ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)
■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/
BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。
第16話 マインド・アイ MIND'S EYE
■あらすじ
お題は「遠隔視」。
麻薬の売人が刺殺され、現場で血痕の掃除をしていたマーティ・グレンという女性が逮捕された。彼女は生まれつきの全盲で、とても犯人とは考えられないが、何故か事件に関しては一切口をつぐみ、現場にいた理由も語ろうとはしない。モルダーは、捜査担当の刑事から依頼を受け色々調べるうち、マーティが全盲にも関わらず瞳孔が何かを見ているような反応を示すことに気が付く。
やがてマーティは第二の殺人を「自白」し刑務所に入れられるが、モルダーは彼女は無実で誰かをかばっていると確信する。実はマーティはある男と視覚を共有しており、その男が行なう殺人などを居ながらにして見ていた。マーティの母親は妊娠中何者かに殺害され、マーティはかろうじて生まれたものの視力を失っていた。しかし、何故かその母親殺しの犯人と視覚を共有するようになってしまったらしい。モルダーたちは第一の殺人現場に残った手がかりから、三週間前に出所したばかりのガッツという男の犯行だと突き止める。マーティ自身も知らなかったが、ガッツはマーティの実の父親だった。
モルダーたちは、マーティを釈放し、ガッツ逮捕のため協力を要請する。ガッツは自分の行動が誰かに見られていることに気が付き、ついにマーティの事を突き止め、自宅まで殺しにやってくる。しかしそれを待ち構えていたマーティはガッツを撃ち殺した。マーティはガッツが生きている限り視覚を共有せねばならず、それが苦痛だったため、最初から殺すつもりだった。マーティはガッツ殺しで刑務所に送られるが、訪ねてきたモルダーに、ガッツの目を通して見た海が綺麗だったと語る。
監督 : キム・マナーズ
脚本 : ティム・ミネア
■感想
評価は○。
X-ファイルでまま見られる心霊系のエピソード。心霊絡みの話はえてして展開が暗く、視聴していて憂鬱になってしまうような物が多いが、本エピソードは展開がミステリー仕立てになっていて、なかなかのクオリティだった。
マーティは全盲にも関わらず、テレパシー的な物で他人と視界を共有しており、その相手が見た光景が嫌でも見えてしまうという設定。視聴者にもすぐにそのことは明かされるが、何故マーティが、殺人を目撃しながら、その相手を庇おうとするのかは謎で、その一点で視聴者をグイグイ引っ張っており、なかなか上手い構成である。
もっとも、ストーリー中盤で、モルダーはマーティの行動を「自分で犯人の犯行を止めようとしていたから」と言い当てるのだが、この答え、何か妙な話である。確かにマーティはガッツが盗んだ麻薬を売りさばこうとする行動などを邪魔していたが、冒頭の「殺人現場を綺麗に掃除する」という行為は、単に犯人逮捕の邪魔をしているだけとしか見えないのだが……、冒頭にインパクトのあるシーンを持ってこようとして、その後の展開とつじつまが合わなくなってしまっているのはいただけない。
とは言え、全体的に見ればなかなかのエピソードで、謎をはらんだストーリーが、モルダーたち/マーティ/ガッツの三者の視点を交互に切り替えつつがテンポ良く進む。また、最後にマーティがモルダーたちに協力をすると見せかけて、ガッツを撃ち殺してしまうという、一ひねりしたラストも意外性があって良かった。
ラストシーンで、収監されているマーティが、刑務所に面会に来たモルダーと交わす「海が綺麗」云々という会話は、叙情系と言うかで、かなり印象的だった。
ところで、モルダーが検事に「マーティは心の目で犯行を目撃したんですよ」と説明し、検事は驚きもせずに「証明できるのか?」と切り返すシーンが有るのだが、そこはどう考えても検事の台詞は「バカなことを言うな」とかそういう物になるのではなかろうか。