【数学】感想:NHK番組「ハイビジョン特集「数学者はキノコ狩りの夢を見る ~ポアンカレ予想・100年の格闘~」」(2007年10月1日放送)

ポアンカレ予想・100年の格闘 ~数学者はキノコ狩りの夢を見る~ [DVD]

ハイビジョン特集「数学者はキノコ狩りの夢を見る」
https://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2020-12-03/10/21616/2351481/
放送 NHK BSプレミアム。2020年12月3日(木)

【※以下ネタバレ】
 

ハイビジョン特集「数学者はキノコ狩りの夢を見る」
[BSプレミアム]2020年12月3日(木) 午後2:54~午後4:43(109分)


人類が長年問い続けてきた謎に迫る数学上の難問が、2006年に証明された。その難問は「ポアンカレ予想」。解けるまでの100年にわたる天才たちの格闘のドラマに迫る。


宇宙は一体どんな形なのか?人類が長年にわたって問い続けてきた謎に迫る数学上の難問「ポアンカレ予想」が、2006年に証明された。証明したロシアの数学者グリゴリ・ペレリマン(当時41歳)は、その功績により、数学界最高の栄誉・フィールズ賞の受賞が決定。しかし受賞を拒否し、行方をくらましてしまう。数学者はなぜ難問に挑み続けるのか。ポアンカレ予想が解けるまでの100年にわたる天才たちの格闘のドラマに迫る。


【語り】小倉久寛上田早苗

 

内容

https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011027278SA000/
宇宙の形を問う数学の難問「ポアンカレ予想」。近年、この難問がロシアの天才数学者、グリゴリ・ペレリマン博士によって証明されました。しかし、博士は数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の受賞を拒否し、姿を消したのです。博士の行方を追いながら、世紀の難問に魅せられた数学者たちの100年に渡る闘いに迫ります。「NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪(しっそう)の謎~」の拡大版。

 
●大天才の今

 2006年。100年間未解決だった数学の難問「ポアンカレ予想」が、ロシアの数学者ペレリマン博士によって証明された。国際数学者会議はペレリマンに数学界のノーベル賞と呼ばれる「フィールズ賞」を授与することを決めたが、ペレリマンは賞を辞退し、賞金100万ドルの受け取りも拒否した。難問を解決したペレリマンは、数学界から離れ、親しい友人とも距離を置き、ロシア・サンクトペテルブルグのアパートに引きこもり、人目を避ける生活を送っているという。噂では、森で趣味のキノコ狩りを楽しんでいるのだという。



ポアンカレ予想とは

 ポアンカレ予想は、20世紀初頭に生きた天才数学者アンリ・ポアンカレが1904年に立てた予想で、簡単に言えば「宇宙の形を予想する問題」である。

 宇宙の前に、まず地球の形について考えてみる。もし飛行機も人工衛星も使えず地球を外から見ることができないとして、地球の形はどうやったら確かめられるか? 船で世界一周できるから球形? 球ではなくドーナツの様な形でも世界一周は可能だが、とうやったら解る?

 そこで、長いロープを用意し、片方の端を港に括り付け、もう一方の端を船に結んで世界一周させてみる。船が元の港に戻ってきたら船に結んでいたロープを港に結び直し、輪になったロープを手繰り寄せてみる。

 もし地球が球ならばロープは一度も地面から離れることなく回収することができる。しかし地球がドーナツ形で、穴をくぐって世界一周してきたなら、ロープは穴に引っかかって回収不可能である。また穴をくぐらずに一周してきても、ロープは回収している途中で地面から離れてしまうので、これまた回収不可能と見なす。

 つまりロープが回収できれば地球は丸く、できなければ丸くない。地球を外から見なくてもロープの回収可否で地球の形が解るのである。


 同じように、地球からロープを結び付けた宇宙船を打ち上げて宇宙を一周させ、戻ってきたらロープを引っ張ってみる。輪になったロープが回収できれば宇宙は丸く、回収できなければ丸くない。宇宙を外側から見なくても宇宙の形を知ることができる。これがポアンカレ予想である。



