http://www.amazon.co.jp/dp/4775318748
安田均のゲーム紀行 1950-2020 単行本(ソフトカバー) 2020/12/12
安田 均 (著)
出版社 : 新紀元社 (2020/12/12)
発売日 : 2020/12/12
単行本(ソフトカバー) : 160ページ
【※以下ネタバレ】
ボードゲームやTRPGの第一人者が贈るアナログゲームユーザー必携の一冊!
70年間、生まれ続けたゲームの数々ーーー過去の伝説的ゲームから、現在の人気ゲームたちまで、厳選したタイトルを一挙に紹介。莫大な知識によって鍛えられた著者の目線による各ゲームの解説は、いままさにボードゲームやTRPGを遊び始めた人にはもちろん、古参のゲーマーたちにも改めて読んでもらいたい珠玉の一冊
http://www.groupsne.co.jp/products/book/gametravelog.html
ボードゲームやTRPGの第一人者が贈るアナログゲームユーザー必携の一冊!
70の歳にもなったので、これまでのゲーム人生を振り返った本です。ですが、それだけでは面白くないので、アナログゲームの日本での展開に紹介者として大きく関わっていることから、主にそうしたメインのゲームを選び出すことや、それらの作品についてもコメントしてあります。日本でのアナログゲームの受容史みたいに読まれても面白いかなと思います。
二部構成になっていて、第一部がぼくの個人史・ゲーム史から全体をインタビュー風にまとめたもの(構成;刈谷圭司)で、第二部がぼくの選ぶ海外ベスト100(大20、中30、小50作品)。主に活動の中心とした分野がボードゲーム、RPG、TCGですので、コンピュータゲーム、ウォーゲームはベスト作品選択には含んでいません、悪しからず。
紹介史でもありますが、インタビュー的なものと、お勧めリストでもあり、読みやすい本を心がけていますので、気軽に楽しんでいただければと思います。
本書の対になるものとして「日本現代卓上遊戯史紀聞[1]」(Amazon)があります。あちらは主に20世紀メインですが、こちらはマダミスの現在までを含んでいます。読み比べてもらうのも一興かと思います。
内容
テーブルゲーム(テーブルトークRPGやゲームブックやトレーディングカードゲームやボードゲーム、等々)業界の重鎮である安田均先生の本。二部構成で、第一部は古希(70歳)になった安田先生の過去の振り返り。第二部が安田先生セレクトの名作ゲーム101作品紹介。ちなみにフルカラーです。
●第一部「安田均のゲーム人生」(約60ページ)
安田先生の波乱万丈の人生の振り返り。
プロローグ部分は、1950年神戸生まれ、灘中・高から京都大学法学部に進学、無くなっていたSF研究会を再興。卒業後は商社の丸紅に就職しつつ、SFの翻訳を行う二足の草鞋状態を続けたものの時間が足りなくなり、1978年に翻訳者として独立。しかし1981年に業界の内紛の影響でSFバブルが崩壊し、仕事が減ったところに、代わりにゲームの仕事が入りだして……、といったところ。
SF雑誌にTRPGの広告が載っていたので、興味を持って海外のゲームを取り寄せてみたけど、TRPGはキャラクターの作成は出来たものの、その後どうやって遊ぶのか解らないので、あーでもないこーでもないと試行錯誤し、最終的にアメリカに出かけた人が本場でTRPGをプレイさせてもらって、自分たちのやり方が正しいと解った云々というあたりのエピソードからして面白いです。確かにTRPGってリプレイが無いと、まるでどうしていいのか解りませんもんねぇ。
そうこうしているうちに、TRPGに詳しいということでゲーム関係の仕事が増え、それ繋がりでログインでウィザードリィやウルティマの紹介記事を書くことになり、またホビージャパンからTRPG「トラベラー」の翻訳の話が来て……、という感じで、我々の知っている安田先生の活躍が始まるわけです。
これ以後、安田先生が自分が関わったゲームの仕事について色々書いてあるわけですが、過去35年くらいテーブルゲーム業界のど真ん中にずっといて、TRPG(トラベラーとかソード・ワールドRPGとかガーブスとか)から、ゲームブック(ウォーロックとか)から、TCG(モンスターコレクションとか)から、ボードゲームから、とあらゆることに関わってきた人の仕事の話ですから、つまり日本のテーブルゲームの発展の歴史でもあるわけです。ということで、私たちゲーマーがあれこれとゲームを楽しんでいた裏では、業界の関係者はどういう事をしていた、ということが色々書かれていてめっぽう面白いのです。
・トラベラーの翻訳はホビージャパンの佐藤光市社長から話が来た
・グループSNE立ち上げの理由
・ウォーロックの仕事
・ソード・ワールドRPGとかガーブスとか展開
・TRPGバブル崩壊
・マジック・ザ・ギャザリングは角川も版権を狙っていて、角川歴彦氏と一緒にアメリカに行った
・TCGのモンコレがバカ売れ
・TCGバブル崩壊
・ボードゲームの時代に
etcetc。
これを一読すれば、日本のテーブルゲームの歴史が手に取るようにわかる、と言っても過言ではないでしょう(※テーブルゲームで安田先生が関わっていないのは、ウォーシミュレーションゲームくらいですから)。
●第二部「安田均のゲーム100選」(約100ページ)
安田先生セレクトの名作ゲーム紹介。名前順とか年代順とかではなく、「20選」「30選」「50選」という様にゲームの重要度順に並べてあり、どれがどのくらいお勧めかよくわかる様になっています。しかも全てカラーで紹介(だからフルカラー本なのです)。
紹介されているのは、アクワイヤ、モノポリー、ディプロマシーといった古典から、D&D、T&T、トラベラー、火吹き山の魔法使い、マジック:ザ・ギャザリング、ドミニオン、カタンの開拓、アグリコラ、パンデミック、そして、最新のマーダーミステリーや脱出ゲームなど、古い物から最新流行のものまで手広く扱っています。よって、このリストを読めば、日本で知名度の高いゲームは一通り押さえられる、と言えましょう。すんごく役に立ちます。
ファイナルコメント
本を初めて手に取った時は、予想の半分くらいの厚みしか無かったので「(;゚Д゚)エエー」となりましたが、読んでみると、中身は予想外に濃くて、十分満足感が有りました。特に第一部の歴史パートは、「あの頃、業界の裏ではそういう事が起きていたのか……」とかに思いをはせてしまいましたねぇ。後半のゲーム紹介パートも、新旧取り混ぜて紹介しているので、最新の流行まで押さえられてお得感高し。
ということで、見た目よりも歯ごたえのある一冊でした。
2021年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

- 作者:安田 均
- 発売日: 2020/12/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)