感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第16話「P.O.W.」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第16話 P.O.W. UNREQUITED

■あらすじ

EP16 P.O.W.
ベトナム戦没者追悼式の開催日。式に出席するはずだった将軍の一人が移動中の車内で射殺された。至近距離から眉間を打ち抜かれているが争った形跡はなく、そこには・・・。

 お題は「見えない人間、政府の陰謀」。


 陸軍の将軍が密室状態の車の中で射殺された。FBIは犯行に関わったと見られる極右組織ライトハンドを捜査し、彼らが1995年(この回の放送は1997年)にベトナムから救出してきた捕虜「ナサニエルティーガー」を容疑者として特定する。ティーガーベトナム戦争で戦死した事になっており、また政府は1973年には米軍捕虜はもういないと公式に発表していた。


 やがてティーガーペンタゴン内部に侵入し、二人目の将軍を射殺した。ティーガーは人間の目には見えないようになる不可思議な能力を持っているらしい。モルダーは、ティーガーベトナム戦争で神出鬼没だったべトコンの様に、人間の盲点に入り込み他人に認識されなくなる能力を会得しているのではと推測する。


 モルダーはマリタ・コバルービアスから、ベトナムに置き去りにされている米軍捕虜の事を隠蔽した三人の軍人の話を聞き出す。ティーガーは自分たちを見捨てた三人に復讐しようとしており、また政府も事実の隠蔽のため三人が死んでくれることを期待し、ティーガーを泳がせているという。さらに三人が全員殺されれば、その責任をスキナーに負わせて失脚させることも狙っているらしい。


 FBIはベトナム戦争戦没者追悼式典で待ち伏せ、モルダーは三人目の将軍を殺しに来たティーガーを射殺した。しかし軍は犯人はティーガーではない別人だとして事件を締めくくり、今もベトナムに残る米軍捕虜の事実は隠蔽されてしまった。



監督 : マイケル・ラング
脚本 : ハワード・ゴードン&クリス・カーター


■感想

 今回は超常現象ドラマというより、ベトナム戦争で見捨てられ置き去りにされた捕虜をテーマにした社会派ドラマ要素の方がメインだったが、それはそれで面白いエピソードとなっていた。日本人にとってはベトナム戦争の捕虜云々は実感の湧かない話題だが、アメリカ人にとっては「ランボー2」などでも扱われているように、身近かつ触れたくないテーマなのかもしれない。


 ティーガーの能力は一種の透明化だが、光を歪めるとか擬態とかいうものではなく、人間の盲点に入り込むことで、目の前に居ても気が付かれない、という物。「盲点」の話を知っていて実験で体験していると、この設定はなんとなくそれらしく聞こえるし、また途中ティーガーに出会った人物が目に異常をきたしていたのも、らしさを強化していた。しかしモルダーが途中で「神出鬼没のべトコンが使っていた力をティーガーも会得したのかも」と言い出したことで、一気に説得力が低下し、ただの胡散臭い魔法みたいな扱いになってしまったのは痛かった。アメリカ人にとっては、べトコンもニンジャ同様「東洋の神秘」でしかないだろうか。


 結局、復讐を実行に移したティーガーは死んだ上に、そもそもいなかったことにされ、復讐相手の将軍は生き延びてしまう、というやりきれない結末となった。ティーガーが死んだシーンで、星条旗がやたらとはためいていたのは、アメリカの正義という物に対する明確な皮肉だったのだろう。ディーガーは、式典で出会った戦友に、未だベトナムに取り残されている仲間のリストを手渡したが、それがどうなったのか気になる結末だった。


■一言メモ

 日本語サブタイトル「P.O.W.」とは「戦争捕虜(Prisoner of War)」のこと。原題の「UNREQUITED」とは「報われない」といった意味。