【SF小説】感想「冷気のエレメント」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 591巻)(2019年4月18日発売)

冷気のエレメント (宇宙英雄ローダン・シリーズ591)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122253
冷気のエレメント (宇宙英雄ローダン・シリーズ591) (日本語) 文庫 2019/4/18
マリアンネ・シドウ (著), アルント・エルマー (著), 畔上 司 (翻訳)
文庫: 271ページ
出版社: 早川書房 (2019/4/18)
発売日: 2019/4/18

【※以下ネタバレ】
 

ブルー艦がゴルゲンゴルの巨大な炎を見つけて、引き寄せられるように調査に向かうが、別宇宙からの冷気の攻撃を受けてしまった!?


太古の昔、砂漠惑星フ=ドゥルナデに双頭の種族スコプが住んでいた。ある日、惑星と種族の滅亡を目前にしたかれらは、スコプの特徴をすべてそなえた一細胞核を宇宙に送りだす。いつか居住可能な惑星が見つかったら、その細胞核からあらたなスコプ種族を発展させるつもりだったのだ。やがて時がたち、細胞核から誕生した女スコプのフ=ドゥルナデがアルマダ中枢からのメッセージを受信し、門閥の母と呼ばれるようになる!

 

あらすじ

◇1181話 門閥の母(マリアンネ・シドウ)(訳者:畔上 司)

 遥かな過去。砂漠惑星「フ=ドゥルナデ」に暮らす種族「スコプ」は、種族の滅びが近づいた時、どこか別惑星で種族を再興するため、特別な細胞をロボット宇宙船で送り出した。数千年後、宇宙船は適した惑星を発見できないまま死の星と化したフ=ドゥルナデに戻り、そこで細胞から一人の女スコプを誕生させた。そのスコプは成長すると、先祖が作った巨大宇宙ステーションに乗り込み、ステーションを宇宙船にして新天地を目指す旅に出た。やがて女スコプ「フ=ドゥルナデ」は、謎の呼び声に導かれて未知空域に到達し、無限アルマダに最初に参加した存在となった。

 現在。銀河系船団はローランドレに向かう途中で遭遇した宇宙ステーションから、門閥の母が死にかけているという救難信号を受信する。しかし乗員たちが到着した時には、既に門閥の母・フ=ドゥルナデは死んでいた。(時期:不明。NGZ427年4月末頃)

※初出キーワード=惑星フ=ドゥルナデ、スコプ種族、ヴォーチェ人、データ収集船



◇1182話 冷気のエレメント(アルント・エルマー)(訳者:畔上 司)

 銀河系。ブルはGAVO"Kの会議に出席し、将来無限アルマダが銀河系を通過することを各種族に説明した。一方、ブルー族の艦隊は銀河間空間から届く謎の信号を辿って惑星ゴルゲンゴルを発見するが、直後、混沌の勢力の戦力「エレメントの十戒」の一つ「冷気エレメント」の攻撃を受け、船から熱とエネルギーを吸い取られて行動不能に陥ってしまう。タウレクはゴルゲンゴルを爆破し、その熱でブルー族艦隊を救い、ゴルゲンゴルの「炎の標識灯」はそのまま銀河系に向かった。(時期:NGZ427年6月22日とその前後

※初出キーワード=エレメントの十戒、冷気エレメント、マイナス宇宙、クロノフォシル、炎の標識灯


あとがきにかえて

 指揮者のカラヤンは、オーケストラ指揮者というよりオペラ指揮者である、という話。


感想

 前半エピソード … スコプ種族と門閥の母・フ=ドゥルナデの物語。作者はシドウ。シドウはこのサイクルは今回に限らず、「プラネットピープル」から「シャット・アルマロングのロボット」「グレク336」「双子星のカルメナ」「バルシネ種族」「真空の貧者」と、ローダンや主要キャラが出てこない、ほぼ異種族が主役の話ばかり書いています。これは自分から志願してこういう割り振りなのでしょうか。それとも編集部の意向でメインストーリーに関係ない話を割り振られているのでしょうか。気になる……

 今回も、凝り性の(?)シドウらしく、たった一話きりのエピソードにもかかわらず色々な設定を豊富に用意していて、なかなかに読みごたえがありました。しかし1179・1180話で散々「謎の存在」として読者を期待させまくった「門閥の母」が、登場していきなり瀕死の状態になっており、さらに何もしないまま退場してしまう、という展開は呆気にとられました。これはあまりにもあまりすぎないかと……、

 また門閥の母は、無限アルマダ誕生の最初期から生きているということは数百万歳ということになりますが、何故それだけ生きられたのかの説明も無かったし……、どうも釈然としない話ではありました。


 後半エピソード … 舞台は銀河系に戻っての新展開。ようやくヴィシュナの攻撃が終わったと思ったら、すぐさま次の敵「混沌の勢力」が攻撃をかけてきて、テラナーは休む暇もありません。「エレメントの十戒」という名前は格好良くてしびれますが、「冷気エレメント」とは一体何なのかが良く解りません。この謎の冷気ゾーンは、精神生命体的ななんらかの生物なのか……? 意思はあるのか……? と、その辺りの設定が曖昧で、どうももやもやするエピソードでした。
 
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

2020年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com