【特撮】感想:特撮「ウルトラQ 4Kリマスター版」第11話「バルンガ」

ウルトラQ Vol.1 [DVD]

ウルトラQ 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P5138/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

第11話 バルンガ

 

あらすじ

ウルトラQ 4Kリマスター版(11)バルンガ
[BS4K] 2021年06月07日 午後11:15 ~ 午後11:41 (26分)


35mmフィルム原版から4Kリマスター。ロケットが誤って連れてきた生物。それは周囲の動力を吸収し無限に膨らむ。人々は台風が吹き飛ばしてくれることを期待したが…


土星ロケットが連れてきてしまった、風船のような生物・バルンガ。それは周囲のあらゆる動力を吸収し無限に膨らんでいった。機能が止まった都市の中で、人々は接近中の台風がバルンガを吹き飛ばしてくれることを期待したが……。もともと35ミリフィルムで制作されていた1966年放送の特撮ドラマを4Kリマスター。だれも見たことがなかった「ウルトラQ」。


【出演】佐原健二,西條康彦,桜井浩子

 
登場 … 風船怪獣バルンガ

 冒頭。土星ロケット・サタン1号が地球近くまで帰還するが、乗員の飛行士は逆噴射しようとして燃料が無いことに気が付き動揺する。さらにロケットの窓の外には風船のような物が浮かんでいた。サタン1号はそのまま海面に墜落してしまう。

 一週間後。万城目と百合子はセスナでロケット墜落海域の近くを飛行していたが、燃料が無い事に気が付き、慌てて飛行場に戻る。万城目は一平に燃料について問いただすが、一平はちゃんと満タンにしたはずだと不思議がる。そのあと一平はセスナを点検し直し、ラジエーターに風船のような奇妙な生き物がいるのを見つける。

 三人は生物の正体を調べようと車で出かけるが、街の真ん中でいきなりガソリン切れとなって立ち往生してしまう。万城目は、生物が急速に巨大化し始めたのを見て、この生物は周囲の動力を吸収して大きくなることに気が付く。生物はついに車一杯に膨れ上がり、車を空中に持ち上げた挙句、内部から破壊してしまう。一平は落下する金属片から由利子を守ろうとして、自分が大怪我を負ってしまった。

 マスコミは謎の生物を「風船怪獣バルンガ」と名付けて、争って記事にしていた。由利子は万城目から、20年前にバルンガを発見した生物学者がいたという情報を聞かされる。その学者・奈良丸明彦博士は、隕石の中から宇宙胞子を発見したものの、成長させれば人類が危険だと判断して殺してしまったと報告し、学会から詐欺師呼ばわりされ、以後姿を消したという。由利子は乏しい情報を頼りに奈良丸博士を探すが、ようとして行方知れずのままだった。

 自衛隊の戦闘機はバルンガに攻撃を行うものの、バルンガは死ぬどころかどんどん巨大化してしまう。その様子を眺める群衆の中にいた由利子は、そばにいた老人が「バルンガに食い物を与える様なものだ」と口にするの聴くが、その老人はすぐにいなくなってしまう。

 バルンガは高圧線から電力を吸収してさらに巨大化しつつあった。ついに対策本部は都内での全ての動力の禁止を通達し、手術が必要な患者は他県へ移送することを決める。しかし重傷の一平は移送することが出来ず、そのまま都内に残ることになってしまう。

 由利子は万城目と共に自転車で都内を走り回るうち、先日見かけた老人と再会する。老人はバルンガは怪物ではなく神の警告だという。病院は患者の手術のため、対策本部の指示を無視して自家発電機を動かすものの、電力がすぐにバルンガに吸い取られてしまった。

 万城目は患者の親族たちに、接近してくる台風がバルンガを吹き飛してくれるはずというが、老人は神頼みだと冷笑し、憤慨する由利子に老人は科学者は気休めは言えないと切り返す。老人こそが由利子の探していた奈良丸博士だった。博士は、バルンガを追い払うヒントを思いつき、それを万城目に伝える。夜。台風が接近するが、バルンガは台風のエネルギーすら吸収し、消滅させてしまった。

 翌日。国連が打ち上げた人工太陽を追ってバルンガは宇宙に去っていき、東京は救われた。由利子はバルンガが戻ってこないかと心配するが、奈良丸博士はバルンガは本来の食べ物である太陽に気が付いてそちらへと向かうはずだという。おそらくバルンガは宇宙空間で恒星のエネルギーを吸収して生きる生物の筈だった。

 最後。太陽に向かって一直線にバルンガが飛んでいく。エンディングナレーション「明日の朝、晴れていたらまず空を見上げてください。そこに輝いているのは太陽ではなく、バルンガなのかもしれません。」


脚本:虎見邦夫 監督:野長瀬三摩地 特技監督:川上景司


感想

 評価は◎(名作)。

 独創的な設定、メリハリのある展開、余韻を残すラスト、全てにおいて素晴らしく、これぞ名作というべきエピソード。

 今回は一応は「怪獣物」のくくりに入るエピソードですが、怪獣が直接的に暴れまわって街を破壊したりするのではなく、エネルギーを吸い取って文明を麻痺させてしまい、何もできない人間たちが右往左往するという、一種の終末物的な展開なのにはしびれます。

 バルンガ自身は破壊もせず、ただぷかぷか浮いているだけなのに、人間の方は全ての機械などが使えなくなり、徐々に社会が崩壊していく。そして、ただ電気や車が使えなくて不便、という描写だけにとどめず「電気が来ないため手術が出来ず、人の命が危険にさらされる」というわかりやすい描写にしているのも上手いと思いました。


 今回のエピソードで印象的なのが、ゲストキャラの奈良丸博士。青野平義という俳優が演じており、容姿もインパクトがあるのですが、さらにキャラクターとしても、危機的状況にもかかわらず、常に沈着冷静、というよりは何か達観したような態度に終始しており、何かと感情を表に出す万城目や由利子とは対照的です。

 さらに台詞にも味があり、

・「バルンガは怪物ではない。神の警告だ。君は洪水に竹やりで向かうのかね。バルンガは自然現象。文明の天敵と言うべきか。こんな静かな朝はまたとなかったじゃないか。このきXがいじみた都会も休息を欲している。ぐっすり眠って反省すべきこともあろう」

・(万城目が台風でバルンガが飛んでいくというと)「神頼みのたぐいだ」→(由利子が病人を力づけるための台詞だと憤慨すると)「科学者は気休めは言えんのだよ」

 等々。一回限りのゲストとは思えない存在感でした。


 この回のシナリオを書いたのは虎見邦夫という人で、あまり有名ではないなぁと思って調べてみると、この話の放送(1966年3月)から一年後の1967年3月に30代で亡くなったとのことでした。もっと長生きしていれば、同様の名作を連発したのかもしれません。
 
 
大怪獣シリーズ ウルトラQ バルンガ フィギュア
 
 

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