感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第4話「指輪の爪あと」

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刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第4話 指輪の爪(つめ)あと DEATH LENDS A HAND (第1シーズン(1971~1972)・第2話)

 

あらすじ

探偵社の社長ブリマーは、新聞王のケニカットから妻の浮気調査を依頼され、彼女は潔白だと報告をする。しかし夫人は不貞をはたらいており、うその報告の見返りとして夫人にある要請をする。だが、それを断られたブリマーは彼女を殴りつけ殺害。物取りの犯行に見せかけた上、警察の捜査に協力を申し出る。だがコロンボは遺体のほほにあった傷あとから、犯行の状況に疑問を持つ。

 
●序盤

 探偵社の所長ブリマーは、新聞王アーサー・ケニカットから夫人の浮気調査を依頼されていたが、彼女は潔白だと報告をして安心させる。ところが、実際は夫人は浮気をしており、プリマーは夫人に対し、真実を黙っている代わりに、ケニカットに関する情報を流すスパイになるように要求する。

 その夜、ブリマーの海岸の別荘にケニカット夫人が現れ、夫に正直に真実を話すと言ってスパイの話を断ったばかりか、ブリマーからスパイを持ち掛けられた事も伝えると言い出す。焦ったブリマーは夫人の顔を殴りつけるが、その勢いで夫人は倒れ、後頭部を打って死んでしまう。ブリマーは夫人が来た痕跡を全て消し、金目の物を奪った後、車で死体を別荘から離れた場所に運んで捨てる。


●中盤

 翌日ケニカット夫人の死体が発見され、コロンボが捜査担当となった。ケニカットは、ブリマーの探偵社にも捜査を依頼し、警察に圧力をかけてブリマーと連携して捜査させるようにする。コロンボは、プリマーに、夫人の死体の頬の傷は殴られた時に指輪で出来ただろうこと、その傷が出来るには左利きの人間がバックハンドで殴る必要があり、犯人は最初から殺すつもりではなかっただろうこと、等の考えを話す。

 コロンボはすぐにケニカット夫人の浮気相手であるゴルフインストラクターのアーチャーを見つけ、アーチャーが何者かに尾行されていたことを聞きだす。

 ブリマーはコロンボがだんだん犯人像を絞り込み、自分に近づいているのを知り、コロンボに対して警察を辞めて自分の元で働かないかと誘いをかけ、捜査から遠ざけようとする。


●終盤

 やがてコロンボはケニカット夫人がコンタクトレンズを着用していたことに気が付き、死体を発掘して、ケニカットやプリマーに右目のコンタクトが紛失していたと言う。コロンボはレンズは殺人の犯行現場で落ちた可能性が高いと言い、それを聞いたブリマーは別荘の床を調べるが見つからない。

 ブリマーは車で死体を運んだ際にトランクに落ちた可能性を考え付くが、車は故障して修理に出していたため、夜中に修理工場に忍び込みトランクを調べ、レンズを発見する。ところが次の瞬間、隠れていたコロンボやケニカットたちに包囲される。ブリマーはレンズをこっそり捨てようとするが、取り押さえられ、観念して犯行を認める。

 プリマーが連行された後、コロンボはケニカットに、本当は夫人のコンタクトレンズは外れていなかったと打ち明ける。しかしプリマーの車に有ったレンズが誰の物だとしても、ブリマーの行動で犯人であることは明白だと説明する。ケニカットはコロンボが罠を仕掛けたことを悟り、車がタイミングよく故障した事を幸運がるが、コロンボは子供の頃に車の排気管にジャガイモを突っ込んで故障に見せかけた話をする。ケニカットは一瞬排気管を調べようとするが、そのままコロンボと共に立ち去る。


感想

 評価は○(まずまず)。

 コロンボ作品は、第1・第2シーズンは微妙な出来の作品が多いが、この作品は構成に無駄がなく、1時間16分と短いながらも中々に楽しめるエピソードで、評価はまずまずだった。

 調べてみると、本作はコロンボの生みの親であるリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクがシナリオを書いていて、なるほどと納得させられた。実は、原作者コンビがコロンボ作品のシナリオを書いたのは、本作と、シリーズ1作目で単発ドラマとして製作された「殺人処方箋」しか無い。本作は、原作者二人がテレビシリーズの方向性を示すために書いた作品だそうで、放送順は第1シーズン第2話だが、番組制作は一番最初に行われたとのことである。

 そう言われてみると、犯人のアクがやや弱いという感はあるものの、無駄な展開という物がなく、話が巧みにまとめ上げられていること、犯人に上手に罠を仕掛けて自らボロを出させてしまうところ、等、地味ながらも隙が無く、なかなかの作品だった。


 本作は証拠の掴み方などが実に自然で、コロンボは、

・プリマーの車の傷み具合から、海辺に別荘を持っていることをかぎつける。
・プリマーに捜査資料を持っていき、何気なく受領書にサインさせて、左利きと確かめる。
・プリマーの部下にスカウトされた話をしておいて、高給取りが誰か尋ね、それがアーチャーを尾行していた男らしいことを確認する。
・免許更新の視力検査から、ケニカット夫人のコンタクトの可能性を思いつく(その前に伏線として、白バイ警官に免許切れが近いことを指摘されるシーン、ケニカットの屋敷で夫婦で撮影した写真を見るシーンあり)


 等、流れるように情報を掴み、犯人にわなを仕掛け、事件を解決に導く。このあたりは、さすが原作者コンビというところだろうか。


 本作の犯人のプリマーは、実はフルネームが最後まで判明しないシリーズでも珍しいキャラである。殺人についても、金銭や恨みなどが理由の計画的な物ではなく怒りに任せての過失致死で、また最後に連行される際、ケニカットに謝罪の様な事を述べるなど、他の作品の犯人とはいささか毛色が違う、という感じがして、そこが妙に印象に残った。


 物語の最後の最後に、ケニカットがプリマーの車の排気管を調べようとして、思い直して立ち去っていくシーンは、ぜひ調べてほしかったと思わずにはいられなかった。


 サブタイトルの原題「DEATH LENDS A HAND」は「死は手を貸す」といった意味。本作の内容とどうつながるのかさっぱり意味が解らないが、「LENDS」は、事件解決のキーとなったコンタクトレンズ(LENS)の洒落になっている、という事の様である。もっとも日本人にはさっぱりピンと来ない洒落である。日本語タイトルの「指輪の爪あと」も、傷跡が事件解決の突破口になった訳でも無いので、こちらもあまり良いとは思えないが、原題よりはまだマシかもしれない。


備考

 放送時間:1時間16分。
 
 

#4 指輪の爪(つめ)あと DEATH LENDS A HAND
日本初回放送:1973年


刑事コロンボ』の原作者で脚本家のレビンソン&リンクが脚本を手がけたシリーズ化後唯一の作品。コロンボの愛車「プジョー403」が本格デビュー!


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
ブリマー・・・ロバート・カルプ(梅野泰靖
ケニカット・・・レイ・ミランド(横森久)
ケニカット夫人・・・パトリシア・クローリィ(池田昌子


演出
バーナード・コワルスキー


脚本
リチャード・レビンソン
ウィリアム・リンク

 

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