【歴史】感想:NHK番組「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」『ノストラダムスの大予言~人類滅亡の狂騒曲~』

ノストラダムスの大予言―迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日 (ノン・ブック 55)

アナザーストーリーズ 運命の分岐点 https://www4.nhk.or.jp/anotherstories/
放送 NHK BSプレミアム。。

【※以下ネタバレ】
 

ダイアナ妃の事故死、ベルリンの壁崩壊、ビートルズ来日...
人々が固唾を飲んで見守った、あの“出来事”。
あの日、あの時、そこに関わった人々は何を考えたのか?
それぞれの人生はその瞬間、大きく転回し、様々なドラマを紡ぎ出していきます。
残された映像や決定的瞬間を捉えた写真を、最新ヴァーチャルで立体的に再構成、
事件の“アナザーストーリー”に迫る、マルチアングルドキュメンタリー。

 

ノストラダムスの大予言~人類滅亡の狂騒曲~ (2019年4月9日(火)放送)

 

内容

https://www4.nhk.or.jp/anotherstories/x/2019-04-09/10/5230/1453118/
4月9日(火) 午後9時00分
アナザーストーリーズ「ノストラダムスの大予言~人類滅亡の狂騒曲~」


「1999年7月、人類は滅亡する!?」16世紀フランスの伝説的な占星術ノストラダムスの予言は、なぜ日本で大流行したのか?彼の予言を解説した新書が日本で発売されたのは1973年。それは出版社が想像もしなかった恐るべき大騒動を巻き起こしていく。その驚きのてんまつとは?さらに破滅が始まると名指しされたフランスの町の大騒動や、世界的学者が巻き込まれた日本の事件など、世界が狂騒したアナザーストーリー!

 
◆視点1 偶然が産んだ奇跡の大ブーム

 1973年。創立三年目の祥伝社は、予定していた本が出せないことになったため、代わりの企画を求めていた。そしてライターの五島勉(ごとう・べん)から、フランスの予言者ノストラダムスの本の企画を持ち込まれ、それにGOサインを出した。

 ノストラダムスの詩の内容は抽象的で極めて分かりにくかったが、五島は「1999年」とはっきり書かれている一つの詩に注目、この年に人類が滅亡する云々という解釈で本を書き上げた。そして完成したのが「ノストラダムスの大予言」である。

 実はこの本は前半で滅亡を煽っているが、最後は「そうならないためにどうすればいいか考えよう」云々と書いてあり、つまるところ人類が核戦争や環境汚染で滅亡しないように努力しよう、という問題提起で〆ていた。

 この本は、会社側はあまり売れるとは思っていなかったのだが、この年の春に小松左京の「日本沈没」が大ヒットして下地が出てきていたうえ、10月に第四次中東戦争の影響でオイルショックが発生し、日本中が不安に包まれていた。そして11月に本が発売されたところ、会社側が全く予想もしていなかったような大ヒット。翌1974年には文部省推薦の映画版が作られるほどに売れまくった。

 大人向けの本だから煽りまくった内容にしていて、本の最後で考えてもらう、という構成だったのだが、売れまくったためにやがて読者層が下がりまくって小学生まで読むようになってしまい、子供が怯えて祥伝社に電話をかけてくることも有ったという。

 著者の五島勉も「小学生が読むことになるとは思わなかった」と語っている。



◆視点2 破滅を予言された町

 1999年。フランスの田舎町オーシュは、有名なファッションデザイナー・パコ・ラバンヌから「ノストラダムスの予言の対象はこの町で、8月11日に宇宙ステーション・ミールが墜落して滅亡する」云々と名指しされていた。

 ラバンヌは、ノストラダムスの予言、近々ミールが墜落するかもという話、8月11日は日食、オーシュにはノストラダムスがいたことが有った、といった要素を組み合わせて、本気でテレビや本などのメディアで予言しまくった。

 迷惑したのが観光で食っているオーシュの街の人。彼らは対抗手段として新聞で反論を行い、さらに当日8月11日には、予言を逆手に取って「世界の終わり祭り」を敢行し、大いに盛り上げた。もちろんこの日宇宙ステーションは墜落してきたりはしなかった。



◆視点3 世界的権威が発見した大予言の真実

 古い書物の研究家であり、ノストラダムス研究の権威であるミシェル・ショマラ。彼はノストラダムスの予言を解説した本が何故こんなに(170以上)あるのか調べていくが、そもそもノストラダムスの書いたのは古いフランス語で、しかも詩が抽象的なので解釈が難しいため、内容に信頼のおける本は一つも無かった。

