【特撮】感想:特撮「ウルトラQ 4Kリマスター版」第19話「2020年の挑戦」

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ウルトラQ 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P5138/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

第19話 2020年の挑戦

 

あらすじ

ウルトラQ 4Kリマスター版(19)2020年の挑戦
[BS4K] 2021年08月02日 午後11:15 ~ 午後11:41 (26分)


35mmフィルム原版から4Kリマスター。相次ぐ人間消失事件。ある者はジャンプした瞬間に。ある者は飲み物だけを残して。事件を撮影した由利子は謎の液体を見抜く。


街で相次ぐ人間消失事件。ある者は、飛び込み台からジャンプした瞬間に。またある者は飲み物の入ったコップだけを残して……。偶然に事件を撮影した由利子は写真に不気味な液体が写っているのを発見する。もともと35ミリフィルムで制作されていた1966年放送の特撮ドラマを4Kリマスター。だれも見たことがなかった「ウルトラQ」。


【出演】佐原健二,西條康彦,桜井浩子

 
登場 … 誘拐怪人ケムール人

 ある日、日本の上空に未確認飛行物体が出現し、自衛隊機を撃墜してから姿を消してしまう。天野二佐は必死に説明するものの、誰一人「空飛ぶ円盤」を信じる者はいなかった。

 その時以来、日本各地で人間が突然消えてしまう、という怪事件が続発する。そして由利子が助手の友田とモデルを撮影中に、そのモデルがいきなり消えてしまうが、デスクはこの話を全く信じようとはしなかった。


 解任された天野と由利子は万城目のところに共に話を訴えに来るが、一平はどちらの話も作り話だと全く信用せずバカにした態度に終始する。万城目は友人の天野の頼みで、自衛隊機が消失した辺りをセスナで飛んでみるが、手掛かりは全く見つからなかった、意気消沈する天野だったが、次の瞬間万城目もまた操縦席から消えてしまう。

 由利子は毎日新報社の現像室へ友田を探しに来たところ、その目の前で別の社員が謎の液体に手を触れて消滅してしまう。デスクは由利子がモデル消失時に撮影した写真を調べ、謎の液体が映っていることを確認し、また天野も同じ液体が万城目を消したと証言する。デスクは由利子が狙われていると考え、警察に護衛の派遣を要請するが、やって来たのは宇田川という年寄りの刑事で由利子は頼りにならないと不満たらたらだった。

 由利子は電話ボックスから一平に連絡し、一平から全ての事件は神田博士の書いたSF小説「2020年の挑戦」の内容通りに発生していると力説される。神田博士によれば、本の内容はSFではなく、博士が「Xチャンネル光波」によって「ケムール星」の住人「ケムール人」とテレパシーで交信した実話だという。また人を消し去る液体は「消去エネルギー源」という名前で、ケムール人の意思で動いているとのことだった。

 由利子は電話ボックスで液体(消去エネルギー源)に襲われるが、宇田川によって助けられ液体は燃やされる。直後二人の目の前に謎の怪物(ケムール人)が現れるが、すぐに逃走しパトカーに追跡される。

 由利子は宇田川が神田博士の親友だった事を知らされる。神田博士は優秀な電子工学博士だったが現実と妄想を区別できなくなり、怪しげな本を発表したりしたため、宇田川が病院に送ったのだという。神田博士の本によれば、消えた人たちは「ケムール星、つまり現在2020年という未来の時間を持つ星」に送られた事になっており、それを聞いた由利子は失神してしまう。

 同じころ、一平は天野と共に神田博士の元に向かう途中、ケムール人についての知識を披露する。ケムール人は技術の発達で内蔵移植・人工血液などにより500歳まで寿命を延ばしたものの、肉体の衰えそのものは防ぐことができないため、若い地球人の肉体に自分たちの命を移し替えるつもりらしかった。

 二人は神田博士の研究室に行くが、神田博士も消えた後だった。しかし天野は博士が制作を依頼していた「Kミニオード」の試作品が届いていることに気が付き、一平はそれがXチャンネル光波の発信源だと喜ぶ。

 一方由利子は夜の遊園地で目覚め、万城目と再会するが、その姿がやがてケムール人になってしまう。そこに宇田川や警官隊が駆け付けケムール人を銃撃するが、ケムール人は巨大化して暴れ始めた。同じ頃東京タワーに到着した天野たちは、Kミニオードをとりつけると、Xチャンネル光波でケムール人を攻撃し、ケムール人が消滅すると誘拐された人たちは帰ってきた。

 最後、宇田川は地面に残っていた消去エネルギー源を面白半分に踏んでみるが、体が消え始め、「助けてくれー」という叫び声だけを残して消えてしまう。完。


脚本:金城哲夫/千束北男 監督:飯島敏宏 特技監督有川貞昌


感想

 評価は◎(今見ても傑作)。

 ウルトラQ全作品の中で一、二を争う傑作回。特撮のクオリティはともかく、ストーリー自体は今見ても十分に通用する面白さ。ウルトラQの中で最高に好きなエピソードです。ちなみに、金城哲夫氏と共にシナリオを担当した「千束北男」氏は、監督の飯島敏宏氏のペンネームです。


 どこが好きかと言えば、ストーリーが「単なる宇宙人の侵略話」ではなく、その全ての出来事が、世間から狂人扱いされる人物が書いたSF小説に予言されていた!という予言物としての要素も併せ持つところ。単なる空想小説たと思っていた本が、実は恐るべき未来について書かれた予言の書だった、という何とも言えない雰囲気が、実にゾクゾクしました。しかもその著者である神田博士はついに一度も劇中で姿を見せない、というのも意表をついていて面白い。しかし、まあ、それゆえにちょっと複雑な構成となっており、どうやら子供の視聴者は多分最初から対象としていなかったと思われます。


 ケムール人は、気持ち悪いデザインや怪しげなケムール人走りであまりにも有名ですが、今回初めて気が付いたのですが、何かというと頭の管から怪しげな液体が放出されていて、なんというか、妙な卑猥さを感じました……


 メインキャラのくせにすぐ行方不明になった万城目に代わり、小林昭二氏(仮面ライダーおやっさんウルトラマンのムラマツキャップ、ジョン・ウェインの声)が大活躍しており、また一平もかなり見せ場が多く、ちょっといつものウルトラQとは違う雰囲気でした。


 何故「Xチャンネル光波」でケムール人が死んだのか意味不明ですが、多分そのあたりも「2020年の挑戦」に書いてあったのでしょう……、


 ケムール星の説明で「現在2020年という未来の時間を持つ星」という妙に回りくどい上に意味不明の言葉が並んでいますが、これが意味が解らないので却って魅力的という面白い効果を生んでいます。一説には「ケムール星とは2020年という未来の地球の事」という解釈も提唱されていますが、いずれにせよ遥か遠い未来だと思っていた2020年が既に過去になってしまった、という事実は愕然とさせられますね。昔は物凄い未来の事だと思っていたのに、いざ通り過ぎてみると予想していたような凄い年では無かった……


 そして語り継がれる伝説のオチ、誰も見ていないところで空中にかき消えてしまう宇田川刑事……、この突き放したひどい〆方がたまらない。
 
 
 
誘拐怪人ケムール人
ウルトラマン ウルトラ怪獣シリーズ 09 ケムール人

 
 

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