トポロジー

 数学で図形を扱う分野を幾何学といい、ニュートンが生み出した微分積分から発展したのが「微分幾何学」。ところがポアンカレ微分幾何学では宇宙の形はとらえきれないと考え、全く違う幾何学位相幾何学トポロジー)」を作り出した。

 微分幾何学は、形・長さ・角度などが違えば全く違うものとして扱う。それに対しトポロジーは、おおざっぱな特徴だけ一致していれば同じ形と見なす。例えばスプーンと皿は「穴が一つもない」から同じ図形と見なせるし、またコーヒーカップとドーナツは「穴が一個空いている」という特徴から同じものとみなす、という具合である。



●難問ポアンカレ予想

 ポアンカレ予想ポアンカレ自身にすら解けなかった。その後のトポロジー専門の数学者たちもポアンカレ予想に挑んだが、ことごとく証明に失敗した。

 ポアンカレ予想が難しい理由の一つは、ロープを回収しようとする際、数学的にロープが絡み合ってしまうからだった。数学者スメール博士は、3次元宇宙の問題であるポアンカレ予想をそれより高い4・5・6次元などで考えることで攻略しようとした。

 例えばジェットコースターのレールが地面(2次元)に描いた影を見ると複雑に絡んでいるが、実際の3次元空間のレールはもちろん絡み合ったりはしていない。つまり低い次元では絡んでいるように見えても、それより高い次元では絡んでいない、という考えである。そして研究の結果、6・5・4次元ではロープは回収できることが判明した。



●新たなアプローチ

 ウィリアム・サーストン博士は、ポアンカレ予想に別のアプローチを試みた。もし宇宙が丸くなかったら、どんな形がありうるか、と発想したのである。それを突き詰め「宇宙は最大八種類の断片が集まってできている」という「幾何化予想」を発表した。そしてこの幾何化予想はポアンカレ予想を一部に含んでいると考えられた。

 もし宇宙の断片に丸以外の形が含まれているとすれば、宇宙を一周したロープはどれかに引っかかって回収できない。つまり宇宙が丸い形の断片だけで構成されていれば、ロープは回収できる。幾何化予想が証明できればポアンカレ予想も証明できたことになる。



●ペレリマンの研究

 ペレリマンは1966年ロシア生まれ。早くから数学の才能を発揮し、史上最年少の16歳で数学オリンピックに出場した。1990年にアメリカに渡って専門の微分幾何学を研究した。やがて数学界で「リッチフロー方程式」という式を使うと幾何化予想が証明できる、という論文が話題になり、これを機にペレリマンもポアンカレ予想に挑み始めた。1995年、ペレリマンはロシアに戻り、研究を続けた。

 2002年。数学者たちの間で、インターネットに発表されたポアンカレ予想の証明論文が話題になった。最初は数学者たちは半信半疑で読み進めたが、どこまで行っても間違いが見当たらなかった。

 2003年。アメリカの数学者は論文の執筆者を呼び解説を求めた。現れたのはペレリマンだったが、彼の説明に数学者たちは全くついていけなかった。ペレリマンはトポロジーではなく微分幾何学の手法を使い、さらに物理学の用語である「エネルギー」「エントロピー」「温度」などを証明の中で使用していたからである。

 ペレリマンは2002年から2003年にかけて追加の論文を発表し、その後数学者たちの四年による検証により、幾何化予想、そしてポアンカレ予想が証明されたことが確認された。

 しかし、ペレリマンはフィールズ賞を辞退し、世間から距離を置き、世捨て人のような生活をおくっている。その理由は誰にも分らない。


感想

 評価は○。

 その昔NHKスペシャルで一時間枠で放送された「100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者失踪の謎~」を二時間枠に拡大したスペシャル版。前者は見ていたのですが、こっちは知らなかったので喜び勇んで視聴。

 しかし……、いざ見て見るとちょっと間延びしているというか、一時間枠で十分描けた内容を水増ししたような感じで、「二時間になって二倍満足」みたいな気持ちにはなれなかったです。まあそれなりには面白かったですけど。
 
 
 
NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影
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