 そしてとうとう16世紀に書かれた初版本「詩百篇」を発見した。この本の前書きでノストラダムスは3797年まで見通したと書いており、つまりその年まで人類滅亡などあり得ず、ノストラダムスは人類滅亡などは予言していない。

 また初版本と後世に書かれた本を比較してみると、オリジナルにない勝手な詩が追加されていることが判明した。出版社が現実を元に詩を捏造し「予言が当たった」と宣伝したかったためだと思われる。また第二次大戦中にもイギリスもドイツも詩の勝手な解釈や捏造を行い、自分たちが勝利すると予言されていると宣伝した。ノストラダムスの予言的中伝説はこうして作り上げられたと思われる。

 そもそも「詩百篇」は当時の一般庶民向けの本で「3月は季節の変わり目。まだ冬が続いていて寒いので気を付けよう」みたいな天気予報を独特の言い回しで書いていただけの模様。要するに一般読者向けに天気予報本で、「この時期にはこれこれがある。だから気を付けよう」という「序盤で警告」「後半で安心させる」スタイルの本だった。例の1999年の詩も、よく見ると、前半は「恐怖」とあるが、後半に「幸福」とあり、全く同じスタイルである。要するに後世の人が勝手に予言本とか滅亡とかこじつけていただけだった。

 1989年に、ショマラを、あのオウム真理教麻原彰晃が訪ねてきて、予言に自分や日本の事が書かれていないかしつこく尋ねたと言い、またオウムの広告塔になるように依頼したともいう。ショマラは断ったものの、オウムが事件を起こした後は世間から非難されたとも。


感想

 アラフィフ世代なら1970年代のオカルトブームに直撃されたと思うのですが、その中核(?)だった「ノストラダムスの大予言」を、オカルト視点ではなく「当時の流行物」という観点で扱った回で、凄く興味深かったです。

 特に第一部の、祥伝社ノストラダムス本を作った時の話がもう笑えるくらい楽しかった。本を作った理由が「単に別の本の代わり」だったとか、それが偶然によって大ブームになっていった様とか、こういう視点で語ったのは初めて見たので、もう面白いのなんの。


※まあ、当時を知らないと何故当時の人間がこんなオカルトに群がったのか理解しにくいでしょうけど、リアルタイムで生きていた世代にとっては、1970年代って、なんかもう不安な時代でしたもんね。過激派がビルを吹き飛ばした「三菱重工爆破事件」は1974年で、今から考えたらあり得ないような話がリアルで起きてましたし、公害はある、オイルショックはある、東西両陣営の対立は有る、と不安の種には事欠かない時代でしたもんね。


 怯えた小学生が祥伝社に泣きながら電話してきて「地球は消えて人類は滅びるんですか?」と聞いてきて、役員が頭を抱えた、というエピソードがもう凄く気に入りました(笑)

 ところで祥伝社はブームを煽り過ぎたと反省したと言ってましたけど、そのあともノストラダムス本を連発してなかった? 少なくとも5巻くらいまでは読んだ気がするけど……


 第二部・第三部は水増しで入れたような感じの話でしたね。今回の内容を全部日本のノストラダムスブームの話で埋めてくれればよかったのになぁ。
 
 

アナザーストーリーズ「ノストラダムスの大予言~人類滅亡の狂騒曲~」


世界中に流布したノストラダムスのあの予言、「1999の年、7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」。"恐怖の大王"とはいったい何なのか? 破滅的な天変地異?核戦争?巨大隕石の落下?人類滅亡の予言と言われたあの言葉が、とりわけ流行したのが日本だった。そのきっかけとなった意外な偶然とは?


五島勉の「大予言」シリーズは人気沸騰し、全国の書店が次々在庫切れになる騒ぎに。だがそれが思わぬ騒動を巻き起こす。


ノストラダムスの謎に魅せられ、40年以上にわたって研究を続けてきた世界的権威ミシェル・ショマラ。なぜノストラダムスの予言は的中するという伝説が生まれたのか、長年の研究の末、ある発見に至った。その彼はやがて、日本で起きたあの事件に巻き込まれることになる。


世界に2冊しか現存しない、ノストラダムスの予言集の初版本。なぜノストラダムスの予言は伝説になったのか?、そもそも彼は何のためにこの本を書いたのか?、数々の謎を解くカギはまさにこの初版本の中に隠されている。

 
ノストラダムスの大予言〈5〉―ついに解けた1999年・人類滅亡の謎 (ノン・ブック)