感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第21話「ゼロ・サム」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第21話 ゼロ・サム ZERO SUM

■あらすじ

EP21 ゼロ・サム
体調不良のスカリーに代わって、モルダーはスキナー副長官に協力を求める。また蜂の研究者の変死事件を追い、絶滅したはずの天然痘ウィルスを媒介する蜂の存在を確信する。

 お題は「殺人ハチ、政府の陰謀」。


 冒頭。小包配送センターの女子従業員がトイレでハチの大群に襲われて死ぬ。直後、スキナーが「モルダー」と名乗って現場に駆けつけ、死体も含めて証拠を隠滅する。実はスキナーは、スカリーをガンから救うため、スモーキング・マンと取引をしており、今回の事件の揉み消しを命令されたのだった。


 モルダーはスカリーがガンの検査入院をしているため、一人で捜査を始めるが、悉く証拠が消失しているため捜査は難航する。一方スキナーも一人で事件を洗い直し、事件現場でハチの巣を見つける。そのハチに刺された人間は新種の天然痘に感染し、数時間で死ぬことが解る。何者かが根絶されたはずの天然痘をより悪性のものに作り変え、さらにハチを使って伝染させようとしているのだ。ハチは小包に入っていて、事故で包装が破れた際に外に出てしまったらしい。しかし、すぺての証拠はスモーキング・マンたちの手で完全に消し去られていた。


 やがて小さな町でハチの大群が住民を襲撃し、刺された人たちが次々と死ぬ。スキナーは、マリタ・コバルービアスと出会い、小包がカナダからこの町に送られた事を知るが、何も話すことは出来ない。モルダーはスキナーが事件に関わっていたことを突き止め、激しく糾弾するが、スカリーの命を助けるためだったと知り、追及をやめる。


 最後、マリタ・コバルービアスが、実はスモーキング・マンの手下だったことがわかるシーンで〆。



監督 : キム・マナーズ
脚本 : ハワード・ゴードン&フランク・スポトニッツ


■感想

 評価は○。


 おなじみ「政府の陰謀」系のエピソードだが、今回はスキナーが主役となり、スモーキング・マンとの取引のせいで窮地に立たされながら事件を追う、という異色の展開となっている。


 冒頭に変死事件が発生した後、いつもならモルダーたちが捜査に乗り出してくるシーンの代わりに、黒ずくめの服装のスキナーが事件の証拠を隠滅して回っている不可解な場面を持ってくることで、視聴者をいきなりドラマに引きこむ事に成功している。また、スキナーが、自分で事件の証拠を消してしまったため、モルダーにも事情を打ち明けられず、ついにモルダーに銃を突きつけられるなど、サスペンス感満載のストーリーとなっていた。


 今回のストーリーは第1話「 支配者」の続編となっており、「支配者」で思わせぶりに描写されただけで説明の無かった「殺人ハチ」「天然痘」などの設定にようやく具体的な説明が付けられることになった。


 また、今までモルダーの情報源として密かに協力してくれていたマリタ・コバルービアスが、実はスモーキング・マンの部下だと判明する、という衝撃のラストとなった。しかし、こうなると、故ミスターXが死の間際にダイイングメッセージで彼女の事を指し示すような文字を残したのは、どういう意味が有ったのだろうかと思わずにはいられない。


 今回は秘密組織が小包で田舎町に送りつけようとしたハチが外に漏れ出てしまい、スモーキング・マンが事後処理に大慌てとなったわけだが、計画が実にずさんではなかろうか。どうせ現地で小包を開いてハチを放すための人間が必要なのだから、専用トラックでも仕立ててハチと要員を現地まで運んだほうがよほど安全だと思うのだが……


 モルダーは特別写真班の人間に監視カメラの映像を解析してもらうことで、スキナーが事件に関わっていると気が付くのだが、一緒に見ていた班員が全く反応しないのには驚いてしまった。この班員は、FBIの副長官の顔を知らなかったのだろうか。


 今回はスカリーは「ガンの転移の検査入院」という理由で一秒も姿を見せない。実はジリアン・アンダーソンは、映画「マイ・フレンド・メモリー」(1998年)の撮影のために、このエピソードの撮影を欠席しており、スキナーが大活躍するエピソードとなったのは、それを埋め合わせるためだったとか。


 スキナーが、マリタ・コバルービアスの電話番号を見つけるため、モルダーの机の上に置いてあったローロデックス(名刺ホルダー)をくるくる回すシーンが印象的だった。20世紀には当たり前の光景だったが(本エピソードの放送は1997年)、今でもローロデックスはオフィスで一般的に使われているのだろうか。


■一言メモ

 サブタイトル「ゼロ・サム」とは、一方が利益を得ると一方が損する関係のこと。今回の話とどう結びつくのかはいま一つ不明である。