【特撮】感想:特撮「ウルトラセブン 4Kリマスター版」第8話「狙われた街」

ウルトラセブン Vol.1 [DVD]

ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。

 

第8話 狙われた街

 

あらすじ

ウルトラセブン 4Kリマスター版(8)「狙われた街」
[BS4K] 2021年05月23日 午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)


ウルトラセブン』初の4K化・国内初放送!ある町で人が暴れ出す事件が続発。時を同じくして旅客機の墜落事故が。事件の調査から戻ってきたフルハシ隊員までも暴れる。


1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!北川町で、人間が突然暴れ出すという事件が続発した。時を同じくして旅客機の墜落事故が発生するが、そのパイロットも北川町の住人だった。北川町で、いったい何が起きているのか。ウルトラ警備隊の調査が開始されるが、調査から戻ってきたフルハシ隊員までが暴れ始めた。どうやら、原因はタバコにあるらしい…。


【出演】中山昭二森次晃嗣ひし美ゆり子毒蝮三太夫阿知波信介古谷敏

 
登場 … 幻覚宇宙人 メトロン星人

 冒頭。タクシー運転手が女性客を乗せたまま暴走し、警官に取り押さえられる。それを見ていた子供たちの元にポインターが乗り付け、アンヌが子供の一人に父親が死んだ事を伝える。

 民間航空会社のパイロットだったアンヌの叔父の操縦する旅客機が墜落し、乗客130人共々帰らぬ人となった。しかも叔父が住んでいたのは北川町だったが、過去10日ほどの間に発生した列車衝突事故やタクシーの人身事故など、大きな事件・事故では必ずこの街の人間が関わっていた。

 パトロール中のフルハシとソガは北川町でライフル魔の乱射事件に遭遇し、フルハシが足を撃たれつつ警察と協力して犯人を取り押さえた。ところが犯人は取り調べに対し、駅前の自販機で煙草を買い、銃砲店に入って一服した後は何も覚えていないと供述する。

 運転中のダンは前方を走るトラックから砂利を落とされ、危うく事故になりかける。ところが停車したトラック内には誰もおらず、謎の声がダン/ウルトラセブンに「北川町には近づくな」と警告してきた。

 フルハシは作戦室で煙草を一服した後、突然狂ったように暴れ出し周囲の人間に取り押さえられる。さらに騒ぎの直後、ソガがフルハシの煙草を吸うと同様に半狂乱になり、やはりダンたちに拘束される。ダンはようやく二人の吸っていた煙草が原因と気が付き、ほぐしてみると、中に赤い結晶体が入っていた。

 調査の結果、結晶体は地球外の物質で、これが体内に入ると他人が全て敵に見えてくるという恐ろしい効果があることが判明した。フルハシの煙草は北川町駅前の自動販売機で購入したことが解り、さらにアンヌの叔父もフライト前にやはり同じ機械で煙草を買ったことが判明する。

 ダンとアンヌは販売機の近くで張り込み、煙草を補充した男を追跡して古アパートにたどり着く。アパートに乗り込んだダンは、宇宙人(メトロン星人)に出迎えられる。メトロン星人は、赤い結晶体を使って人間同士の信頼関係を破壊し自滅させる、という計画の実験をしていると告白する。そして唯一の障害と目するダン/ウルトラセブンを円盤で宇宙に放り出そうとするが、そこにウルトラホーク1号が到着し円盤を撃墜した。円盤から脱出したセブンはメトロン星人を倒し計画を阻止した。


 エンディングナレーション「メトロン星人の地球侵略計画は、こうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心下さい。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え、何故ですって? 我々人類は、今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」


脚本:金城哲夫
監督:実相寺昭雄
特殊技術:大木 淳


感想

 評価は◎(名作)

 ウルトラセブンを語る時には必ず出てくるエピソード。ちゃぶ台の前で胡坐をかく宇宙人、夕日の決闘、皮肉なノリのエンディングナレーション、など、個々の要素だけ取り上げられることも多いですが、総合的に見てもよくまとまった完成度の高い一作です。


