標準搭載したマシン」でした。当時はまだソフトウェアの媒体はフロッピーディスクが主流で(ファミコンのカセットのような、とにかく古くて容量の無いものだと思ってください)、CDライブを標準搭載したFM TOWNSは、ゲーマーにとっては羨望の的でした。
当然「アトランティスの運命」はCDで提供されており、音声もばっちり収録されていました。
ちなみに、のちにPC-AT・MAC用も発売され、そちらは微妙にタイトルが違う「インディ・ジョーンズ アトランティスの秘宝」という名前でした。(運命→秘宝)。
あらすじは
ゲームはシリーズ3作目「最後の聖戦」から一年後の1939年が舞台。インディは、ある人物の依頼で、大学の倉庫に眠っていた一つの像を探し出しますが、訪問者は像の中から金属球を取り出すと、そのまま逃げ出してしまいます。実はその人物はナチスドイツのスパイで、金属は伝説の大陸アトランティス由来の超金属「オリハルコン」だったのです。
ナチスドイツは、超兵器を作るためオリハルコンを求めていました。インディはそれを阻止するため、かつて助手だった女性ソフィアと共に、アトランティスを求めて旅立ちます。
ゲームシステム
ゲームシステムは、当時(1990年頃)にルーカツアーツ製作のAVGで標準だった、「キャラクターをマウスで指定して動かしてから、画面下のコマンドを指定して様々な行動をとらせる」というタイプです。
この手のゲームシステムは現在(2017年)にはほとんど見かけませんが、AVG黎明期のシエラオンライン社の「キングスクエスト」シリーズが始め、それ以降アメリカのAVGでは結構よく見られたタイプでした。身近なところでは、ファミコン黎明期の伝説の(?)ゲーム「ミシシッピー殺人事件」(海外ゲームの移植)もこの系列だ、と言えばイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
この手のシステムは、ゲームの進行毎に場面がどんどん切り替わっていくので、「まるで映画の様」というのはほめ過ぎだとしても、主人公視点で絵が表示されるタイプとは違い、小規模ながらドラマ・映画を見ているような感覚にさせてくれます。
ただし、このシステムはキャラクターを自由に動かせるので、自由度は高いのですが、同時に難易度も高くなります。キャラクターにアイテムを取らせたり使わせたりしてゲームを進めるのですが、「そんなところにアイテムを隠されても気が付くわけが無い!」とか「そんな使い方思いつかないよ!」みたいなことを平気で仕掛けて来るからです。
実際、当時のルーカツアーツの作品もご多分に漏れず、難易度がやたら高くてクリアできないという「問題点」が有ったわけでして……、ということで、当時ビクターエンタテインメントは、ゲームと一緒に「ヒント本」も添付してくれていました。つまりヒント本が無いとまともに先に進めないような難易度だったわけですね。
ゲーム展開は
ゲームの展開は、映画でもおなじみのように、インディが美女とコンビを組んで、悪党(今回はおなじみナチスドイツの軍人)たちと争いながら秘宝を目指す、というお馴染みの物です。
ただし、ゲームらしく、途中でストーリーが3つに分岐し「チームコース」「謎解きコース」「アクションコース」のどれかからコースを選択することなります。
「チームコース」は、インディがソフィアと二人で冒険する、という一番オーソドックスな王道の展開となります。二番目の「謎解きコース」はインディ一人きりでパズルに挑むという頭を使うルートとなり、三番目の「アクションコース」はバトルシーン多め、と、それぞれそれぞれ異なった味付けになっています。もっとも、どのルートを通っても、終盤では一つのストーリーに収束するので、マルチエンドではありません。
終盤は、インディが伝説のアトランティスへとたどり着き、ナチスの野望を粉砕したり、アトランティスの神様と色々あったりした挙句、結局アトランティスはまた沈んでしまい、インディは何も手に入れられないものの、美女のソフィアと一緒にニッコリ、というオチとなります。
最後に
さて、この「4作目」ですが、そんなにシナリオが好評だとしたら、そもそも何故映画として撮影されなかったのでしょうか?
その答えはこのあたりにありそうです。
2008/06/28 12:00
4Gamer.net ― ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第2回「インディ・ジョーンズ」シリーズ,真のパート4とは?<後編>
ライター:ジャンクハンター吉田
http://www.4gamer.net/games/050/G005019/20080628001/
1992年頃に発売された海外のゲーム誌には,アトランティスの運命について,ルーカス・アーツの開発者へインタビューした模様が掲載されていた。それによると,
「現在ビデオゲームとして作っている最中の『アトランティスの運命』は,映画『インディ・ジョーンズ』シリーズのパート4として脚本が用意されたもの。映画とゲームのメディアミックスを狙っていたのだ。ただ,映画版はルーカス・フィルムで話を進めていたものの,ハリソン・フォードが『ジョーンズ博士の役目は終わった』と続投を断ってきたことをきっかけに資金が集まらなくなり,制作を断念せざるをえなくなった。しかしジョージ本人がシナリオを気に入っていたので,せめてゲーム化だけでもしようということになった」
のだそうだ。
という裏事情だったようです。
海外のサイトをちらっと見てみると、「映画『クリスタルスカルの王国』より、こっちの方がよっぽど面白かった!」とか書いている人がいたりするし、STEAM版の評価を見ても「非常に好評」だし、「Atlantis」の名作評価は間違いないようです。
難易度的に気楽にプレイできる作品ではないにしても、この作品があんまり知られないままでいるのはちょっと残念な気分です。映画の四作目で期待しまくっていた「クリスタルスカルの王国」の出来が、あんまりにもあんまりのあれもんだけに、余計にねぇ?
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