【特撮】感想：特撮「ウルトラセブン 4Kリマスター版」第２２話「人間牧場」

ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK　https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送　NHK BSプレミアム。

【※以下ネタバレ】
　

1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。

第２２話　人間牧場

あらすじ

ウルトラセブン　４Ｋリマスター版（２２）「人間牧場」
[BS4K] 2021年08月22日午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)

アンヌの友人ルリ子が、何者かに誘拐された。その後彼女は発見されるが体に異変が！それは女性の身体を使って自分たちの食料を培養しようとするブラコ星人の仕業であった！

１９６７年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の４Ｋ化・国内初放送！アンヌの友人ルリ子が、誕生日パーティーの最中、何者かに誘拐された。その捜索中、アンヌが伊豆沖で円盤らしきものを目撃する。間もなくルリ子は発見され、メディカルセンターへ搬送される。その後、彼女の身体に異変が！　それは自分たちの食料を女性の身体を使って培養しようとするブラコ星人の仕業であった！

【出演】中山昭二，森次晃嗣，ひし美ゆり子，毒蝮三太夫，阿知波信介，古谷敏

　
登場 … 宇宙怪人ブラコ星人

　アンヌは伊豆で友人ルリ子の誕生日パーティーに出席していたが、ルリ子が外で犬が吠えているのを気にして出ていったきり行方不明になってしまう。海岸には人間の物ではない足跡が残されており、海上には円盤らしきものが浮かんでいた。アンヌの連絡でウルトラ警備隊が駆け付けるが、犬は殺されており、ルリ子は発見できないままだった。

　その後、世界各地で伊豆で発見されたものと同じ謎の足跡が確認されていることが判明した。そして足跡の有った場所では必ず動物が一匹連れ去られているという。

　やがて意識不明のルリ子が海岸で発見されるが、手に奇妙な物体が付着しており、地球防衛軍基地に搬送された。ところが医務室に突如宇宙人（ブラコ星人）が現れ、アンヌに襲い掛かり、ダンとキリヤマによって退治されるものの、アンヌもまたルリ子同様意識不明になってしまった。

　宇宙人の死体の胃を分析したところ、ルリ子たちに付着した謎の物体が入っており、宇宙人は人間の体で自分たちの食料を繁殖させる、「人間牧場」とでもいうべき計画を実行していることがわかる。謎の物体は女性ホルモンで急成長する性質があった。

　ルリ子とアンヌは余命15時間となった。彼女たちから謎の物体を駆除するためには、土星の鉱石から放射される「放射線アルファ73」を照射する必要があるが、ウルトラホーク2号を使っても土星との往復に三日はかかるため、二人はもう絶望だった。

　やがて伊豆沖にブラコ星人の大宇宙船団が出現し、ウルトラホーク1号が攻撃を開始し、ダンもホーク3号で応援に向かった。そして変身する理由を作るためワザとホーク3号で船団に突っ込んで撃墜され、ウルトラセブンに変身した。船団は光線でセブンを拘束しようとするが、キリヤマはセブンが土星に行こうとしていることを察し、ホーク1号に援護を指示する。解放されたセブンは土星に向かい、ホーク1号は円盤群を撃滅した。

　放射線アルファ73の照射により、アンヌとルリ子は回復した。一息ついたキリヤマたちは行方不明のままのダンを心配するが、その頃ダンは作戦室で土星の絵を描いていた。

脚本：山浦弘靖
監督：鈴木俊継
特殊技術：大木淳

感想

　評価は○（イマイチ）

　宇宙人が地球人を食料の苗床にする、という設定は良かったのですが、それをうまく膨らませられなかった惜しい回。

　密かに地球に潜入していた宇宙人たちが、食料を培養するために動物を集めまくった挙句、人間をターゲットに定める、という展開は、昭和の子供たちの抱いていた「宇宙人がやってきて円盤に誘拐されたらどうしよう……」という恐怖をズバリえぐっていてなかなかなのですが、その後の展開が今一つ。

　ブラコ星人は地球人の女性をターゲットに定めたのなら、そのまま円盤内に拉致しておけばいいのに何故わざわざルリ子を送り返してきたのか意味不明です。これは、「そうしないとその後の話が続けられない」という作劇上の理由でしかなく、もう少しうまく話を作ってほしかったなあと。

　また、ウルトラセブンはなんとブラコ星人と一度も対面して戦うことなく事件が終わってしまうという呆気なさ。地球防衛軍の基地に侵入してきた一体はキリヤマ隊長に倒され、残りの円盤群はウルトラホークに壊滅させられてしまい、セブンは今回土星に行くシーンが描写されただけ。第7話「宇宙囚人303」のキュラソ星人の時以来の省エネ回でした、まあ、セブンに頼らなくても宇宙人を簡単に撃退できるウルトラ警備隊は頼もしいとも言えますけど。

　今回のゲストであるブラコ星人は、セブンが出るまでも無く簡単に壊滅させられたザコ宇宙人のように見えますが、よく考えてみると、あれだけの円盤の大部隊を密かに地球に潜り込ませたうえ、地球防衛軍の基地の真ん中にやすやすと侵入してくるなど、なかなかの実力だったようにも見受けられます。地球語を喋って、自分たちの野望を人類にアピールするような機会があれば、また印象も変わったのではないでしょうか。地球人はこの宇宙人を最後まで「宇宙人」とか「奴ら」とかしか呼んでおらず、「ブラコ星人」という名前を知る機会すら無かったのですから。

　ところでキリヤマ隊長は何故セブンが土星に行こうとしているのを知っていたのか……、また劇中では描写されなかったものの、セブンが土星の鉱石を届けてくれた際「何故アンヌ達の病気の治療に必要としっているんですか」とか突っ込まれたのでは……　最後、ダンがしれっと土星の絵を描いているというオチもどうなんでしょうか。

　この回の演出で意表を突かれたのは、海岸でルリ子が発見される辺りで映像がセピア調というかになり、またアンヌ達が余命僅かと宣告されるシーンでは緑色の画像になる、というあたり、ほぼ演出の意味が解らない、というか、この回はフィルムが変質しているのかと真剣に疑いました……
　
　
　
宇宙怪人ブラコ星人