金曜ロードシネマクラブ https://kinro.jointv.jp/lineup/160826/
放送 日本テレビ 2016年8月26日(金)
【※以下ネタバレ】
ハリウッドが誇るスーパースター、トム・クルーズの新作を2週連続で送るスペシャル企画。1週目に登場するのは、衝撃の結末が待ち受けるSFアクション大作だ。荒廃した地球を妻と2人きりで守っている男が、思いがけない戦いに巻き込まれていく。なぜ彼は1人で戦わなければならないのか? 散りばめられた謎を解き明かした彼が直面する驚愕の真実とは!?
あらすじ
2077年。地球は60年前に襲来したエイリアン「スカヴ」と人類との戦争により壊滅的な被害を受けていた。スカヴが月を破壊したために各地で地震や津波が発生した上、人類が戦争で核兵器を使用したため、大地は荒廃しつくしていた。
人類はかろうじてスカヴとの戦争には勝利したものの、もはや地球を見捨てるほかは無く、生き残った人々は土星の衛星タイタンへ移住していた。地球の最後の人類は大型ステーション「テック」に乗り込んで移住を待ち、地球には、ジャックとヴィクトリアの二人だけが残り、海水を核燃料に変えるプラントをスカヴの残党から守るため、自動戦闘兵器「ドローン」の維持管理に当たっていた。二人は機密保持のため、過去の記憶を消されていた。
ある日、宇宙から謎の宇宙船が地球に墜落した。調査に向かったジャックは、宇宙船がNASAのオデッセイ号だと知るが、ドローンが睡眠カプセルの中の乗員を次々と撃ち殺してしまい、ジャックがただ一人女性の救出に成功する。女性はジュリアと名乗り、宇宙船のフライトレコーダーの回収を希望したため、ジャックは二人で墜落現場に向かうが、スカヴ軍団に捕まってしまう。
ジャックはそこでスカヴが宇宙人では無く人間で、また自分やヴィクトリアがクローン人間である事を知る。実はスカヴ軍団の侵略などは存在せず、60年前宇宙の彼方から出現したテックが月を破壊し、さらに数千人の「ジャック」を使って地球を攻撃したのだった。その後テックは無数のドローンを使って人類を攻撃しつつ、水資源を奪い続けていた。またジュリアは実はジャックの妻だった。
真実を知ったジャックは、爆弾を隠し持ってテックに向かった。そして途中で宇宙船のフライトレコーダーの記録を再生し、60年前に起きた真実を知る。NASAは深宇宙からやって来た物体(=テック)の調査のため、オデッセイ号にジャックたちを乗せて送り出したものの、ジャックとヴィクトリアはテックに捕まってしまい、ジャックが冷凍睡眠中の妻ジュリアたちの乗った部分のみを切り離して地球に送り返したのだった。ジャックはテックの中に入り込むと爆弾を点火し、テックを吹き飛ばした。
3年後、ジャックの別のクローンが、ジュリアとその娘のところに現われておしまい。
感想
評価は○。
トム・クルーズ主演のSF作品。映画公開時に告知されていたあらすじとはかなり内容が違って面食らったものの、それなりに面白い映画ではあった。
2077年。地球は侵略してきた宇宙人スカヴとの戦争で荒廃し、人類は勝利はしたものの、母なる地球を見捨てて他の星へ移住せざるを得なくなっていた。ジャックとヴィクトリアの二人は、地球に残る最後の人間として仕事を淡々と続けていたのだが……
映画公開時に宣伝されていたあらすじでは「人類が他の惑星に移住して誰もいない地球で、ただ一人残ったジャックの前に謎の美女が現われ……」云々と書かれており、たった一人で孤高の任務についている男の物語というなにやら幻想的な映画を連想させた。ところが実際に視聴してみると、主人公は妻的な女性と一緒に仲良く暮していて、仕事はロボットの維持管理作業、と全く印象が違ったので驚いてしまった。またブルーレイのパッケージのあらすじを読むと、やはり映画の宣伝同様「嘘は書いていないが、本当でも無い」といった微妙な内容で、いささか騙されたような感は否めなかった。
映画の大筋は『平凡な暮らしを営む主人公が、ある日、予想外のアクシデントによって、それまでの生活や自分の人生が偽りだったことに気が付き、真の敵に戦いを挑む』というもので、特に目新しいものでは無かったが、全体としてはかなり楽しめた。「人類移住の為に地道に働いている男」が、実は「宇宙人に拉致されて記憶を消された挙句、侵略の手先にされていた男」だったという真相はなかなか意表を付いていたし、またその真実に段階を踏んで近づいていく過程も結構面白く魅せてくれた。
また、ミステリアス要素だけでは無く、ジャックの乗る飛行機とドローンたちとの空中戦や、ドローンが人類の隠れ家を襲撃するシーンなど、派手なアクションシーンも盛り込まれており、淡々とした謎解き映画に終わっていないのも結構ポイントが高かった。
しかし、トム・クルーズ主演の割には、思ったほどの「超大作感」が無かったのもまた事実である。全体的に重厚さとか大作感に乏しく、正直に言えば「せいぜい二時間テレビムービーのレベル」であったと思える。トムは別に落ちぶれたわけでもなく、「ミッション:インポッシブル」とかの仕事があるのに、何故にこんな小粒なSF作品の仕事を受けてしまったのだろうか。ちょっと不思議である。
あと、この映画のストーリーだが、1990年代の日本のパソコンゲーム(アドベンチャーゲーム)に有りそうな内容だと思ってしまった。(当時18禁メーカーとして有名だった)エルフとかシルキーズなら、こんなあらすじの話を作りそうだなと夢想せずにはいられなかった。この映画の視聴前に、あらすじだけを取り出して、シルキーズが企画していた未発表作品のあらすじだと教えられたら、疑いも無く信じてしまっただろう(エルとかビヨンドとかと似たようなテイストであると思う)。
さて、日本語版でラスボスのテック(の声)を演じたのが、超ベテラン声優・池田昌子(オードリー・ヘプバーンとかメーテルとかであまりにも有名)という人選が実に上手いと感心させられた。母性を感じさせるような保護者的存在が、実は究極のラスボスだった、というのは松本零士作品にでもありそうな設定だが、その声が池田昌子というのは完璧な人選だろう。終盤の、あの声なのに話している内容は実に冷酷、というシチュエーションが実に印象的だった。それにしても収録時点で既に70歳を超えているのに、声の印象が昔とさほど変わらないのが凄い話である。
ちなみにタイトルの「オブリビオン」とは「oblivion」と書き「忘却」の事である。最初からこの意味を知って視聴していたら、映画の味わいが結構違ったのではないかと思えた。
一言
また声優が森川智之と岡寛恵か……、なんか見る洋画の半分はこの人たちが声を当てているような気がする……
<ビーチ>
モーガン・フリーマン(坂口芳貞)<ジュリア>
オルガ・キュリレンコ(中村千絵)<ヴィクトリア>
アンドレア・ライズブロー(岡寛恵)<サイクス軍曹>
ニコライ・コスター=ワルドー(西凜太朗)
スタッフ
<監督・原作・製作>
ジョセフ・コシンスキー<脚本>
カール・ガイダシェク
マイケル・デブリュン<製作>
ピーター・チャーニン
ディラン・クラーク
バリー・レヴィン
ダンカン・ヘンダーソン