 序盤のタクシー運転手暴走事件やライフル魔の乱射事件等の凶悪事件が連続する「高度経済成長期の社会の歪み」的なノリ、中盤のダンやアンヌたちの私服での張り込み、そして終盤のアパートでの事件の黒幕(宇宙人だけど)との対峙、など、どちらかというと特撮物というより昭和を舞台にした刑事物のようなストーリーでありながら、しっかりと宇宙人の侵略者としても成立しているというのが実に素晴らしい。


 このエピソードは、有名な実相寺昭雄監督のセブン初担当回ですが、その知識が無くても「今までとは全然違う」異様な雰囲気なのがすぐに解ります。アンヌの叔父の葬式で、歩いていくダンの背中越しにずーっと撮影してすれ違う人たちの会話が聞こえる場面とか、妙に薄暗い地球防衛軍の基地内、やたら顔のアップが多い、等、1~7話のオーソドックスな撮り方とはまるで別物で、暗めのストーリーと相まって、見ていて妙に不安にさせられます。

 また、今までのエピソードでは殆ど描かれなかった市井の人たちの暮らしが垣間見え、1~7話の「近未来SFドラマ」とは違うノリなのも印象深い所です。さらにBGMにクラシック音楽が多用されていたり、と、監督の権限がどれくらいの物なのかはよくわかりませんが、実相寺監督が自分の個性を出して好き勝手やりまくった(?)回という印象ですね。


 フルハシとアマギがウルトラ警備隊の作戦室で、ごく当たり前のようにタバコに火をつけて一服しているのが、なんともドキッとさせられます。昭和ではごく普通の何でもない光景でしたが、2021年視点から見ると完全にルール違反のNG行為となってしまいました。昭和は遠くなったものだとしみじみさせられます……


 奇抜なデザインと派手な色彩で有名なメトロン星人ですが、改めて視聴すると、意外にも暴力的なシーンがまるでないことに驚かされます。ダンを無人トラックで威嚇した際にも本気で殺す意図はなかったようですし、ダンがアパートに乗り込んできた際にも殺すのではなくあくまで追い払うという姿勢でした。まあ荒事に自信が無かった可能性もありますが、高度に進化した宇宙人には暴力に頼るのが愚かしく思えるのかもしれません。しかし、あの手でどうやって物を掴んだりするのかは謎です……


 ラストの皮肉なナレーションも含めて、全てに異色尽くしの回ですが、「変な回」で終わっておらず、視聴してきっちり満足させてくれる秀作回でありました。


おまけ

 今回視聴したのは「4Kリマスター版」ですが、その恩恵が一番感じられるのは、ダンがアパートに乗り込んだシーン。廊下の奥に窓がありますが、今まで放送されたバージョンでは窓は真っ白で何も見えませんでした。しかし4K化の際に調べたところ、窓の外の景色が映っていることが発見されたとのことで、4Kバージョンでは外の建物がしっかりと確認できます。
 
 
メディコム・トイ RAH リアルアクションヒーローズ メトロン星人 1/6スケール ABS&ATBC-PVC製 塗装済み可動フィギュア
S.H.フィギュアーツ ウルトラセブン メトロン星人 約170mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
Vol.2
ウルトラセブン Vol.2 [DVD]
Vol.3
ウルトラセブン Vol.3 [DVD]
Vol.4
ウルトラセブン Vol.4 [DVD]
Vol.5
ウルトラセブン Vol.5 [DVD]
Vol.6
ウルトラセブン Vol.6 [DVD]
Vol.7
ウルトラセブン Vol.7 [DVD]
Vol.8
ウルトラセブン Vol.8 [DVD]
Vol.9
ウルトラセブン Vol.9 [DVD]
Vol.10
ウルトラセブン Vol.10 [DVD]
Vol.11
ウルトラセブン Vol.11 [DVD]
Vol.12
ウルトラセブン Vol.12 [DVD]