2019年04月22日 19:00
異色作「ベターマン」の生まれた時代と環境を、米たにヨシトモ監督が振り返る【アニメ業界ウォッチング第53回】 - アキバ総研
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【※以下ネタバレ】
米たにヨシトモ監督が「勇者王ガオガイガー」(1997年)に次いで、サンライズでつくりあげたアニメ「ベターマン」(1999年)がBlu-ray BOX化される。
木村貴宏氏のデザインによる美少女キャラクター、竹谷隆之氏の創造したクリーチャーなど、いま見ても色あせない魅力に溢れている。
「ベターマン」が生まれたのは、一体どんな時代だったのだろう? 米たにヨシトモ監督に、20年前の日々を振り返っていただいた。
ベターマンとは懐かしいですね。放送された1999年は、人類滅亡云々と言われた年でオカルトムードが最高潮だっただけに、作品内容は時代にピッタリだと思ったものです。巨大ロボットも超人キャラも登場するものの、基本的には得体のしれないホラーで、オープニング曲がまた陰気な(?)テイストで、とにかくすべてが好みでめっちゃハマった物でした。
ということで、懐かしい作品を引用大目に振り返ります。
●怪獣モノの理由
── 作品内容に、小林さんからはオーダーはあったのですか?
私としては、以前から怪獣物で、女の子が襲われるようなホラーゲーム風の作品をアニメでできないかと考えていました。
── なぜ怪獣物だったのでしょう?
米たに 3~4歳のころに「ウルトラマン」が放送されはじめて、私の子どものころは怪獣ブームだったんです。もちろん「ゴジラ」も見ていましたし、怪獣の存在感は強烈でした。もう、自分の血肉として怪獣が宿っているんです(笑)。ところが「ベターマン」の頃は、特撮物が廃れていた時代です。特撮物、怪獣物の息吹を絶やしてはならないという強い想いがありました。もし今の時代に怪獣物を作るのであれば、今風のデザインにアレンジしなければならない。それで、新しい怪獣のイメージを提案しました。
── レトロであってはいけないということですか?
米たに 単にレトロな怪獣を出しても、オジサン世代しか着いてきてくれないと思いました。若い世代にとって、怪獣物を楽しむための入り口となるような企画にしたかったんです。
●ヒロイン
── 第1話で、紗孔羅と火乃紀、2タイプの美少女キャラが登場しますね。やはり女の子はかわいく描きたかったのですか?
米たに もちろん、魅力的と思える女の子でなければ、視聴者には見せたくありません。自分が見たいと思う要素の中から、視聴者の支持を得られそうなキャラを抽出しました。
●メカ
──怪獣と美少女だけではなく、大河原邦男さんのデザインしたロボット(覚醒人1号)も出てきますね。
米たに “ダサい”というと語弊がありますが、あまりカッコよくない、道具として使える理屈で動くロボットにしたかったんです。“
生体としての必要性”というテーマを、ロボットの中に集約させています。覚醒人は、デュアルカインドなる人間2人が乗らないと、動きません。人類は男と女の2種類がいないと交配できず、生命が生まれないことの象徴でもあるんです。
覚醒人のエネルギーを生み出すリンカージェルは古細菌であるとか、生命体が海底に潜るときにどうなるか……など、ある程度、科学的な理屈を調べて設定をつくっていきました。ただのホラーではなく、「生命科学を描きたい」という明確な意図があったからです。
●木村貴宏
── 次にキャラクターデザインについてうかがいたいのですが、「ガオガイガー」と同じ木村貴宏さんですね。
米たに キャラデは最初から木村さんと決まっていたわけではなくて、大勢の方にオーディションに参加してもらっています。
米たに 木村さんは、スーパーアニメーターです。自身との戦いが、半端ではないんです。オリジナリティの強い方ですけど、たとえキャラクター原案が別の人であっても、自分のキャラクターに還元して描けるんです。
さらに言うと、キャラクターデザイナーは何年も経つと絵柄が変わってくるのが普通です。木村さんはそれをちゃんと自覚していて、自分の中の引き出しに、その時代ごとの絵をしまっている。「○年前の自分の絵はこれだから、今回はこれで描こう」と、昔の絵に戻れるんです。
今回の「ベターマン」Blu-ray BOXでも、1999年当時の絵を完全再現してくれています。そんなことをシレッとできるアニメーターは、なかなかいません。