感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」「愛と憎しみの錬金術・毒ガス」(2015年7月2日(木) 放送)

Fritz Haber: Chemist, Laureat, German, Jew

 NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 - NHK
http://www4.nhk.or.jp/P3442/
「科学」の持つ魔力にとり憑かれ、人生を狂わされた科学者たちの闇の事件簿―。
輝かしい科学史の闇に埋もれた事件に光をあてる、新しい知的エンターテインメント番組です。

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2015年7月2日(木) 22:00〜23:00)。


※他の回の内容・感想はこちら→ 「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ

愛と憎しみの錬金術・毒ガス

■番組内容

「愛と憎しみの錬金術・毒ガス」


http://www4.nhk.or.jp/P3442/x/2015-07-02/10/1523/
科学史に埋もれた“闇の事件”にスポットを当て、科学の真の姿に迫る「フランケンシュタインの誘惑」第2弾。今回は、現代の錬金術・化学の世界で起きた悲劇。20世紀初頭、人類の目の前に迫っていた食糧危機を救う技術を開発してノーベル賞を取った偉大な化学者が、祖国ドイツのために悪魔の錬金術・「毒ガス」開発にのめり込んでゆく。差別、愛する妻との壮絶な愛憎悲劇、交差する数奇な運命…。



http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2015-07-02&ch=10&eid=1523&f=3442
科学史の陰に埋もれた“闇の事件”にスポットを当て科学の真の姿に迫る知的エンターテインメント第2弾。今回は、偉大な化学者が祖国のためにのめり込んだ悪魔の錬金術

【ナビゲーター】吉川晃司,【ゲスト】池内了,西林仁昭,【司会】武内陶子


 第一次世界大戦中の1915年4月。ベルギー・イーペルにおいて、ドイツは史上初の毒ガス兵器を投入した。ガスを開発したのが当時の大物化学者フリッツ・ハーバーだった。


 ユダヤ系ドイツ人だったハーバーは、1907年、世界で初めて空気から窒素を(アンモニアの形で)取り出すことに成功した。この技術は、開発者ハーバーと工業化に尽力したボッシュの名前を取り「ハーバー・ボッシュ法」と呼ばれる。100年後の現在でも使用される技術である。


 窒素は植物が成長するために必要な元素だが、植物は大気からは窒素を取り出せない。19世紀後半爆発的な人口増加により作物の増産が緊急の課題であり、そのために肥料となる窒素の大気からの取り出しは世界中の化学者の目標だった。窒素肥料のおかげで、作物は以前の10倍の生産量となった。ハーバーは人類を飢餓から救った大恩人だった。


 しかし1914年、第一次大戦が始まると、ハーバーは自分の力を戦争に役立てようと軍に協力、化学部門の最高責任者となり、まず塩素ガスを毒ガスとして戦場に投入した。ハーバーの妻でかつて化学者だったクララはそれを非難し、イーペルの戦いの後、恐らく抗議のため、銃で自殺した。ハーバーはそれにもめげず毒ガス開発を進め、ガスマスクでも防げない凶悪なガス・マスタードガスを開発した。パーバーは親友だったアインシュタインから非難されるが、毒ガス開発を止めることはなかった。


 しかしハーバーの晩年は悲惨だった。1933年ナチスドイツが政権をとり、ユダヤ人の公職からの追放を開始した。ハーバーは元軍人ということで追放は免れたものの、彼の研究所に勤務するユダヤ系の化学者たちには全員追放命令が来た。ハーバーはそれを受け入れず、自分も抗議のため辞職した。そしてドイツを離れたハーバーは1934年にスイスで心臓発作のため死亡した。


■感想

 2015年3月5日(木)放送の「“不死の細胞”狂想曲事件」に続く第二弾。前回が凄く面白かったので、続編が出来て嬉しい。


 ドキュメンタリーパートと、アナウンサーのゲストの科学関係者とのトークパート、を交互に繰り返す構成。トークのパートは「化学には光もあれば闇もある」とか「化学者を非難するのは間違い」とかコメント内容がありきたりでイマイチでしたが、吉川晃司の語りで進むドキュメンタリーパートが凄くよかった。ちょっとエンタメ風味のNHKスペシャルという感じで、NHKは面白い物を作るなぁとしみじみ感心します。