【SF小説】感想「宇宙の炎の道」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 592巻)(2019年5月2日発売)

宇宙の炎の道 (宇宙英雄ローダン・シリーズ592)

http://www.amazon.co.jp/dp/415012227X
宇宙の炎の道 (宇宙英雄ローダン・シリーズ592) (日本語) 文庫 2019/5/2
デトレフ・G・ヴィンター (著), トーマス・ツィーグラー (著), 嶋田 洋一 (翻訳)
文庫: 269ページ
出版社: 早川書房 (2019/5/2)
発売日: 2019/5/2

【※以下ネタバレ】
 

ゴルゲンゴルは巨大な炎の標識灯となって銀河系に向かっていった。炎が接近した惑星に大惨事を招きかねない。ブルは焦るのだが!


人工惑星ゴルゲンゴルを襲った冷気の正体は、混沌の勢力に属する者がはなってきた武器、“エレメントの十戒"のひとつだった。コスモクラートのタウレクによって起爆されたゴルゲンゴルは、冷気を吸収し危機を回避したのち、巨大な炎の標識灯となって銀河系に向かっていった。最初の目的地はブルー族のハネ人が居住するプリイルト星系だ。炎が接近して通過すれば、大惨事を招きかねない。レジナルド・ブルは焦っていた!

 

あらすじ

◇1183話 光と闇のはざまで(デトレフ・G・ヴィンター)(訳者:嶋田 洋一)

 ゴルゲンゴルから発した「炎の標識灯」は、ブルー族の「ハネ人」の惑星「ツュリュト」へと接近するが、炎が発する「平和オーラ」の影響で、ハネ人は全く混乱もなく炎を受け入れた。直後、ツュリュトにエレメントの十戒の一つ「戦争エレメント」が出現し、ハネ人に寄生しながら分裂増殖してツュリュトを征服してしまった。タウレクは戦争エレメントを消滅させるインパルスを発見し、その放射によって戦争エレメントの大半は消え去るが、一体だけは生き残ってしまう。(時期:不明。NGZ427年6月頃)

※初出キーワード=平和オーラ、戦争エレメント、ハネ人、惑星ツュリュト



◇1184話 宇宙の炎の道(トーマス・ツィーグラー)(訳者:嶋田 洋一)

 炎の標識灯は、無限アルマダが銀河系を通過するための直径10光年の通路「先導航路」を確保するため、航路上に存在する星々を別空間「宇宙襞(ひだ)」へと移し始めた。一方、戦争エレメントは、ブルー族の艦隊内で増殖して乗員たちを支配したあと、さらに炎の標識灯の進路上にあるブルー族「カルル人」の惑星「カルルジョン」も制圧してしまう。その後、カルルジョンに十戒の指揮官「指揮エレメント」の「夢見者カッツェンカット」と「技術エレメント」が到着した。(時期:NGZ427年7月13日とその前後)

※初出キーワード=指揮エレメント、技術エレメント、夢見者カッツェンカット、カルル人、惑星カルルジョン、《理性の優位》、先導航路、宇宙襞(ひだ)


あとがきにかえて

 スポーツ吹き矢の大会のため、ハワイに旅行した話。


感想

 前半エピソード … エレメントの十戒の第二弾「戦争エレメント」初登場話。序盤は「ハネ人は男性と比較して女性が少ないので、男性は25人参加のハードな大会でパートナーを奪い合う」とかいう面白くもないデスゲーム的な物が描かれて憂鬱になりましたが、後半の戦争エレメントが大増殖して内戦状態になる辺りは結構楽しめました。しかしオチが「タウレクがちょっとハイパー次元インパルスを放射したら、すぐに戦争エレメントは消滅してしまいました」というのは安直すぎでは?


 後半エピソード … 一体にまで減った戦争エレメントがあっという間に再増殖していく話。最後の最後で十戒の指揮官「指揮エレメント」や、謎の「技術エレメント」が宇宙船で増援として駆け付けてくるなど、盛り上がってまいりました。

 しかし、このエピソードの面白さの半分は、ブルー族ガタス人の艦長「シ=イト」の演じるコント(?)です。この人物は、1176話「ゴルゲンゴルの鍵」で初登場し、食事の事ばかり口にしている一回限りの面白使い捨てキャラと思っていたら、それ以後も複数の作家の作品にまたがってレギュラー的に活躍しているのですが、今回はツィーグラーがノリノリだったのか、描写の面白いこと、

 シ=イトが食通垂涎の幻の食材「ムウルト・ミミズ」を手に入れ、早速食べようとしたら、そのミミズには知性的なものがあり、「私には毒があるから食べるのはやめた方がいいですよ」とか「私はあなたの祖母の生まれ変わりですが、それでも食べる気ですか?」とか言って食欲をそぎに来るとか爆笑物のシーンが何度も出てきます。

 また乗員が戦争エレメントに寄生されて反乱を起こした時も「料理長の出す食事がまずいから、ついに乗員が反乱を起こしてしまった」と愚痴ったり、戦争エレメントに支配されているのに、カルル人の要人と会話する際、一々相手の名前を間違えて訂正されるとか、もう真面目にバカなことをやっているので、もうおかしいのなんの。ローダン・シリーズでこんなユーモラスな話を読めるとは思いませんでした。
 
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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